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136.虫除け

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グラント様から贈られたは何だろう? 箱は手の平サイズだ。高価なモノや宝飾品は断ったが箱のサイズからしてぽくて嫌な予感がする。
横でマリカさんが興味津々で見ている。ここにケイティさんが居たら怒られるよ。私は気にしないからいいけど。そしてリボンを解いて箱を開けると…

「ブレスレット?」
「いえ!多恵様これはアンクレットですわ」

流石やきもち妬きのグラント様だ。シルバーのチェーンに等間隔に紫の宝石が付いている。ニヤけ顔のマリカさんが

「閣下の独占欲は凄いですね。羨ましいです。素敵な殿方にこんなに想われて」
「…一応嬉しいけど少し引くわ。でもこれ着けられないかも」
「何故ですか?」
「私シルバーは長時間着けると気触れるの」

そう元の世界でもアクセサリーを着かなかったのはアレルギー体質だから。

「大丈夫ですわ。これはシルバーでは無くプラスと言われるもので、シルバーの様に酸化したり汗や香水で変色とかしないものです。肌に優しい素材ですから」

元の世界でいう所のプラチナかなぁ?
フィラは深緑に琥珀色のチョーカーでグラント様がプラチナに紫の宝石のアンクレット。2人共主張が激しい。 

「多恵様、お早く湯浴みと食事をなさって下さい。すぐ出発のお時間となりますよ」

マリカさんがてきぱき動きます。ケイティさんの仕込みはバッチリのようです。
着替えも終わり陛下の執務室へご挨拶に向かいます。朝早いのに陛下は迎えて下さり

「多恵殿、土産話を楽しみにしているぞ。言ってなかったが護衛の他に影を子爵領に向かわせた故、安心して楽しんできなさい」
「へ?影?」
「多恵様はお気になさる事はありません」

普通の事の様にイザーク様が言います。影て忍者?また私狙われているの? 不安要素が払拭されないまま出発の時間になり陛下に挨拶を終えて馬車まで移動します。馬車前にはサリナさんとリックさん、ミリアさんがる。サリナさんは子爵令嬢なので綺麗なワンピースを着ていて、リックさんとミリアさんは平民の設定なのでそこまで華やかな格好はしていない。私も飾りのないシンプルなワンピースだ。事情を知らない人から見たらサリナさんがご令嬢で他3人は共に見えるだろう。リックさん曰く 

「サリナ嬢には囮の様で申し訳ないが、多恵様を隠す目的もあります。多恵様は侍女として振舞って下さい」
「はい!」
「皆さん!1週間お世話になります」

頭を下げて挨拶し馬車に乗り込む。

馬車は見た目普通の馬車で大きくも無く小さくも無い。でも中に入ってびっくり!ふかふかのシートで王族の方が乗る馬車のようだ。
ミリアさんとサリナさんが気後れし引いている。勿論私も… 見送りに来てくれたイザーク様が

「多恵様が乗車されるので外はバレない様のに質素にしましたが、内装は陛下の指示で王族の物と同じ仕様でご用意しました。これなら疲れる事無く子爵領まで行けるでしょう」
「あ…ありがとうございます」

お礼を言い座る。馬車の中は女性3人で道中会話が楽しめそうだ。リックさんは御者と交代で馬車を操縦してくれます。
御者との連絡小窓をリックさんがノックし出発をしらせてくれ馬車が動きだした。するとサリナさんが窓を指さしています。その方向を見ると建物の陰から(元)候補者の方が

「お嫌いになったのではないのでしょう? ならお手を振っても問題ないかと…」

サリナさんがそう言ってくれ窓から皆さんに手を振った。遠くてあまり表情は分からなかったけど、皆さんの顔色が心なしか良くなった気がした。

出発から半刻ほどでファーブス領に入りファーブス領の端を横断し、次にヴァックス伯爵領を通りバース子爵領向かう。1日ではつかずヴァックス領で1泊し明日の昼前に子爵領に到着の予定だ。後1刻走りファーブス領とヴァックス領の境の町で昼食休憩をとる。
車内で楽しく話をしていたら御者の連絡小窓をリックさんが叩く。小窓が開いて

「右手を見てください」

窓のカーテンを開けて外を見ると白鳥の様な真っ白の綺麗な鳥の群れが飛んでいた。裕に30羽はいる

「すごい!キレイ」

青い空に白色が生えて美しい。ほっこりしていたら左肩が重くなった。見るとミリアさんが寝ている。

「ミリア!守りの貴女が寝てどうするんですか!」
「いいよ!サリナさん寝かしてあげて。次の休憩まで半刻でしょう」

サリナさんは立ち上がり私と場所を変わった。ミリアさんが眠った事でサリナさんは話したかった事を切り出した

「多恵様。そのチョーカーは妖精王ですか? お会いになったのですか?」
「会って無いよ。朝起きたら枕元に置いてあった。てん君の感じでは旅の御守り虫除けを渡したかったみたい」

すると大きい溜息を吐いたサリナさんは、フィラの独占欲の強さに苦笑いし、子爵領でナンパに気をつけるように言う。
正直言ってこの世界の女性に比べたら”ちんちくりん”でモテる要素はないとないと思うけど…

「多恵さん今はフリーですから、我が領地で素朴な恋愛をするのもいいかもしれません」
「そっち方面は期待してない。綿花の収穫と機織りがしたいなぁ!」
「はい。出来る様に父に連絡してあります。期待していてくださいね」

ふとミリアさんを見るとまだ深い眠りに付いているので、昨日のグラント様との事を話した。するとサリナさんは眉間に皺を寄せ

「失礼承知でもうしあげます。多恵さんの判断は正しと思います。(元)候補の皆様は多恵さんをなんだと思っているのでしょ。
ご自分は心に決めたお方以外は愛せないと豪語しておきながら、多恵さんには候補者全員の想いを全て受けて当たり前の様な考え。同じ女性として許せません。
多恵さんは優しいから好意を向けてくれる方を無下に出来ないでしょうが、女性は心を許した男性にしか体を預ける事はできません。それを待つと言いながら実際はもいい所です。屈する事はありません。私のお見受けした所心を預けられそうなお方は2,3人ではありませんか?」

鋭いサリナさんにたじろぐと
 
「まして子を儲けるとなると本当に愛を持った方で無いと… 多恵さんが解消されたと聞いたときに、お押し売りの愛情から解放されると私喜んだのですよ!」
「押し売りって…」

サリナさんは中々の毒舌だけど的を得ている。そうなんだよ! 自分は心に決めた人しか愛せないって言っておきながら、私には7人とも受け入れろって
本当だ押し売りに近い。本当にこのままバース領で平民の男性と静かに恋愛でもいいかも…

『ん?』

スカートに何かに引っかかった。見ると裾のレースにアンクレットが引っかかっている。 

『怖い!』

他の人と恋愛なんて考えていたらグラント様のが発動した! じっと動かず足元を見て考えていたら、サリナさんがすぐに屈み取ってくれてアンクレットを見て…

「これがグラント様の虫除けですか?ですね!」
「!!」

サリナさん冷たく微笑みホラーチックで怖かった…
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