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150.帰城

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ロドリス兄弟の問題も解決し少し遅れたが王都に戻ります。馬車に乗り込み窓から子爵家の皆さんに手を振り出発!また1日半かけて帰ります。

お昼過ぎにヴァックス領のザナックで昼休憩をし、そこからヴァックス領を横断し日没前にヴァックス領とファーブス領の境町のテントンで1泊。翌お昼ごろに王都に着く予定です。サリナさんが少しなら気になった町に寄ってもいいと言ってくれ、帰りも目新しいものが見れるかもとわくわくする。

結局どこに寄ることも無く予定通りテントンに日没前に着く。早く皆んなにゆっくりして欲しくて早食堂に向かいます。
ここでは少し無礼講!お酒を頼み皆んなで酒盛り。私も甘い果実酒を少し飲み上機嫌。
すると男性が椅子とジャッキをもって私たちの席に来た。

「兄ちゃん一人にかわい子ちゃん3人も連れてモテるね~。俺ら男同士で寂しいんだ、仲間に入れてくれよ」

それまで楽しく飲んでいたのに、一気に緊張が走り皆んな険しい顔に

「すまんな。今日は仲間だけで飲みたいんだ。遠慮してくれ」
「いいじゃないか!俺はこの可愛らしいお嬢とお近づきになりたいんだよ!」
「嫌だと言っているだろう」

リックさんとミリアさんが臨戦態勢に入る。すると急に酔っぱらいのナンパ男は震えだし引き下がって行った。
何が起こったか分からず男たちが見ていたところを見ると、黒いフードを目深に被った大柄の男が立っている。よく見るとフード男は帯剣している。リックさんとミリアさんは腰の剣に手をかけリックさんが

「あいつ只者ではありません、事が起これば俺が相手をするので、ミリアとサリナ嬢は多恵様を連れて自警団に走って下さい」

折角楽しく1日が終わりそうだったのに酔いが一気に覚めた。そしてその男がゆっくり近づき緊張が走る。その男は目の前に来てフードを取った。

「「「クレイブ様!!」」」

その男は渋くて格好いい第2騎士団副団長のクレイブ様だった。

一気に気が抜けて呆然としてしまう。
クレイブ様は空いている席に座って店員にワインを頼み、ニコニコしながら私を見ている。そして運ばれてきたワインを一気飲みし

「リックにミリア。警戒が少し甘いな。酒は飲んでも警戒は続けろ。後、多恵様の庶民の装いは想像以上の愛らしさで福眼です」 

嬉しそうにワインを飲み終え、2杯目注文するクレイブ様。

「副団長で良かったです。正直対治して勝てる気がしなかったので、一瞬覚悟をきめましたよ」

そんなに凄いオーラ出していたんだ。ミリアさんにも聞いたらリックさんと同じ事を思っていたらしい。冷静なサリナさんがクレイブ様に

「何故クレイブ様がお越しになったのですか?」

クレイブ様が溜息を吐き一口ワインを飲み話し出した。

「実は多恵様が旅に出ているのを漏らした者がいて、それを聞いた地方貴族が自分の領地に招待する為、バース領から王都までの道のりで馬車を捜索しています。心配された陛下が念のため迎えを出す事をお決めに。しかし大人数だと反対に目立つので私と部下3名でお迎えに参りました。他の者は今別の酒場や食堂で多恵様を探しています」

そんな事になっていたんだ。知らなかったよ。
クレイブ様は私たちの宿を聞いて空き部屋があるか聞きに行き、他の騎士さんたちと合流するために食堂を後にした。
宿に着くとフロントに第2騎士団の方々いて知っている顔に安心する。でも何故か第1騎士団の女性騎士のランさんがいる。疑問に思ったけどこの時は 気に留めていなかった。ラッキーな事に宿に空きがあったので、クレイブ様達も同じ宿に泊まる事に。

