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138.雁字搦め
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「失礼」
そう言いキース様は私の左手の袖を捲った。
『あっ!』
そこには手首に巻いた臙脂色のリボンが…
実は今朝悩んでいた。心を受けたフィラとグラント様から身に付ける物をいただき、今回の旅に着用して来ている。キース様からも心をいただいているのに、(キース様の)身に付ける物が無いのは、キース様だけ仲間外れみたいで嫌だったのだ。その時に思い出したのがリボン。袖で隠れるから丁度いいと思い、マリカさんに結んでもらいすっかり忘れていた。それにしてもよく気づいたなぁ…
「解消された日は絶望しその夜は眠れませんでした。暖かい陽がさし穏やかだった日々が一気に暗黒に落ちた気分でした。仕事も手につかず眠れず食事も喉を通らなかった」
グラント様と同じ症状ですね…
「しかし、私が窶れ青い顔をしていては、また貴女にいらぬ心配させてしまう。それに解消理由は考え直すためであって嫌われた訳ではない。そう思ってからは少しでも食べ酒の力を借り眠る様にしています。空元気で正直ツライが永遠に貴女を失う事を思えば大した事ではない」
そう言いキース様は弱々しく微笑んだ。キース様のこういうトコは好き。感情に流されず状況をちゃんとみて、相手の意図を汲み取ってくれる人だ。やっぱり父に似ている。あれ?私ってファザコンだったけ?
そして心配していたと告げると
「心配してくださるのですか?」
「当たり前でしょ!」
するとやっといつもの微笑み向けてくれて
「このリボンがあるという事は、私の心はまだ貴女の元にあるのでしょうか?」
曖昧に微笑み返事はせずにフィラとグラント様から虫除けをいただいた話をし、着用する時にキース様のリボンを思い出したと説明した。キース様はフィラのチョーカーとグラント様のアンクレットを見て
「私も嫉妬心は強いがお2人も中々ですね。しかし虫除けはこれでも足りない位だ。貴女は魅力的で男を寄せ付けてしまう。叶うなら同行したいくらいだ」
強く同行を願うキース様に身分を隠しての旅だからダメだと言うと
「でしたら約束頂きたい!言いよる男共から心をお受けにならないで欲しい」
「それは約束出来ないですよ。だってバース子爵領では私は唯の”多恵”で、乙女じゃないから」
「でしたらせめて…」
キース様は袖を捲り何がしている。ぼーと見ていたら
「失礼」
と手を取られ袖に何が付けた。よく見るとキース様が着けていたカフスだ。
「虫除けの意味もありますが、私の半身を貴女の側に置いて下さい」
着けられたカフスをまじまじ見るとガーネットがはめられている。これはキース様の瞳の色だ。苦笑していたら
「私の嫉妬心はあの2人に負けず劣らずです。諦めて下さい」
そう言い熱い視線を送りずっと手を握っている。分かっているけど応じれない。これはケジメだ。
グラント様も頬にキスとハグだけ。フィラも同じ様にするつもり。
「許していただけるなら口付けたい」
「頬になら…」
キース様はゆっくり私の前に跪き優しく手を添える。綺麗なキース様の顔が近づきドキドキする。触れるだけの優しいキス。そしてそのまま抱きしめられた。
ぐったり疲れた体が癒されていく様だ。心を受けた3人は共通して抱きしめられるととても安心するし匂いが好き。あっでも決して匂いフェチでは無い。
確か昔何かの番組で見たけど、女性は本能的に自分と遺伝子の相性のいい男性を、体臭で嗅ぎ分けると聞いた事がある。それかなぁ…他の候補者も心地いい体温だしいい匂いはするけど、心を受けた3人は何か違う気がする。心地よくてキース様の腕の中で逞しい胸におでこをすりすりした。
「くすっ」
小さく笑ったキース様は更に強く抱きしめる。少しするとサリナさんが戻ってきた。扉をノックし戻りを知らしてくれる。
座り直すと部屋に戻ったサリナさんが目元にタオルを当ててくれる。ひんやりして気持ちいい…
キース様とサリナさんはこの後の順路について話し合う。そんな美男美女の2人を見ていると目が幸せ。もし2人が結婚して子供が出来たらめっちゃかわいいだろうなぁ… 想像して頬が緩む。
すると視線を向けたキース様が不機嫌な顔をされた。
「多恵様。良くない想像はお止め下さい。私の気持ちをお疑いか?」
「えっと…何のことだか…」
怖い怖い!キース様勘がいいから気をつけないと。
この後直ぐにキース様は帰って行った。どうやらサリナさんが私の平民ライフの邪魔になると追い返したらしい。
ハプニングはあったけどまだ時間があるから、部屋でゆっくり昼食をいただき休憩。
私が無理矢理リックさんを隣の寝室で寝かせた。馬車の操縦で疲れているだろいし、次の宿まで1刻半は走るからね。
残った女3人でのんびりします。するとキース様のカフスにミリアさんが気づくとサリナさんが
「キース様には手枷を填められましたね。多恵さんのお相手は束縛が強すぎます。体の”首”にアクセサリーなんて」
「私もそれくらい愛されたいです!」
「ミリアさん必要以上の愛は暴力です」
「そんな事ないですよ!愛に限界は無いわ」
淡白なサリナさんと情熱的なミリアさんが討論している。私は疲れたからどちゃでもいいわ… でも…
『首輪、手枷、足枷…ん!雁字搦めじゃん!』
私って今Freeだよね?チャンスがあったら恋愛していいよね⁈ まだ始まったばかりなのに不安になってしまった。
そう言いキース様は私の左手の袖を捲った。
『あっ!』
そこには手首に巻いた臙脂色のリボンが…
実は今朝悩んでいた。心を受けたフィラとグラント様から身に付ける物をいただき、今回の旅に着用して来ている。キース様からも心をいただいているのに、(キース様の)身に付ける物が無いのは、キース様だけ仲間外れみたいで嫌だったのだ。その時に思い出したのがリボン。袖で隠れるから丁度いいと思い、マリカさんに結んでもらいすっかり忘れていた。それにしてもよく気づいたなぁ…
「解消された日は絶望しその夜は眠れませんでした。暖かい陽がさし穏やかだった日々が一気に暗黒に落ちた気分でした。仕事も手につかず眠れず食事も喉を通らなかった」
グラント様と同じ症状ですね…
「しかし、私が窶れ青い顔をしていては、また貴女にいらぬ心配させてしまう。それに解消理由は考え直すためであって嫌われた訳ではない。そう思ってからは少しでも食べ酒の力を借り眠る様にしています。空元気で正直ツライが永遠に貴女を失う事を思えば大した事ではない」
そう言いキース様は弱々しく微笑んだ。キース様のこういうトコは好き。感情に流されず状況をちゃんとみて、相手の意図を汲み取ってくれる人だ。やっぱり父に似ている。あれ?私ってファザコンだったけ?
