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103.甘噛み
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頭を抱え込まれてフィラの顔は見えないけど、声から怒っているのは分かる。
「フィラ違うの…」
「アリアの跳ねっ返りが好き放題している様だなぁ⁉︎ リリスが頭を痛めているぞ。グリードよ我が父の祖国故にある程度目をつぶってきが、多恵が泣く様な事が有れば対応を見直す必要があるなぁ⁉︎」
「…」
グリード殿下は言葉も出ない。離して欲しくてフィラの腕の中でもがくけど離してくれず
「フィラ!大丈夫だからとりあえず離して!」
「駄目だ。お前の泣き顔は他の奴に見せたくない!」
騒動に気付いたケイティさんと騎士さんが入って来て部屋の中は収拾がつかない。するとシリウスさんがフィラの前に跪き
「妖精王!発言許可を」
「お前…名は?」
「シリウス・サザライスと申します。前妖精女王シュリ様が番のサザライス公爵家の者です。私の話をお聞きいただきたい」
少しトーンダウンしたフィラは
「やはりサザライス家の者か…目元がどことなく父上に似ている」
フィラの腕の中で驚いて固まる。フィラのお父様の事も初めて聞いたし、シリウスさんとフィラが親戚だった事にも驚く。
それより部屋の微妙な空気がいたたまれない…
「フィラ泣き止んだから取りあえず離して!苦しいよ」
フィラは無言で腕の力を緩め、そのまま私を抱きかかえてソファーに座った。フィラの膝の上から逃げようとしたけど、腰をがっちりホールドされて動けない。
グリード王弟殿下はその場で俯いたままだ。シリウスさんはフィラの方へ向き直り跪いたままで話しづらい!
「殿下もシリウスさんも話しづらいです。着席してください」
「お気遣いに感謝いたします」
シリウスさんはグリード王弟殿下を支えながら殿下と座った。向かいに座るグリード王弟殿下の顔色は悪い。とりあえずケイティさんと騎士さんには退室してもらう。そして沈黙の後にシリウスさんが
「まずは多恵様にお詫びを。多恵様が仰る事は御尤も。我がモーブル…否、我々が浅はかでした。一度口にした言葉は消せない。殿下には一度お下がりいただき後日再度謝罪の場を設けさせていただきたい」
憔悴した様子のグリード殿下は顔を上げ声をふり絞り
「妖精王。我がモーブルはリリスを敬愛しております。多恵様にも敬意を持ってより良き関係を気付きたいと思っております。
舞踏会後に我がモーブルが抱える問題をご相談する予定です。問題はビビアン王女とも関係しています。それは噂されているビビアン王女のご成婚ではありません。モーブルとバスグルの2国間の問題なのです」
シリウスさんはグリード殿下を支えながら
「グリード殿下は一人で問題を抱え込んでおられる…」
いつも飄飄としお気楽な人だと思っていたグリード殿下が悩んでいるなんてびっくりだ。一所懸命殿下を支えているシリウスさんの好感度が上がると視線を感じ、見上げたらフィラが覗き込んで来る。
「それより多恵?俺に話すことがいっぱいあるんじゃないか?例えばキ…」
『待ってここじゃ嫌!』
慌ててフィラの口元を手でふさいだ。絶対キース様との事言うつもりだ。フィラの目が笑っている。フィラは妖精に近い時もあって、たまに空気が読めない事がある。まさに今!
