女神の箱庭は私が救う【改編版】

いろは

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144.ピグ

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雑貨屋でお金を払い大きな荷物を抱えていたらリックさんより早く、ジャックさんが持ってくれた。大丈夫だと言うと

「ユキちゃん毎持つことになるけどいい⁈」

と言われ素直にお願いした。お店を出た後は色んな通りを歩きお店や露店を見回る。広場では小さい子供が串にささったフルーツを美味しそうに食べている。見た事ないフルーツに思わずじっと見ていたら。ジャックさんが笑いながら手を取り引っ張った。引っ張られるまま歩くと露店の前に着いた。フルーツが串に刺して売っている。色々あるけど薄桃色の丸い果物はなんだろう…

「ユキちゃん食べたいのかぃ?」
「あの薄桃色の果物は何ですか?」
「あれはこの辺でよく食べられる“ピグ”っていう果物で濃厚な甘さで美味いぞ。親父2本くれ」

露天のおじさんがピクの串を渡しながら

「恋人と食べ歩きかい?兄ちゃんかわいい彼女で羨ましいよ」
「だろう⁈って言いたいけど、今口説いてるところさ!」
「頑張りな兄ちゃん!」
「おぅ!」

リックさん達と離れたから2人の位置を確認すると、2人は話し込んでいてこっちに気づいていない。丁度良かったと思い少しジャックさんに近づいて

「ジャックさん聞いていいですか?」
「何でも聞いてくれ」
「機織り体験もジャックさんの所でするの?」
「あぁ!機織りは母さんの実家の方だ。何故だ?」
「実は今回の旅でリックさんとミリアさんにはお世話になっているから機織りで何か贈り物したいんだけど難しいかなぁ?」

ジャックさんは驚いた顔で私を見下ろしている。あれ?おかしな事を言ったかなぁ?

「いや、簡単な模様でランチョンマット位なら半日有れば織れるさ。そのなんだ…」

急に口籠もり出したジャックさん。やめて不安になるから!

「私変なこと言ってます?」
「いや…俺は見る目あるなぁ~って思ってさ。見た目の可愛らしさだけで無く心根もいい子だなぁ…ユキちゃんは!やっぱり帰るまでに口説かないと!」

お世辞はいいから口添えしてほしいとお願いすると、お祖母さんに話してくれる事になった。

「ありがとう!あっでも内緒にしてね⁉︎」

するとニヤついたジャックさんが

「口止め料は?」
「へ?」
「勿論くれるよな⁈」

あ…そう来たか…変な事要求される前に軽めなお礼をしておこう!

「ジャックさん両手上げて!」
「えっ?何?」
「早く!」

慌てて両手を上げたジャックさんに抱き付いた。やっぱりガッチリマッチョだ。逞しい肢体に少し照れながら”ぎゅー”っとした。そして見上げながら

「口止め料!です」

私を見下ろしたジャックさんの顔は赤い。
離れた所からミリアさんが走って来て慌てて離れた。まだフリーズ中のジャックさんを放置して殺気だったミリアさんにいい訳をして何とか落ち着いてもらった。
満面の笑みを浮かべ再起動したジャックさんが、ピクの串をミリアさんに渡した。

「ユキちゃんが食べたいって言ったから買ったんだよ。甘くて美味しいからミリアさんも食べなよ」

呆気に取られたミリアさんは戸惑いながら受け取り、小さい声でお礼を言っていた。改めてジャックさんにお礼を言い、ミリアさんと美味しいピグをいただいた。

この後ミリアさんと露店をまわりミリアさんはヘアオイルを買い私は髪留めを買った。
街を歩いていると男性からたくさん声をかけられる。ミリアは美人だから仕方がない。しつこい時はリックさんやジャックさんが追い払ってくれる。

街を堪能してそろそろ帰ろうかと話していたら、左腕を取られ狭い通路に引き込まれた。びっくりして見上げるとさっきお誘いを断った男性が掴んでいた。

『やっやばい!この人目がいっちゃってる!』

大声を上げようとしたら口を押さえられ、助けを呼べない!

「素っ気なくしたが本当は俺の彼女になりたいんだろ⁈恥ずかしがらずに俺の彼女になれよ!」

抱きつかれ体が密着し気持ち悪い。みんなが私を探している声がする。男の手がお尻を撫でてスカートをたくし上げた。

『いゃ!』
「うっ!」

目の前に男が倒れて唸っている。何が起こったか分からずその場に座り込む。いつの間にか目の前に黒尽くめ男が立っているが逆光で顔は見えない。

「この様に路地に連れ込まれますから、路地から離れてください。今仲間が騎士二人を呼びに行っています。このままここにいて下さい」

遠くからリックさんの声が近づいてくる。

「では…」
「待って下さい。お礼を言わせてありがとう。貴方が来なかったらヤバかったです。もしかして陛下が言っていた”影”さん?」
「我々が側におりますので安心下さい。しかしご自分でも用心くだされ」
「はい。すみません」

頭を下げて直ると影さんは消えていた。やっぱり影さんは忍者みたいだと感動していたら、リックさんが走ってきて座り込んだ私を抱き上げ、足早に通路から出た。見上げたリックさんの顔は青い。心配かけたのだと反省した。
皆んなに心配をかけてしまい、自分の危機の無さに落ち込む。そしてこの出来事は陛下やイザーク様に報告され。そして(元)候補者の耳にも入り、今まで以上に周りが過保護になったのは言うまでもない。
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