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153.嫌われた
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着替えて居間に行くとマリカさんが昼食を用意してくれていて美味しくいただく。
食後のお茶を飲んでいたらマリカさんが私が居ない間の城内の様子を色々教えてくれた。
どうやら使用人達の間では伴侶候補を解消し気不味くなった私が、逃避行したと噂になっていた様だ。
ほんと皆さん想像力は豊かですこと…
暫くソファーでのんびりしていたら眠ってしまった様で気が付くとベッドに寝ていた。どうやら誰かが運んでくれたようだ。毎度申し訳ない…
寝起きの体は未だだるいけど、自分で歩ける程に回復し、陛下と王妃様の夕食に向う為に部屋を出る。護衛の2人と陛下の元へ移動していたら、オーランド殿下が前から歩いて来た。
城下のお礼を言おうとしたら、絶対見えているのにあからさまに避けて手前の角を曲がってしまった。
殿下の後ろを歩いていたカイルさんが「おぃ!」と焦って呼んでいる。さっきのは気のせいでは無いんだ。やっぱり嫌われてしまったようだ。そう思った瞬間悲しくなり泣きそうになった。
候補を解消したのは自分なのに私は我儘だ。好意を向けられ押し売りだと文句を言いながら、そっぽを向かれると嫌だと思う自分が浅ましく思えて余計に悲しくなってきた。
「多恵様!そこで待っていてくれ!」
カイルさんは叫ぶとオーランド殿下を追かけた。
私が半泣きなのに気付いたガイさんが肩を抱き陛下の元に急ぐ。歩き出すとカイルさんが
「待ってくれ!」
とオーランド殿下の首根っこを掴み歩いてくる。
護衛2人の対応は冷たい。恐らくオーランド殿下が私に何かしたと思ったのだろ…
違う!自分が嫌になっただけなんだけど
「マーカス殿、ガイ殿。多恵様と話す時間をホンの少し頂きた。多恵様が誤解しておいでの様なので」
その言葉に顔を上げたらオーランド殿下が赤面している。心配する護衛の2人を説得してオーランド殿下にお礼を言う時間をもらう。護衛の2人とカイルさんに少し離れて待ってもらいオーランド殿下にお礼を言った。
「城下で助けていただきありがとうございました。
殿下が助けてくれたおかげで、男の子も怪我をせずにすみました」
「貴女に怪我が無く良かった…」
「お忍びだったんですか?」
「…」
殿下は俯き目も合わせてくれない。やっぱり愛想を尽かされんだ。泣きそうになるのをグッと堪える。殿下とは今後の事も有るから最低限の付き合いはしないといけない。正直辛いなぁ…
「ごめんなさい。私から解消したのに殿下の気持ちも考えず馴れ馴れしくて… これからはちゃんと距離をとります。レッグロッドと妖精王の問題はちゃんとしますから… 引き止めてすみませんでした」
礼をし護衛の元に戻ろうとしたら、殿下に手を取られた。まだ何かあるの?
暫く待つけど何も言わないオーランド殿下。困っていたら後ろからカイルさんが苛立ちながら来て
「多恵様。今殿下はポンコツだから時間を下さい。面会を申込むので時間を殿下に頂きたい。それから殿下は貴女に会ってからずっと多恵様だけだから!それだけは知っておいて欲しい」
思わぬ言葉に
「えっ⁈嫌われたんじゃーなの?」
「やっぱり!オーランドあんな態度をとったら勘違いさせると言っただろう!良かった…強引に多恵様を引き止めて」
意を決した様に顔を上げた殿下は顔を真っ赤にし、真っ直ぐ私を見つめて何か言いかけたら…
「多恵様。陛下と王妃様がお待ちです。これ以上は… オーランド殿下。多恵様は陛下と約束がございます。お話がお有りでしたら正式に面会を申し出いただきたい」
厳しい口調でマーカスさんが殿下との間に割って入る。殿下の後ろでコント並みにズッコケるカイルさん。眉間に皺を寄せたガイさんに促され中途半端な状態で殿下と別れた。よかった…嫌われてないと分かり少し気分が浮上した。
夕食の部屋に着くと既に陛下と王妃様が着席していた。遅れた事をお詫びして着席する。ますば今回の旅に感謝を述べて旅のお土産を渡した。
「バース産の綿のポケットチーフとハンカチです。下手で申し訳ないんですが陛下と王妃様の名前の頭文字を、私の国の文字で刺繍しました。大したもので無くてすみません」
お2人は手に取り土産を見ている。あまり見ないで欲しい…
簡単な会話をした後に陛下が手を上げると、給仕が始まり美味しそうな料理が運ばれて食事が始まる。そして食事をしながら綿花の収穫作業や機織りの話をしたら、興味深そうに話を聞く2人。
最後のデザートを食べ終えたら、王妃様が退室していった。入れ替わりでイザーク様が入ってきた。
良くない話だろうか…
「まずは無事にお帰りになり安心しました。旅行中のトラブルは報告を受けています。バース領での暴漢に関してはバース子爵が対処し、荒地の開拓に1年労働する罰を課しました。
そして朝の城下の騒ぎに巻き込まれた様で申し訳ございません。その乱闘した者達を第3騎士団が取り調べたところ、ある人物にお金を渡されあの場で騒ぐ様に頼まれた様です。恐らく多恵様に面会したい貴族が時間稼ぎに起こした様で」
あの騒ぎは自然発生では無かったんだ。
「イザーク。頼んだ貴族は分かったか⁈」
「何人も仲介しているようで、頼んだ元の貴族まで辿れませんでした」
私に会う為にあんな騒動を起こして、小さい子を巻き込んで許せない!