なんでここでキース様の話題を出そうとするかなぁ⁈少し睨んでやった!睨まれたフィラは気不味そうに
「多恵。モーブルの連中はどうする?俺はお前に任せる」
「今日は私も勢いに任せて言い過ぎました。お詫びします。お互い冷静になり舞踏会が終わりましたらお話の場を持ちましょう。私達には冷静になる時間が必要なようです」
やっと顔を上げたグリード王弟殿下は再度跪き
「多恵様のご恩情に感謝いたします。私も冷静なります。不躾承知でお願い申し上げます。明日は1曲お相手いただきたい」
「勿論です。でも私下手ですよ。足を踏まれる覚悟でダンスを申し込んでくださいね!」
少しでも場を和ませたくてお道化てみせた。殿下は少し笑ってくれ胸を撫で下ろす。
そしてこの後殿下とシリウスさんは退室して行った。
ケイティさんを呼びお茶と茶菓子をお願いする。ティーセットを用意するケイティさんの横で手を止めて固まるマリカさん。マリカさんの視線の先はフィラだ。どうやら見惚れているよう。頬を赤らめガン見している。
後で聞いた話だが私が来るまでフィラは森からあまり出た事が無く、王族以外は殆ど見た事が無いらしくレアキャラだったようだ。マリカさんも今日初めて見たようで後日興奮気味で話してくれた。
「マリカ。貴女は下がりなさい」
『あ!ケイティさん怒ってる』
マリカさん今度は青ざめ深々と頭を下げて退室して行った。今晩は説教部屋行きか…
お茶の用意が終わるとケイティさんには席を外してもらった。
「フィラ⁈気付いているの?」
キース様の事を聞くとやはり気づいていた。
「あいつは“義”重んじる奴だ。ずっと家族と領地の為に尽くしてきた奴で、妹も嫁ぐことが決まり港も安定し、やっと自分の事に目を向けれるようになったんだろう。
多恵の相手が増えるのは俺としても好ましく思わないが、まぁ悪い奴じゃないし義理堅く真面目だ。多恵を泣かす事はないだろう」
意外にあっさりフィラから了承を貰えて安心する。
ほっとしていたらフィラの顔が近づき口付けをくれる。大きく温かい手が首筋に触れると何とも言えない気持ちになる。
口付けは頬や額にどんどん移り、大きな手で髪をなで上げられ、あらわにらなった耳に触れられて身震いする。するとフィラは小さく笑い耳を甘噛みする。びっくりして身を離そうとするけど、がっちりホールドされて動けない。耳から首元に唇を這わされゾクゾクが止まらない。
フィラの体温がますます上がり、頭の中で警報音が鳴り響いた。
「フィラ違うの…」
「アリアの跳ねっ返りが好き放題している様だなぁ⁉︎ リリスが頭を痛めているぞ。グリードよ我が父の祖国故にある程度目をつぶってきが、多恵が泣く様な事が有れば対応を見直す必要があるなぁ⁉︎」
「…」
グリード殿下は言葉も出ない。離して欲しくてフィラの腕の中でもがくけど離してくれず
「フィラ!大丈夫だからとりあえず離して!」
「駄目だ。お前の泣き顔は他の奴に見せたくない!」
騒動に気付いたケイティさんと騎士さんが入って来て部屋の中は収拾がつかない。するとシリウスさんがフィラの前に跪き
「妖精王!発言許可を」
「お前…名は?」
「シリウス・サザライスと申します。前妖精女王シュリ様が番のサザライス公爵家の者です。私の話をお聞きいただきたい」
少しトーンダウンしたフィラは
「やはりサザライス家の者か…目元がどことなく父上に似ている」
フィラの腕の中で驚いて固まる。フィラのお父様の事も初めて聞いたし、シリウスさんとフィラが親戚だった事にも驚く。
それより部屋の微妙な空気がいたたまれない…
「フィラ泣き止んだから取りあえず離して!苦しいよ」
フィラは無言で腕の力を緩め、そのまま私を抱きかかえてソファーに座った。フィラの膝の上から逃げようとしたけど、腰をがっちりホールドされて動けない。
グリード王弟殿下はその場で俯いたままだ。シリウスさんはフィラの方へ向き直り跪いたままで話しづらい!
