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131.もらい受ける

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夕食が終わり後は就寝準備ってタイミングで誰か来た。思わず身構えると、来客はダラス陛下だった。なんだろう?
夜にお会いしてまた変な噂が立つのもなぁ…と躊躇していたら、どうやら遅れてグリード殿下も来るらしい。2人きりじゃないなら大丈夫かなぁ…
あまりお待たせしてはいけないと面会をお受けする。

そして目の前にいつも通り眼光鋭いダラス陛下が座りじっと見据えてくる。居心地悪いよ!早くグリード殿下来て!

要件を窺うと片眉を上げた陛下は

「グラント殿が不甲斐ない時は貴女をもらい受けると言ってあった故、もらい受けに来たのだか」
「あの…冗談は…」
「シリウスもそうだが候補者がこのままなら、私が相手に名乗りをあげよう」

そして突然口説き始めるダラス陛下。

「私のところに来て貴女はしたい様にすればいい。そして子も私と3人儲ければいい話だ。父親が同じであれば兄弟間で争う事も減り、貴女が持っている倫理観も守れるのではないか?」

何で箱庭ここの男性は表現がストレートなの⁈ とりあえず王妃様正妻が居る事を理由に断ると

「私は不快か?」
「いえ、そこでは無くてですね…」
「男として私はどうだろうか?」

がっつり口説かれ返答に困っていたら、グリード殿下がようだ。話を終わらせようとすると

「多恵殿。私は本気だ。貴女が望むなら受け入れる気持ちはある。ただ、無理強いするつもりは無い。貴女との生活は楽しそうだ。考えてみてくれ」
「…はい」

返事をするとやっと陛下は入室許可をだした。遅れて来たグリード殿下は部屋の微妙な空気を感じ、明るく世間話を始める。殿下もうちょっと早く来てほしかった。陛下に口説かれちゃったよ…

「陛下夜も遅いので本題をお願いします」
「すまんぬ。ビルス殿と話し合いバスグルとモーブルとで労働協定を結ぶ事にした。立案に際し助言頂きたい」

そう言いモーブルに来て欲しいと願った。ルーク陛下には話を通して有るらしく、事前にレッグロッドにも根回しをしてある様だ。仕事が早いダラス陛下はやり手なのかもしれない。

「多恵殿の意見を聞きたく遅くに申し訳ないと思いながらも訪問した次第だ」
「私もそれでいいと思います。ただ、労働協定が完璧に立案出来ても、バスグルの体制が変わらないと改善しません。生活の為にあらゆる手段バスグル人はモーブルに渡って来るでしょう。リリスの箱庭で話は終わらず私がバスグルに行く事になると思います」

そう答えるとダラス陛下は嬉しそうに頬を緩ませた。そして私がバスグルに滞在する際は、グリード殿下をサポートに付けて下さるそうだ。そして陛下はゆくゆくグリード殿下はビビアン王女の王配となる為にバスグルに移り住む事になると話した。
いい方向に話が進んでいる事を喜んでいると

「ビルス殿下が多恵殿を絶賛しておった。食事会以外では接点は無かったようだが、いつの間に親密になったのだ?」
「えっと…」
「まぁよい。ビルス殿下は意図して道化ピエロを演じているようで、本来のビルス殿は文をわきまえ誠実な方の様だ。あの方なら信用できる」

陛下は意地悪な顔をして私の様子を窺い笑っている。恐らく察している様だ。
気不味くて咳払いをし、今後の陛下の予定をお聞きした。グリード殿下は恐らくビビアン王女と共にバスグルへ渡り、ダラス陛下は私を迎える準備する為に帰国される。そして私はアルディアが落ち着いたらモーブルに移る事になるだろう。

「ルーク陛下から多恵殿にはもう暫く滞在して欲しいと話があった。おそらく候補者の問題だろう。何か悩んでいるならば相談にのろう。遠慮せず頼りなさい」
「ありがとうございます」

何か言いたげなグリード殿下。言いたいことは分かっている。親友でもあるシリウスさんの事だろう。

「グリード殿下何か?」
「貴女に解消され今シリウスは使い物にならない状態です。他の候補者も同じ状態だと聞き及んでいます。解消についてはシリウスから詳細は聞きました。
多恵様の気持も分かるし、貴女を恋う男ども気持ちも分かる。難しいなぁ…」

なんとなく陛下と殿下には本音を話したくなって打ち明けてみる。

「陛下、殿下聞いてもらえますか?」
「「勿論だ」」

何故か今は素直な気持ちを言えそうだ。

「リリスに召喚されお願いされたのは箱庭4国の手助けする事でした。伴侶を得て子供を儲けるのは追加依頼オプションです。受けるかどうかは私に判断が委ねられています。
まぁ…妖精王フィラに関してもキャパオーバーの関係上、子を儲けるのは優先でお願いされましたが…。それなのに夫を選び子を産むのが当たり前にされ、候補者の願いを受け入れる事が前提って話が進んでいるんです。そこに私の意志は無い。私は子供を産む道具では無いのに…
正直皆さんの好意は嬉しいけど、私一人置いてきぼりなんです。皆さんは誰と恋愛しているんですかね…疑問です」

「「・・・」」

ダラス陛下は笑っていてグリード殿下は困った表情をした.

「皆青いな…自分の想いを必死に多恵殿に伝えるだけで、相手を思いやる余裕がないのだろう。やはり多恵殿は私の元に来るべきだ」 
「兄上。笑えない冗談はやめて下さい」

気持ちを分かってもらえ嬉しくて

「だから関係を一旦解消しお互い考える時間を持った方がいいんです。私も心を整えたくて人知れず田舎で平民として暮らし、唯の多恵として過ごしたいんです」
「それもいいかもしれん。多恵殿はまだ若い。色々経験すればいい。全面的に強力しよう」

その後お二人と暫く他愛も無い話をしていたら7刻になりら陛下と殿下は退室された。去り際に殿下がモーブルに帰る前にシリウスさんに会ってやって欲しいと願った。

「確約は出来ませんが…考えてみます」

と無難に返事をした。愚痴を聞いてもらって気が楽になり、その夜はぐっすり眠る事ができた。
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