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156.我が強く意地っ張り

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5刻になりダラス陛下から面会を申し込まれた。オーランド殿下の面会がどのくらいかかるか分からないから、陛下との面会は明日朝一にお願いしていたのだ。
でもオーランド殿下の面会が終わったのを聞いようで、前倒しで陛下から申込みが。疲れているがお土産も早く渡したいし、モーブルに移る打ち合わせもしたいからお受けすると返事をする。

用意をし陛下が滞在する貴賓室に向かおうとしたら、前からダラス陛下とシリウスさんが来た。びっくりして固まる私。
シリウスさんと目が合うとシリウスさんの目元が緩む。シリウスさんが何か言いかけた時、ダラス陛下が割って入り私の前に来て手の甲に口付ける。そして流れる様にエスコートし私の部屋に向かった。背後を歩くシリウスさんの視線をバシバシ受けながら部屋に戻って来る。
ダラス陛下の部屋に行ったはずの私が帰って来たのに、慌てる事なくお迎え出来るケイティさんはプロフェッショナル!

ソファーに座りご挨拶をしたら陛下にいきなりぶっ込まれお茶を吹きそうになる。

「旅でモテた様だが多恵殿のお眼鏡に叶う男はいたか?」
「そんな方はいませんよ。楽しく旅行して来ただけです」
「だそうだシリウス。いい加減お前の厳つい眉間の皺を何とかしろ!」

陛下がそう言いシリウスさんを見たら、必死に指で眉間を隠していて、その姿が可愛くて笑ってしまった。気をつかってくれた陛下にお礼を言うと微笑まれた。う…ん渋くで相変わらず男前だ。

「私は3日後に帰国しグリードとビルス殿下、ビビアン王女は2日後にファーブス領の港に移動し翌日にバスグルに帰る。本当は私が帰る時に多恵殿には一緒にモーブルに移って欲しかったが、アルディア側から10日程待って欲しいと言われたよ。まぁ先にモーブルに帰り貴女を待っているよ」

相変わらず男前の陛下の気遣いに感謝し、ビルス殿下とビビアン王女が帰国する前にお会いしたいとお願いすると、陛下がシリウスさんに調整を指示。
安心していたら座り直した陛下が

「多恵殿がもしモーブルに連れて行きたい侍女や騎士がいたら、アルディアに交渉しよう。うちでも優秀な侍女と騎士をつけるが、気心知れた者の方がいいであろう」

誰かか…サリナさんやケイティさんが付いて来てくれたら安心するだろう。でもお仕えするとなるとモーブルの内情を知る事になるし反対も然り。まして騎士さんとなるとモーブル城の城内を知る事になる。
私が望めばダラス陛下は叶えてくれだろうし、皆んなも来てくれると思うが大変なのは目に見えている。そんな苦労させたく無い。だから

「ありがとうございます。モーブルにも素晴らしい侍女さんや騎士様がいらっしゃるのでお任せします」

「多恵殿は賢いな…やはり私の元に来なさい。愛し大切にすると誓おう」
「その件は丁重にお断りした筈ですよ」
「やはりダメか…気長に待つよ」

陛下の分かりにくい冗談に困り視線を泳がすと、陛下の後ろに座るシリウスさんが目に入る。シリウスさんはまた眉間の皺が再発している。慌てて話題を変えようとお土産を渡し、モーブルに移る詳細を話し合った。

陛下は察しがいいから話が早い。私が話す意図をすぐ理解して色々と提案してくれる。頭のいい人との会話は気持ちいいし無駄がない。

話し込みふと時計を見ると6刻前だ。私の視線に気付いたダラス陛下は退室される。別に早く帰って欲しかった訳じゃ無いよ!陛下は私の考えが分かった様で笑っている。

「旅から帰り面会続きでお疲れのところ押し掛けて悪かった。…すまんが一応元候補の男に少し時間をやってはくれぬか⁈」

シリウスさんに視線を移すと目が合った。やっぱり話し合わないといけないよね…

「はい。長く無ければ…」

シリウスさんはホッとした顔をし、ダラス陛下は機嫌よく退室して行った。シリウスさんはケイティさんに退室を指示し、ケイティさんは私に視線を送り確認してくる。頷くと溜息を吐きケイティさんは退室した。

