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111.嬉しい報告

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日が傾きビビアン王女はまだお休みされているので、ご挨拶はまたの機会にし退室します。
シリウスさんが手を差し伸べて部屋まで送ると言ってくれ、断る理由もないしお願いすることに。
するとグリード殿下はハグをして耳元で

「貴女に会えてよかった。ありがとう」

囁かれ顔が熱くなる。その様子に不機嫌なシリウスさんをみて殿下が楽しいそうに笑う。
シリウスさんにエスコートされ廊下を歩いていると前からオーランド殿下とお付きのカイルさんが走ってきます。何かあったの?

「良かった。私も今聞いたのですが、部屋で待機していたバスグルの貴族が1名姿を消した様です。貴女に危険が及ぶのではないかとお迎えに来ました」

シリウスさんの顔が険しくなり

「多恵様。私はグリード殿下とビビアン王女が心配なので貴賓室に戻ります。オーランド殿下!申し訳ございませんが、多恵様をお守りください」
「勿論だ。貴殿は早く貴賓室に!」

シリウスさんは礼をして走って行った。もう騒動は勘弁してほしい。城内は騒然となり騎士が走り回っています。もー!陛下バスグルへの賠償金5割増しで請求しましょう!
オーランド殿下に守られながら部屋に戻る途中でアーサー殿下に会った。お忙しそうだ。

「多恵殿。良かった!今バスグルの貴族が1名姿を消し捜索中です。オーランド殿下と一緒なら安心です。これは…」

アーサー殿下はそう言い私の耳に飾られた小花に触れ、嬉しそうに微笑み

「この花はよく似合う。私の色だ」
『ん?私の色?』

一瞬意味が分からず固まる。殿下の瞳が私をずっと見つめてる?相変わらず綺麗な瞳だなぁ…瞳?

『確かイケおじが指してくれた小花はオレンジ色だった!殿下の瞳と同じ!』

殿下は頬に手を当てて額に口付けを落とし、オーランド殿下に私の護衛を頼み颯爽と歩いて行った。
少ししたらオーランド殿下が

「間違っていたらすみません。多恵様はこの小花の色とかあまり意識してなかったのでは?」
「オーランド殿下!正解です。誤解を招いてしまったようです」
「貴女に惚れている者は小さなことでも勘違いするものです。俺もそうですから。次は赤い花を飾って下さいね」

オーランド殿下が腰に手を回しぐっと引き寄せる。
オーランド殿下も初めの印象と随分違う。シャイで構ってあげたくなる弟タイプだった。今はしっかりした爽やかな青年だし、照れ臭そうに笑う顔は可愛らしい。こういうのギャップ萌え⁈

それにしても逃げた貴族はどこに行ったのだろう…

『たえ ようせい たのむ みつかる』
『妖精さんわかるかなぁ⁈』
『かくれる すぐ わかる』

てん君の提案どおり妖精さんに頼むことにした。心で妖精さんを呼ぶとすぐに来てくれた。

『たえ すこし げんき ない かわいそう』
『ありがとう。大丈夫だよ。それよりこの城の中で隠れてる人とか探せる?』
『うん。なかまにきく』

そう言うと妖精さんは飛んで行った。少しすると

『たえ!いた!』
『え!!もう!早!』

護衛についてもらっている騎士さんに応援を呼んでもらいオーラン殿下と隠れている場所に向かう。
隠れている場所は私が前に身を隠した使用人の女子寮横の植木の影。
向かう途中に捜索している騎士さんと合流し、着くころには20人近い騎士さんが集まった。皆さん鍛えていて背が高いから20人も揃うと圧巻だ。
背の高い植込みの上を妖精さんが旋回している。私が指さすと一斉に周りを騎士さんが取り囲んだ。
手を上げて半泣きの若い男性が出て来た。

「私はアカデミーの先輩の付き添いで来ただけなんだ。明日国の者が来ればきっと父上の耳に入り、私は勘当されてしまう!」

悲壮な顔の青年は騎士さんに連行されて行った。

後に聞いた話だがこの青年は事情聴取受けた彼の先輩が顔面蒼白で部屋に戻って来たのを見て、拷問を受けると勘違いし怖くなったって逃げ出したそうだ。ほんと大事にならなくてよかった。穏やかな異世界ライフを過ごさせて下さい。

オーランド殿下に送っていただき部屋に戻った。ソファーに座りゆっくりしていたら、サリナさんと一緒にエレナさんが来た。凄く久しぶりに会ったけど、凄く大人っぽくなり綺麗になった。

「多恵様。本日をもってお暇をいただく事にり、ご挨拶に参りました」

丁寧な挨拶をいただき、お祝いを述べると

「ありがとうございます。多恵様にお仕えした事で良縁に恵まれました。あの…宜しければ婚約者にお会いいただけませんか?」

突然の婚約者登場に焦り、思わず身なり確認してしまう。そして廊下で待っている婚約者さんに入ってもらう事に。緊張しながら扉を注視すると、入室してきたのは20前半の優しそうな男性。たしかグラント様の部下だったはず。婚約者さんから丁寧な挨拶を頂いた。 

「私は多恵様に感謝しかありません」
「私何もしてませんけど?」

婚約者は子爵家嫡男のジョージさん。2人はグラント様が私の伴侶候補になった事で、仕事で会う事が増え顔見知りに。非番の日に偶然城下で出会いお茶をし、お互い好印象をもったそうです。それから何度も仕事で会う機会が増え親しくなり、話が進んだのはジョージさんのお父様が病気を患い、急遽ジョージさんが家督を継ぐ事に。そして妻を娶る必要が出てきたジョージさんは、妻はエレナさんしかいないと思い求婚しエレナさんは受けたそうです。

「閣下は仕事ができ男の私から見ても素晴らしいお方です。しかし無駄が無く少し冷たいイメージがありましたが、多恵様と親しくなられ柔らかく穏やかになられました。本当に感謝しかありません」

話振りから誠実なのが分かり安心し

「エレナさん。素敵な婚約者ね。幸せになってね!偶には遊びに来てね。待ってるから」

涙ぐみ抱きついて来るエレナさん。年齢的に娘だから嫁に出す母の気持ちだ。

“人の不幸は蜜の味”というけど私は”人の幸せも蜜の味”だ!

暫くお二人の惚気話をいっぱい聞いて幸せをお裾分けして貰って、幸せな気持ちで1日を終えました。
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