部屋に入るとミリアさんはクレイブ様に呼ばれ、グレイブ様の部屋に行ってしまった。

湯浴みをしてのんびり過ごしていたらミリアさんが帰ってきた。ミリアさんは深妙な顔をしている。
後でクレイブ様が明日の説明に来るらしい。とりあえず待ってる間、寝室でベッドに寝転がりガールズトークに花を咲かせる。

「そうそうミリアさん!また怪談話する?」

すると慌ててベッドに潜り込み頭から布団をかぶるミリアさん。サリナさんと顔を見合わせ笑う。

「ウソウソ!しないから安心して!」

ミリアさんは格好いい騎士だけどやっぱり年頃の可愛い女の子でした。沢山話したせいか喉が渇き、居間で果実水を飲んでいたら誰か来た。警戒心のない私は何も考えず扉を開けた。目の前に少しラフな服装のクレイブ様がいて目が点になっている。

「クレイブ様?」

我に返ったクレイブ様は後ろを向き

「多恵様は警戒心が無さすぎます!その様な夜着で訪問者の確認もせずお出になり、邪な思いを持った輩だったらどうするんですか!」
「あっ…ごめんなさい。えっとミリアさんを呼んでくるので、中でお待ちください」

怒られた…でも今のは100%私が悪い。ミリアさんに声をかけ私は寝室に入り、サリナさんに今あった事を自己申告し早目にお説教を受けます。
溜息を吐いたサリナさんに厚手のガウンを着さされた時にミリアさんが呼びに来た。
居間の方に行くとリックさんとランさんもいた。

ソファーに座り少し顔の赤いクレイブ様から、明日の帰路について説明を聞く。

「明日は馬車には多恵様の代わりにランが乗車し王都へ向かいます。多恵様は私達と馬で別ルートとなります。
リックは伯爵家、サリナ嬢は子爵家。今多恵様を探している貴族は侯爵家と伯爵家。もし馬車を停められ多恵様にお目通を願った時、リックとサリナ嬢では拒めない。領地まで連れて行かれなくても、近くの街で食事やお茶に誘われる事になる。私もここに来る途中に伯爵家の捜索隊と遭遇しました。恐らく今多恵様の伴侶候補者不在にあたり、多恵様の縁を結びたいのでしょう」

サリナさんの表情が険しい。一息ついてサリナさんがクレイブ様に

「私は反対です。何故なら乗馬経験が無い多恵様が、長距離の騎乗にお体が心配ですし、女性が居ないと体調を崩された時にお世話出来ませんわ。
それならクレイブ様が同行さなるか、ファーブス公爵家から護衛を出して貰えばいいのではありませんか⁉︎」

クレイブ様はお茶を一口飲み改まって

「多恵様の流行病対策、港町の検疫に防御靴。それらはアルティア貴族に注目されて、その恩恵は公爵家に齎されその御子息は伴侶候補者。王族と公爵家が乙女を囲い込んでいると不満がでています。
ここで我ら騎士団やファーブス公爵が護衛すると、更に不満が募り王族との確執に繋がります。
多恵様には不便をおかけしますが我慢願いたい」

グレイブ様はそう言い頭を下げた。

「私はクレイブ様や騎士の皆さんと面識があるし、信頼しているので大丈夫です。それよりランさんと入れ替わってバレませんか?」
「ランは比較的騎士の中でも小柄で遠目なら分かりません。今日何台かの馬車に遭遇した時に、ランと私が一緒に騎乗していたので、多恵様が騎士服を着て私と騎乗しても今日見たランと思うでしょう」

クレイブ様との騎乗は恥ずかしいけど、騎士服はカッコよくて憧れてたから嬉しいかも。でも本当に背格好が似てるか不安になり、ランさんの前に行き立ってもらった。並んで立つとほんの少しランさんの方が背が高い。でもミリヤさんやサリナさんに比べたら差は無い。

まだサリナさんは不満げだったが、替玉作戦は決行される事となった。
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