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106.中和剤

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「多恵様。俺を見て!」

オーランド殿下の声で次の曲が始まった事に気づく。そして殿下のリードで1歩目を踏み出した。
殿下にお礼を言うと

「やはりビビアン王女が気になりますか?」
「はい。この舞踏会に合わせる様に来て嫌な予感がしてるんです」

すると殿下は表情を曇らせ、私の感は当たっていると言った。王女はオーランド殿下にも面会を申し込み、殿下はそれをが断ったそうだ。

「先程挨拶を受けましたが、噂通りお美しいが強欲さが顔に出ている。あの手の女性でレックロッドは痛い目を見ているので、お相手する気さらさらありません」

殿下はそう言い溜息を吐いた。バスグル側は私との繋がりを模索していると言い注意を促した。

「できる範囲でウチの者にも探らせてますが、用心深いよう尻尾を掴めない」
「ありがとうございます。助けが必要な時はお願いします」

オーランド殿下の言葉は心強い。こうしてやっとダンスに意識を向けると、強烈にビビアン王女の視線を感じる。何度も接近してくるがグリード王弟殿下とオーランド殿下がターンをして躱してくれている。時折目に入るグリード王弟殿下の顔色が悪い。
大丈夫!あと少しで終わると思った時

「ガッシャーン!」

ガラスが割れる大きい音がした。音に気を取られたオーランド殿下と私は、ビビアン王女が接近を気づくのが遅れた。
グリード王弟殿下がターンして躱そうとするが、ビビアン王女の手が私の腕に当たる。

「いた…」

どうやらビビアン王女の指輪が腕に当たった。腕を見ると2cm程の赤い筋。でも出血はしていない。 

「なんて事を!」

オーランド殿下がビビアン王女に向かって怒りを露わにする。
そのタイミングで曲が終わり、ビビアン王女が私に駆け寄り低姿勢で謝罪された。隣にいるオーランド殿下は抜刀しそうな勢いだ。会場が響めき出したので、慌ててビビアン王女の謝罪を受け場を納める。

側から見守る伴侶候補の皆さんが殺気立ちそちらの方が怖かった。一旦下がりソファーに戻ると、直ぐにグリード王弟殿下が来た。殿下は謝罪もそこそこに私の傷に何か薬を塗った。

「何これ?」
「念の為に中和剤です。流石に乙女に使わないと思いますが… 真相は分かりませんが他国で良くない話を耳にしたので念の為に」

物騒な話に固まると

「グリード殿下。貴方はどちら側なのですか⁈」

キース様が聞いた事も無い低い声でグリード殿下を問い詰める。

「……済まぬ。この場で断言出来ぬ。少し時間をくれ」

「多恵。一旦下がるぞ」
「え?うん…」

こうゆう時一番にキレるフィラが妙に冷静なのが怖い。フィラが私の手を取りキース様についてくる様に言い控室に向かう。
控室に行くとフィラはソファーに私を座らせ傷を確認すると、小さな錠剤を口に放り込み水を飲まされた。

「妖精王…今の薬は?」
「体内の毒素を中和する薬だ。ロイドが持って寄こした」
「ビビアンはイリアの箱庭でも色々やらかしているから多恵が心配な様だ」

特段体調に変化はないけどなぁ… ロイドが心配するってどんだけなんだビビアン王女⁈
やっぱり私に宛た手紙はフェイク? グリード殿下をはじめ皆さんの対応を見ていたら、グリード殿下の為になんて気持ちは感じない。
手紙を処分してと書いてあってけど、嘘がバレるのを恐れたから?嫌 な予感したから手紙はフィラに妖精城で保管してもらっている。
キース様はずっと私の手を握り様子を見ている。心配させているなぁ…
それよりフィラが大人し過ぎるのがものすごく怖い…

「大丈夫だ。女神も動き出す。レオンと同じ道を辿るだろう」

「「・・・」」

女神が動くってビビアン王女今まで相当お転婆してきているんですね…
暫くするとアーサー殿下とグラント様が控室にやって来た。心配してくれているのはいいけど抱擁が長いです。アーサー殿下!
いつまで経っても解放してくれない殿下からグラント様が助けてくれた。グラント様はアーサー殿下の手前いつもみたいにキスはしてこないけど、心配してくれているを感じる。
アーサー殿下曰くビビアン王女が陛下と私にバスグルとして正式に謝罪をしたいと申し出があるらしく、体調がいいなら会場に戻って欲しいそうだ。私は体調は悪くないからいいけど⁈

「多恵。てんを呼び一緒に居ろ!前の様のならない為だ」
「へ?何で?皆びっくりするよ?…よく分からないけどわかった」

てん君を呼ぶとてん君は尻尾を振って私の足元にきてお座りをする。今日のてん君は昨日いっぱいもふったからシェパード並みの大きさで結構大きい。てん君は厳しい視線をフィラに向ける。

『てん君…フィラと仲直りしたから仲良くしてね』
『まだ ない みる』

てん君の目は厳しいようだ。フィラが苦笑いしている。てん君はグラント様とキース様の足元に行き何か確かめて、次にアーサー殿下の元に行った。何を確認しているのだろ⁈

『ふんっ!』

そして鼻を鳴らしてそっぽを向いて私も元に戻って来た。

『たえ グラントとキース だいじょうぶ アーサー だめ』

小姑てん君のダメ出しはアーサー殿下だけでした。
苦笑いしながらサリナさんに身なりを整えてもらい会場に戻る。でも何故かフィラは控え室に残り後で来るらしい。これまた不気味…
結局アーサー殿下にエスコートしてもらう事になり手を取ると殿下と私の間にてん君が入って来る。

「これではエスコート出来ない。多恵殿!聖獣に後ろに控える様に命じてもらえませんか」

確かに歩きにくい。

『てん君。歩きにくいから私の左側に来てくれない?』
『うん でも アーサー わるい したら かむ』
『えっと…噛む前にまずは唸って注意喚起しようね』

隙あれば触れて来る殿下。でもてん君いきなり噛むのは止めて下さい。流血騒ぎでこれまた大変な事になるからね。溜息をついてフィラを残し控室を出た。

出て廊下を歩いていると騎士が一人で歩いてくる。見たことない騎士服を着ている。よく見たらビビアン王女の後ろに控えていたゴリマッチョだ。デュークさんが前に立ち剣に手をかけ、ゴリマッチョに止まるように指示する。
廊下に緊張が走る。気が付いたらデュークさんの横にてん君が牙を剥き威嚇する。私をアーサー殿下が抱え込み周りに何重もの騎士に囲まれる。
ゴリマッチョさんはいきなり跪き剣を床に置いて頭を深々と下げる。アルディア側は呆気に取られ固まる。

「大変無礼承知で私の話を聞いていただきたい。私はビビアン王女専属護衛騎士のウィルソン・バーミスと申します。ビビアン王女の暴走を止めていただきたい。恐らくこのままでは王女は居場所も全てなくす。もう俺では王女を止める事は出来ない」

ゴリマッチョは声を震わし懇願する。

『たえ こいつ うそ ない』

てん君がウィルソンさんをクンクン嗅いでいる。ウィルソンさんの話が本当ならどうゆう事?
話が全く見えてこないくて、只々何が起こるか分からず戸惑うばかりだ。
てん君はグラント様とキース様にすり寄り撫でてもらい喉を鳴らしている。あれ?。てん君は犬では無かったのかぃ?
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