「ちなみに多恵様を突き飛ばした輩は騎士が締め上げ今牢に入っています」
『締め上げ⁈』過保護な騎士さんが加減間違えて無いといいけど… そして咳払いをして陛下が気不味そうに
「今回の多恵殿の旅行を貴族に教えたのは王妃付きの侍女だ。その者は実家に帰省した際に、うっかり婚約者に話した様でそこから漏れた。多恵殿が旅から無事に戻るまで王妃には知らせていない。侍女は領地に返し親である領主に領地の一部返上を命じた。この後王妃には話すがショックを受けるだろう。気に入って側においた侍女だからなぁ…
今回の多恵殿に接触を試みた貴族は侯爵家と伯爵家で、年頃の嫡男がおり多恵殿に面会を望んでおる」
旅でリフレッシュして新天地に行くつもりだったのに… 陛下は頭を下げて
「今、アルディア王家と貴族に溝が生じて危うい状況だ。儂からの頼みだ。不満を抱えた貴族を抑える為に貴族と面会をして欲しい」
「私近い内にモーブルに移る予定ですよ!」
「分かっている。多恵殿の負担にならない様に、お茶会を催し一度で終わる様にする故、協力願いたい」
恐らくモーブルに行けば数ヶ月は帰って来れないし、バスグルにも行く事になるしなぁ。私がいない間にアルディアが揉めるのは嫌だから…
「分かりました。しかし今日帰ってきたばかりなので少し日を空けて欲しいです」
「感謝する。イザーク!早速手配をしてくれ」
意図せず面会と言うお見合いをする事になってしまった。これ以上の男性は要らないのに…
食後のお茶を飲んでいたらマリカさんが私が居ない間の城内の様子を色々教えてくれた。
どうやら使用人達の間では伴侶候補を解消し気不味くなった私が、逃避行したと噂になっていた様だ。
ほんと皆さん想像力は豊かですこと…
暫くソファーでのんびりしていたら眠ってしまった様で気が付くとベッドに寝ていた。どうやら誰かが運んでくれたようだ。毎度申し訳ない…
寝起きの体は未だだるいけど、自分で歩ける程に回復し、陛下と王妃様の夕食に向う為に部屋を出る。護衛の2人と陛下の元へ移動していたら、オーランド殿下が前から歩いて来た。
城下のお礼を言おうとしたら、絶対見えているのにあからさまに避けて手前の角を曲がってしまった。
殿下の後ろを歩いていたカイルさんが「おぃ!」と焦って呼んでいる。さっきのは気のせいでは無いんだ。やっぱり嫌われてしまったようだ。そう思った瞬間悲しくなり泣きそうになった。
候補を解消したのは自分なのに私は我儘だ。好意を向けられ押し売りだと文句を言いながら、そっぽを向かれると嫌だと思う自分が浅ましく思えて余計に悲しくなってきた。
「多恵様!そこで待っていてくれ!」
カイルさんは叫ぶとオーランド殿下を追かけた。
私が半泣きなのに気付いたガイさんが肩を抱き陛下の元に急ぐ。歩き出すとカイルさんが
「待ってくれ!」
とオーランド殿下の首根っこを掴み歩いてくる。
護衛2人の対応は冷たい。恐らくオーランド殿下が私に何かしたと思ったのだろ…
違う!自分が嫌になっただけなんだけど
「マーカス殿、ガイ殿。多恵様と話す時間をホンの少し頂きた。多恵様が誤解しておいでの様なので」
その言葉に顔を上げたらオーランド殿下が赤面している。心配する護衛の2人を説得してオーランド殿下にお礼を言う時間をもらう。護衛の2人とカイルさんに少し離れて待ってもらいオーランド殿下にお礼を言った。
「城下で助けていただきありがとうございました。
殿下が助けてくれたおかげで、男の子も怪我をせずにすみました」
「貴女に怪我が無く良かった…」
「お忍びだったんですか?」
「…」
殿下は俯き目も合わせてくれない。やっぱり愛想を尽かされんだ。泣きそうになるのをグッと堪える。殿下とは今後の事も有るから最低限の付き合いはしないといけない。正直辛いなぁ…
「ごめんなさい。私から解消したのに殿下の気持ちも考えず馴れ馴れしくて… これからはちゃんと距離をとります。レッグロッドと妖精王の問題はちゃんとしますから… 引き止めてすみませんでした」
礼をし護衛の元に戻ろうとしたら、殿下に手を取られた。まだ何かあるの?
