女神の箱庭は私が救う【改編版】

いろは

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122.じゃんけん

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この状況マリカさんなら鼻血ものなんだろうなぁ…と思わず現実逃避をしてしまう。
伴侶候補の皆様に囲まれている。まるで路地裏でカツアゲされているひ弱な中学生のようだ。

「昨日の食事会でビルス殿下に何か言われたのではありませんか?あれから様子がおかしい!」
「口説かれていましたが、まさか!心を受けられたのですか?」

矢継ぎ早に質問が飛んでくる。

「何もありませんから。本当に疲れて起きれなかっただけで…」
「いや!ビルス殿下は女であれば誰でも口説くと言われていて節操の無いお方だ、騙されてはいけません」

ビルス殿下の第一印象は“超チャラ男”だったけど、朝話した感じでは他の貴族や王族と変わりなく紳士的で真面目だった。
恐らく朝お会いしたビルス殿下が本当の彼で、チャラ男は意図して演じている気がする。何で?第1王子で次期王なんじゃないの?
考え込んでいたらキース様は溜息を吐いて

「多恵様…また何か抱えていらっしゃいる。今は話せなのですね。貴女の助けになりたい、私はいつも貴女の為に有る事をお忘れなき様…」

胸に手を当て心配そうに見つめてくるキース様。相変わらず鋭いけど無理強いしないところが好きだ。

「歓談中失礼致します。多恵様は朝食を召し上がっておられません。よろしければお茶をご用意いたしましたので食卓へどうぞ」

サリナさんが助け舟を出してくれた。でもビルス殿下のところで食べて来たから正直いらない… でもここで食べないとまた心配される。少しだけいただこう。

「・・・」

今度は誰が私の隣かで…また揉めてるし

「もーじゃんけんで決めて下さい!」
「「「 じゃんけん? 」」」

あーそっか”じゃんけん”はこの世界に無いんだ。キョトンなお三方にじゃんけんを説明した。皆さん決闘せずに勝負が決まる画期的な方法だと感動されていた。
そして目の前で美丈夫が三人じゃんけんに興じている。私の隣を争う事を忘れてじゃんけんが楽しそうだ。
第1回じゃんけん大会の勝者はグラント様で小さくガッツポーズとしている。
そしてグラント様が隣に座り、向かいにアーサー殿下ではす向かいにキース様が着席される。アーサー殿下に他にじゃんけんの様なモノが無いのかと聞かれたので、“グーパーで分け”を教えて。4人で試しにやってみる。

「グーパーで分かれましょ!」

でグーかパーを出す。アーサー殿下と私がグーでグラント様とキース様がパーだった。

「ジャンケンもこのグーパ分けも画期的だ。グラントぜひ我が国でも取り入れよぉ!」 
「私の国では子供が遊びの一環でするものなので、国政に取り入れるのは…」
「いえ多恵様!ジャンケンは血を流さず優劣が決まる素晴らしい方法です。私は感動致しました」

後日正式にアルディア王国に“ジャンケン”と“グーパー分け”は取り入れられる事になり、後に乙女が齎したものとして記録されることになった。
嬉しいやら恥ずかしいやら…

お腹いっぱいで食べれず軽そうなモノだけ頑張って食べていたら、横からグラント様が私の手を取り

「無理に食べなくていいのですよ」
「ありがとうございます。今日はあまり食欲なくて…」

私が手にしているフォークに刺さっている、食べかけのチキンを暫く見ていたグラント様がいきなりチキンを食べた!

「えっ!」
「「何を!」」

アーサー殿下とキース様が立ち上げる。
そんな二人を無視してグラント様は微笑み私の手を掴んだまま見つめてくる。

『あ…昨日の食事会でのヤキモチだなぁ…この行動は』

召喚されて伴侶候補が出来てから1か月半経って候補の方々の性格が分かって来た。

アーサー殿下は王族だけあって優雅で真面目だけど少し感覚がずれている事が多く『残念』な事が多い。基本憎めないキャラだ。

グラント様は冷静沈着だけど超が付く程ヤキモチ妬きだ。そしてスキンシップが激しい。

キース様は合理的に考えて感情に流されない、そして洞察力があり隠し事してもいつも気付かれてしまう。一見ドライな感じがするが、実は愛情表現は激しい。

ケニー様は基本楽天家で自分の欲に素直だ。相手の機微に気付き難くやり過ぎて怒られるタイプだ。

共通していえる事は愛情表現が激し事。欧米人もびっくりなのだ。でもそれに慣れてきている自分が怖い。
リリスの箱庭が落ち着いたら結婚なんだよね… まだ現実味が無いけど。アルディアだけでも候補は4人もいる。いくら一妻多夫って言っても多すぎだ。とりあえずお心を受け取ったグラント様がキース様かなぁ…ってボンヤリ思っていたら2人と目が合う。優しい眼差しに顔が熱くなる。も!男前過ぎて直視出来ません。

「失礼します。多恵様。ダラス陛下から面会の申し込みがありました。如何いたしますか?」

見つめられ困っていたらサリナが助けてくれた。
丁度良かった!モーブル側の話を聞きたくて、面会を申し込もうと思っていた。

「ダラス陛下の都合に合わせるので、早めに調整お願いします」
「畏まりました」

振り返りアーサー殿下、グラント様、キース様に

「ご心配をおかけしました。皆さんお忙しい中お越しいただきありがとうございます」

お礼を述べて帰ってもらおうとしたら、アーサー殿下かハグして

「今日も頑張れるよう頬に口付けてくれないか?」
「分かりました。少し屈んで下さい」

屈んでくれたアーサー殿下の頬にキスをすると嬉しそうに微笑む。1人にすると全員にする事になり、次はグラント様で最後にキース様にハグ・キスをし、お三方をお見送りしやっと1人になれた。
そして少しでも早くバスグルの聖人の伝記を読みたくて直ぐに寝室に籠る。
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