そして心配していたと告げると
「心配してくださるのですか?」
「当たり前でしょ!」
するとやっといつもの微笑み向けてくれて
「このリボンがあるという事は、私の心はまだ貴女の元にあるのでしょうか?」
曖昧に微笑み返事はせずにフィラとグラント様から虫除けをいただいた話をし、着用する時にキース様のリボンを思い出したと説明した。キース様はフィラのチョーカーとグラント様のアンクレットを見て
「私も嫉妬心は強いがお2人も中々ですね。しかし虫除けはこれでも足りない位だ。貴女は魅力的で男を寄せ付けてしまう。叶うなら同行したいくらいだ」
強く同行を願うキース様に身分を隠しての旅だからダメだと言うと
「でしたら約束頂きたい!言いよる男共から心をお受けにならないで欲しい」
「それは約束出来ないですよ。だってバース子爵領では私は唯の”多恵”で、乙女じゃないから」
「でしたらせめて…」
キース様は袖を捲り何がしている。ぼーと見ていたら
「失礼」
と手を取られ袖に何が付けた。よく見るとキース様が着けていたカフスだ。
「虫除けの意味もありますが、私の半身を貴女の側に置いて下さい」
着けられたカフスをまじまじ見るとガーネットがはめられている。これはキース様の瞳の色だ。苦笑していたら
「私の嫉妬心はあの2人に負けず劣らずです。諦めて下さい」
そう言い熱い視線を送りずっと手を握っている。分かっているけど応じれない。これはケジメだ。
グラント様も頬にキスとハグだけ。フィラも同じ様にするつもり。
「許していただけるなら口付けたい」
「頬になら…」
キース様はゆっくり私の前に跪き優しく手を添える。綺麗なキース様の顔が近づきドキドキする。触れるだけの優しいキス。そしてそのまま抱きしめられた。
ぐったり疲れた体が癒されていく様だ。心を受けた3人は共通して抱きしめられるととても安心するし匂いが好き。あっでも決して匂いフェチでは無い。
確か昔何かの番組で見たけど、女性は本能的に自分と遺伝子の相性のいい男性を、体臭で嗅ぎ分けると聞いた事がある。それかなぁ…他の候補者も心地いい体温だしいい匂いはするけど、心を受けた3人は何か違う気がする。心地よくてキース様の腕の中で逞しい胸におでこをすりすりした。
「くすっ」
小さく笑ったキース様は更に強く抱きしめる。少しするとサリナさんが戻ってきた。扉をノックし戻りを知らしてくれる。
座り直すと部屋に戻ったサリナさんが目元にタオルを当ててくれる。ひんやりして気持ちいい…
キース様とサリナさんはこの後の順路について話し合う。そんな美男美女の2人を見ていると目が幸せ。もし2人が結婚して子供が出来たらめっちゃかわいいだろうなぁ… 想像して頬が緩む。
すると視線を向けたキース様が不機嫌な顔をされた。
「多恵様。良くない想像はお止め下さい。私の気持ちをお疑いか?」
「えっと…何のことだか…」
怖い怖い!キース様勘がいいから気をつけないと。
この後直ぐにキース様は帰って行った。どうやらサリナさんが私の平民ライフの邪魔になると追い返したらしい。
ハプニングはあったけどまだ時間があるから、部屋でゆっくり昼食をいただき休憩。
私が無理矢理リックさんを隣の寝室で寝かせた。馬車の操縦で疲れているだろいし、次の宿まで1刻半は走るからね。
残った女3人でのんびりします。するとキース様のカフスにミリアさんが気づくとサリナさんが
「キース様には手枷を填められましたね。多恵さんのお相手は束縛が強すぎます。体の”首”にアクセサリーなんて」
「私もそれくらい愛されたいです!」
「ミリアさん必要以上の愛は暴力です」
「そんな事ないですよ!愛に限界は無いわ」
淡白なサリナさんと情熱的なミリアさんが討論している。私は疲れたからどちゃでもいいわ… でも…
『首輪、手枷、足枷…ん!雁字搦めじゃん!』
私って今Freeだよね?チャンスがあったら恋愛していいよね⁈ まだ始まったばかりなのに不安になってしまった。
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