暫く待つけど何も言わないオーランド殿下。困っていたら後ろからカイルさんが苛立ちながら来て
「多恵様。今殿下はポンコツだから時間を下さい。面会を申込むので時間を殿下に頂きたい。それから殿下は貴女に会ってからずっと多恵様だけだから!それだけは知っておいて欲しい」
思わぬ言葉に
「えっ⁈嫌われたんじゃーなの?」
「やっぱり!オーランドあんな態度をとったら勘違いさせると言っただろう!良かった…強引に多恵様を引き止めて」
意を決した様に顔を上げた殿下は顔を真っ赤にし、真っ直ぐ私を見つめて何か言いかけたら…
「多恵様。陛下と王妃様がお待ちです。これ以上は… オーランド殿下。多恵様は陛下と約束がございます。お話がお有りでしたら正式に面会を申し出いただきたい」
厳しい口調でマーカスさんが殿下との間に割って入る。殿下の後ろでコント並みにズッコケるカイルさん。眉間に皺を寄せたガイさんに促され中途半端な状態で殿下と別れた。よかった…嫌われてないと分かり少し気分が浮上した。
夕食の部屋に着くと既に陛下と王妃様が着席していた。遅れた事をお詫びして着席する。ますば今回の旅に感謝を述べて旅のお土産を渡した。
「バース産の綿のポケットチーフとハンカチです。下手で申し訳ないんですが陛下と王妃様の名前の頭文字を、私の国の文字で刺繍しました。大したもので無くてすみません」
お2人は手に取り土産を見ている。あまり見ないで欲しい…
簡単な会話をした後に陛下が手を上げると、給仕が始まり美味しそうな料理が運ばれて食事が始まる。そして食事をしながら綿花の収穫作業や機織りの話をしたら、興味深そうに話を聞く2人。
最後のデザートを食べ終えたら、王妃様が退室していった。入れ替わりでイザーク様が入ってきた。
良くない話だろうか…
「まずは無事にお帰りになり安心しました。旅行中のトラブルは報告を受けています。バース領での暴漢に関してはバース子爵が対処し、荒地の開拓に1年労働する罰を課しました。
そして朝の城下の騒ぎに巻き込まれた様で申し訳ございません。その乱闘した者達を第3騎士団が取り調べたところ、ある人物にお金を渡されあの場で騒ぐ様に頼まれた様です。恐らく多恵様に面会したい貴族が時間稼ぎに起こした様で」
あの騒ぎは自然発生では無かったんだ。
「イザーク。頼んだ貴族は分かったか⁈」
「何人も仲介しているようで、頼んだ元の貴族まで辿れませんでした」
私に会う為にあんな騒動を起こして、小さい子を巻き込んで許せない!
「ちなみに多恵様を突き飛ばした輩は騎士が締め上げ今牢に入っています」
『締め上げ⁈』過保護な騎士さんが加減間違えて無いといいけど… そして咳払いをして陛下が気不味そうに
「今回の多恵殿の旅行を貴族に教えたのは王妃付きの侍女だ。その者は実家に帰省した際に、うっかり婚約者に話した様でそこから漏れた。多恵殿が旅から無事に戻るまで王妃には知らせていない。侍女は領地に返し親である領主に領地の一部返上を命じた。この後王妃には話すがショックを受けるだろう。気に入って側においた侍女だからなぁ…
今回の多恵殿に接触を試みた貴族は侯爵家と伯爵家で、年頃の嫡男がおり多恵殿に面会を望んでおる」
旅でリフレッシュして新天地に行くつもりだったのに… 陛下は頭を下げて
「今、アルディア王家と貴族に溝が生じて危うい状況だ。儂からの頼みだ。不満を抱えた貴族を抑える為に貴族と面会をして欲しい」
「私近い内にモーブルに移る予定ですよ!」
「分かっている。多恵殿の負担にならない様に、お茶会を催し一度で終わる様にする故、協力願いたい」
恐らくモーブルに行けば数ヶ月は帰って来れないし、バスグルにも行く事になるしなぁ。私がいない間にアルディアが揉めるのは嫌だから…
「分かりました。しかし今日帰ってきたばかりなので少し日を空けて欲しいです」
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