「えっと…」
「旅は楽しかったですか⁈」
「はい!ハプニングがいっぱいで焦ったりもしましたが、楽しくてですね…」

気不味さから旅の話をした。初めて街で買い物して屋台で買い食いしたり、綿花の収穫で指を怪我し機織りでお供をしてくれた皆んなにお礼の品を作った事などを色々話した。独演会状態の私を優しく見守るシリウスさん。少し恥ずかしくなってきてつい余計な事を言ってしまう。

「綿花農家の兄弟が押しが強くてリックさんやミリアさんが居なかったらヤバかったです。私押しに弱いから…あ…」

シリウスさんの眉間に皺が!あれ?ダラス陛下は旅の様子知っている感じだから、求婚されたのをてっきり知っていると思ってた。ヤバイ!雰囲気が悪くなったので別の話で誤魔化そうとして自虐ネタをしてみたら…

「それですね、私の元の世界は平和だったから、こちらに来て皆さんに危機感がないって言われてて旅でもやらかしちゃってね!」
「何があったんですか?」
「歩いていたら手を引っ張られて路地に連れ込まれたり、夜に宿の部屋に騎士様が来た時に夜着のまま出てサリナさんに怒られたんです…よ?シリウスさん?」

シリウスさんは立ち上がり私の前に跪き私の手を取り真剣な表情で

「貴女を害した者は罰しましたか⁈」
「えっと暴漢は領主様が罰してくれましたよ。宿の件は完璧に私が悪いから、反対に騎士様にごめんなさいですよ」
「多恵様は危なかっしくて放っておけない…ずっと側で貴女を護る権利をいただきたい…」
「あのですね…私は元の世界は身分はなく、皆んな自己責任で生活しています。箱庭は女性を護り擁護するのでしょうが私はそれは嫌です。確かに男性に助けてもらったり、護ってもらう事もあります。でも自立した一個人でありたい」

黙り込むシリウスさん。そう…シリウスさんに感じる違和感はここなの。
モーブルが全体的に女性は護るもので頼られない男は半人前っていう考え。初めは大切にしてもらってるみたいで嬉しかった。でも何も出来ない幼子の様に感じ自信を無くしそうになる。そんなの私じゃない。大輔曰く私は『我が強く意地っ張り』らしい。基本なんでも自分でしたい。常に護ってもらうのは息苦しい。多分途中で『ほっていて!』ってキレそうだ。

「陛下に『お前は真面目過ぎて、恐らく多恵殿は息苦しく感じるだろう。お前が相手できるお方では無い』と言われました。初めはそんな事ない!貴女への想いは誰にも負けないし、いつか受け取っていただけると信じていた…」

ゔーん流石ダラス陛下だ分かってる。大人の男って感じだ。私が望む事とシリウスさんが私にしたい事は違いすぎる… 
フィラは基本私が助けを求め無い限り見守って?…ん?ストーカー?いえ…自由にさせてくれる。
グラント様はヤキモチはNo.1だが、私の意思を尊重しさりげなく振る舞ってくれる。
キース様は心配性で洞察力が有り、隠し事出来ないけど、私が渋る事は踏み込ま無い。距離感を大切にしてくれる。

お心を受けた男性は私のままでいさせてくれる。私は我儘だから我慢するくらいなら一人でいいし、なんでも一人したい。

「後10日程したらモーブルにお世話になります。そうしたらお互いの事がよく見えるし分かるはず、答えはそれからでいいのでは?」

今はあまり私を追い詰めないで!最終私はけつをまくっちゃう性格です。

「分かりました。モーブルで俺をしっかり見て知って下さい。貴女には偽らない…俺には貴女だけだ」

取った手を引き立ち上がったシリウスさんは恐る恐る抱きしめる。うーんやっぱりいい香りがする。
いい香りは箱庭男性の標準装備だろうか…
私の頭の上に頬を乗せ溜息吐くシリウスさん。

「口付けたいと言ったら怒りますか?」
「うーん…頬になら?」

でた!“No!”て言えない日本人。でも他の元候補者にも頬のキスは許してるからシリウスさんだけダメとは言えない。抱擁が解き腕を腰にまわして頬に口付けた。やっぱり何度経験しても照れる。顔が赤くなった私に目線を合わせまじまじ見て微笑むシリウスさん。お顔が綺麗すぎて直視できません。シリウスさんのキス攻撃はなかなか終わらず、最後は私が「終了!長い!」と怒りやっと終わった。
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