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133.青い

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イケおじのイザーク様お迎えし早速要件を窺う。

「先日話しいたしましたサリナ嬢の休暇願いが受理され、明日から領地に7日帰省となりました。陛下の配慮で多恵様の同行が決定いたしました。バース領は綿花栽培と織物が有名でのどかな所。ごゆっくりなされるのには最適かと」
「えっ!マジで?」

思わず嬉しくて元の世界の言葉が出ると意味を聞かれた。この世界の言葉遣いはとても丁寧で綺麗。そんな人達に良くない言葉遣いは覚えて欲しくなくて誤魔化す。するとイザーク様は察してくれ話題を変えた。

「明日は朝一から出発するので、本日はゆっくりなさって下さい。また旅には護衛に第1騎士団から2名騎士が同行し今デューク殿が選任中です」

私の思い付きに対応が早く驚く。解消した事やビルス殿下との噂がある中、ここを離れられるのは正直嬉しい。しかし気になる事がある。

「イザーク様。私が子爵領に行っている間に、他の国の方々が帰国する予定はありませんか? もしそうなら別の機会でいいです。皆さんがお帰るになる時はご挨拶とお見送りしたいので」

するとイザーク様は嬉しそうに

「そう仰ると思い確認できております。同じではありませんが後10日は滞在予定ですのでご心配なく」

安心ルするもの皆さんが気になり様子を窺うと

「あぁ…意気消沈し家臣が困っていると聞き及んでおります。陛下とも話していましたが、彼らはまだ青いですね。自分の想いばかり先走り相手の事を見ていない。
多恵様が見限っても仕方ないと思います。私の思い違いでしたら申しわけありません。多恵様は実年齢より経験豊かなお考えをお持ちだ。どちらかと言うと私や陛下に近いと感じます。もしそうであるなら殿下やグラントの考えは幼稚に思うでしょう」

『ピンポーン!イザーク様正解』

と心の中で叫ぶ。

「しかし殿下もグラントや他の候補者もいい青年です。時間と距離を置けば冷静になり、妥協点も見えてくるでしょう。召喚から我々は走りすぎて息切れ状態にあり、インターバルが必要なのですよ」

私の気持ちを理解してもらい嬉しい反面、皆さんに気を使わせ申し訳ないと思っていると

「貴女は十分頑張っていらっしゃる。もし多恵様が我が娘なら候補者全員張り倒して領地で静養させるところです」
「ありがとうございます。父が出来たみたいで嬉しいです」
「陛下同様に父と思い甘えてくださって結構ですよ」

冷静で堅物なイメージがあったけど父性愛あふれる方なんだと知った。どうやら今の私と歳の近い娘さんがいらっしゃるらしい。
箱庭に召喚されて本当に人に恵まれていると実感し胸が熱くなった。

子爵領行きの話を終えこの後はお茶を頂きながらイザーク様と初めて雑談をした。

驚く事にイザーク様は初め娘さんをグラント様に嫁がせるつもりで根回しをしていたらしい。しかしグラント様が結婚を望んでいなかったのと、娘さんは別に想う方がいらしたらしく、すぐこの話は無くなったそうだ。

「グラントは優秀で私の後を任せられると思い、娘との縁を願いましたが、今思えばグラントは多恵様と縁があったんですね」
「いや…どうでしょうか…」
「今はあまり気負わずご自分を甘やかしてあげてください」

楽しい時間はあっという間に過ぎ、イザーク様は次の予定があり退室されていった。
一息つくと茶器を片付けていたケイティさんが

「昼食後に明日の荷物を準備いたしますが、多恵様もご一緒になさいますか? 私が準備すると多恵様が現地で困る事も出てくると思いますので」

ケイティさんの提案で一緒に荷造りする事になった。平民の設定だからシンプルなワンピース中心で用意する。用意をしていると

「サリナが羨ましいですわ」

休暇を取るサリナさんを羨むケイティさん。私の事は気にせず休んでくれていいと言うと

「そうではないのです。我が領地にも来ていただきたのです。我が領地は薔薇が名産で今の時期だとロイヤルローズと言う品種が咲いていて、領地は薔薇に香りに包まれているのです」
「凄いね~行ってみたい! よくよく考えたら私箱庭に来て王都を出た事ないわ。いっぱい色んな所に行ってみたいよ」

そう言うとケイティさん嬉しそうに

「イザーク様に次は我が領地にお越しいただける様に、ご相談いたしますわ!」
「よろしくお願いします!」

嬉しい!ケイティさんの領地に誘ってもらった。“乙女”でなくなったら色んな所に行けるんだ。早くリリスのお仕事片付けて自由になりたい!

こうして楽しくお喋りしながら準備をしていたら、
マリカさんが昼食の準備に入室してきた。昼から明日の出発までマリカさんが付いてくれるみたい。
前日に号泣していたマリカさんはすっきりした顔をしてきぱきと給仕をしている。なんか少しお姉さんになった様に見える。マリカさん見ていると娘を思い出すなあ…  家族を思い出すと高速で48歳の自分が戻ってくる。

一旦手を止め昼食を頂き、昼から暫く出かける事を、ダラス陛下とビルス殿下に知らせる為に手紙を書こう。そんな事を考えながら食後のお茶を飲んでいたら、護衛騎士さんが来訪者を知らせる。今日は約束も予定も無いはずだけど…
今日の当番のマーカスさんが気まずそうに… 

「多恵様。宰相補佐のグラント様がお見えで面会を求められておられますが、いかがいたしましょうか?」

「へっ⁈」予想外の人の訪問に変な声が出た。

「無理なさらなくていいのですよ!」

ケイティさんが背中をさすってくる。大嫌いで解消したわけではないし、別に避ける理由も無い。

「明日の荷造りがあるので少しで良ければお会いすると伝えていただけますか?」
「畏まりました」

そう言いマーカスさんは退室していった。マリカさんにお茶の準備をお願いし、ケイティさんにお茶の準備が終わったら席を外してもらう様にお願いする。ケイティさんは何かあったらと退室を渋るけど、そんな方では無いからと説得した。

「何かあったら声でもモノ音でもいいので上げて下さい。騎士様と突入しますから!」
「そんな物騒な事にはならないよ!」
「前回の事もありますからね!」
「あ・・・はぃ」

キスマークを付けられた時の事か… すっかり忘れていた。こういう時って意外に本人は何とも思ってない事が多いのだ。

少し緊張してグラント様をお迎えしたら…
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