「殿下もシリウスさんも話しづらいです。着席してください」
「お気遣いに感謝いたします」
シリウスさんはグリード王弟殿下を支えながら殿下と座った。向かいに座るグリード王弟殿下の顔色は悪い。とりあえずケイティさんと騎士さんには退室してもらう。そして沈黙の後にシリウスさんが
「まずは多恵様にお詫びを。多恵様が仰る事は御尤も。我がモーブル…否、我々が浅はかでした。一度口にした言葉は消せない。殿下には一度お下がりいただき後日再度謝罪の場を設けさせていただきたい」
憔悴した様子のグリード殿下は顔を上げ声をふり絞り
「妖精王。我がモーブルはリリスを敬愛しております。多恵様にも敬意を持ってより良き関係を気付きたいと思っております。
舞踏会後に我がモーブルが抱える問題をご相談する予定です。問題はビビアン王女とも関係しています。それは噂されているビビアン王女のご成婚ではありません。モーブルとバスグルの2国間の問題なのです」
シリウスさんはグリード殿下を支えながら
「グリード殿下は一人で問題を抱え込んでおられる…」
いつも飄飄としお気楽な人だと思っていたグリード殿下が悩んでいるなんてびっくりだ。一所懸命殿下を支えているシリウスさんの好感度が上がると視線を感じ、見上げたらフィラが覗き込んで来る。
「それより多恵?俺に話すことがいっぱいあるんじゃないか?例えばキ…」
『待ってここじゃ嫌!』
慌ててフィラの口元を手でふさいだ。絶対キース様との事言うつもりだ。フィラの目が笑っている。フィラは妖精に近い時もあって、たまに空気が読めない事がある。まさに今!
なんでここでキース様の話題を出そうとするかなぁ⁈少し睨んでやった!睨まれたフィラは気不味そうに
「多恵。モーブルの連中はどうする?俺はお前に任せる」
「今日は私も勢いに任せて言い過ぎました。お詫びします。お互い冷静になり舞踏会が終わりましたらお話の場を持ちましょう。私達には冷静になる時間が必要なようです」
やっと顔を上げたグリード王弟殿下は再度跪き
「多恵様のご恩情に感謝いたします。私も冷静なります。不躾承知でお願い申し上げます。明日は1曲お相手いただきたい」
「勿論です。でも私下手ですよ。足を踏まれる覚悟でダンスを申し込んでくださいね!」
少しでも場を和ませたくてお道化てみせた。殿下は少し笑ってくれ胸を撫で下ろす。
そしてこの後殿下とシリウスさんは退室して行った。
ケイティさんを呼びお茶と茶菓子をお願いする。ティーセットを用意するケイティさんの横で手を止めて固まるマリカさん。マリカさんの視線の先はフィラだ。どうやら見惚れているよう。頬を赤らめガン見している。
後で聞いた話だが私が来るまでフィラは森からあまり出た事が無く、王族以外は殆ど見た事が無いらしくレアキャラだったようだ。マリカさんも今日初めて見たようで後日興奮気味で話してくれた。
「マリカ。貴女は下がりなさい」
『あ!ケイティさん怒ってる』
マリカさん今度は青ざめ深々と頭を下げて退室して行った。今晩は説教部屋行きか…
お茶の用意が終わるとケイティさんには席を外してもらった。
「フィラ⁈気付いているの?」
キース様の事を聞くとやはり気づいていた。
「あいつは“義”重んじる奴だ。ずっと家族と領地の為に尽くしてきた奴で、妹も嫁ぐことが決まり港も安定し、やっと自分の事に目を向けれるようになったんだろう。
多恵の相手が増えるのは俺としても好ましく思わないが、まぁ悪い奴じゃないし義理堅く真面目だ。多恵を泣かす事はないだろう」
意外にあっさりフィラから了承を貰えて安心する。
ほっとしていたらフィラの顔が近づき口付けをくれる。大きく温かい手が首筋に触れると何とも言えない気持ちになる。
口付けは頬や額にどんどん移り、大きな手で髪をなで上げられ、あらわにらなった耳に触れられて身震いする。するとフィラは小さく笑い耳を甘噛みする。びっくりして身を離そうとするけど、がっちりホールドされて動けない。耳から首元に唇を這わされゾクゾクが止まらない。
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