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101.栞
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「キース様。そろそろ時間です。起きれますか?」
ゆっくり目を開けたキース様と目が合う。
「やっぱり寝不足だったんですね。よく寝ていましたよ」
すると甘い微笑みを向け
「夢で純白の花嫁姿の貴女を見ました。美しかった…予知夢であって欲しい」
そしてゆっくり起き上がり抱きしめてくるキース様。来た時と違ってスッキリしたお顔をされている。サリナさんがそっと温かいお茶を用意してくれ、2人で並んでお茶を飲みほっこり。キース様の手を取り手の平にリボンのお返しを乗せて、キース様の反応待ち。めっちゃ緊張する…
リボンのお返しは栞。桜色の生地に焦茶色の刺繍糸で『 T to K 』と刺繍した。
10㎝程の小さい栞。普段持ち歩けるように手帳に挟めるサイズにした。この世界はスマホなんて無いから手帳が必須アイテム。令嬢の様な完璧は刺繍は出来ないから簡単なクロスステッチで刺繍した。趣味の域を出ない腕前だから、キース様の反応がとても気になる。サリナさんは褒めてくれたけど不安だ。
「これは…」
「栞です。リボンのお返ししたくて… 私は文字を書けないから手紙は代筆なんです。自分で何かしたくて趣味レベルの裁縫しか出来なくてですね…
こんな物しか出来なくてすみません」
すると栞を凝視したキース様は、刺繍を見て何を書いてあるのか質問してきた
「私の世界の文字で”多恵からキースへ”という意味の略語なんです」
キース様はまだ栞を見つめています。あまり見ないで欲しい。手縫いだから縫い目が粗いのが分かっちゃう!
「そこの侍女。少し外してもらえないか… 勿論扉を開けくれていい」
サリナさんは私に視線で確認してくる。頷くと礼をし退室して行った。そして2人きりになり無言のキース様に緊張する
「貴女の側で眠り目覚めたら貴女がいる。こんな幸せな事はない。私は今気持ちを抑えられない。妖精王や他の候補者が想いを告げ、貴女が受け取ったのも知っています。そして我々の想いが貴女の負担になるのも理解しています。しかし一欠片でいい貴女の愛が欲しい。私に与てもらえませんか⁈」
キース様にぐっと身を寄せられて固まる。でも嫌じゃないんだよね… こっちに来て私の倫理観崩壊していて、皆さんの想いが嬉しいし心地よい。
不器用な私が皆んな平等に愛せるか不安で、一歩が踏み出せないと言い訳をすると
「誰かに言われませんでしたか? リリスの箱庭住人は愛情深く、一度心に決めた人を一生涯愛すると。想いが叶わなくても変わる事はない」
そう言いキース様は更に距離を詰める。プチパニック状態の私はしどろもどろで
「応えれるかわかりません」
「受け取ってくれればいい」
「まだ私の全てを見せていないから、本当の私を見たら幻滅するかも」
「完璧な人間はいませんよ。それに貴女の短所も私は愛おしい」
どんどん距離を詰められソファーの端まできて後がない。キース様の手が私の頬に添えられる。
この流れはキスなんだけど嫌じゃ無いから困った。
キース様の綺麗なお顔が近く。でも争う気が起きない…
そして触れるだけの優しい口付け。欲情を含んでいなくて愛情だけを感じ心が満たされていく。
瞼や頬にいっぱい降ってくる口付けに溺れていたら扉を誰かノックする。
どうやらキース様の従者が迎えに来たようだ。途端にキース様が不機嫌になる。
幼子が拗ねた様な顔にキース様もこんな表情するんだと思い愛おしく思う。
キース様は確認するかの様に口付けして身を離して
「明日は必ず貴女を守ります。貴女に想いが届いた私は無敵ですから」
「頼りにしていますね」
キース様は立ち上がり私の手を取り引き寄せ抱きしめた。何故かキース様はサリナさんを呼び冷やしたタオルを頼んでいる。意味が分からずキョトンとしていたらサリナさんが温かい目で見てきます。
「この栞は大切に肌身離さず持ち歩きます。今日は私にとって最良の日となるでしょう。明日は大変な1日となるのでお早くおやすみ下さい」
「明日はよろしくお願いします」
甘い微笑みを向けキース様は退室されて行った。
ぼーと立ち尽くす私にサリナさんが冷やしタオルを渡してくれる。何故冷やしタオルなのか疑問に思っていたら
「多恵さんお顔が真っ赤です。冷やして落ち着いて下さい」
慌てて鏡をみる。
「・・・」
見事に真っ赤だ。例えるならお笑いコントの酔っ払いのようだ。冷たいタオルを顔に押し付け必死に冷やす。駄目だ!どんどん熱くなってくる。
「サリナさんどうしよう…キース様のお心もらっちゃいました。勢いって怖い」
すると微笑んだサリナさんが
「私がお見受けするに求婚者のお心は本物でございます。多恵さんがお嫌でなければお受けすれば良いかと。お断りしても諦める方々ではありませんしね。皆さんも多恵さんが戸惑っているのも理解されているはずです」
また顔が熱くなり、ふわふわした感じがする。
またフィラにバレるんだろうなぁ…
夜がこわい…
少し落ち着いた頃にケイティさんが食事の準備に来た。食卓の準備をサリナさんがしていたら、ケイティさんが誰かを連れてきた。綺麗な亜麻色の髪と瞳の雪と変わらない年頃の可愛らしい娘さん。エレナさんの替わりの侍女さんで、暫くケイティさんに付いて仕事を覚えるらしい。
「多恵様。新しい侍女のマリカです。暫く私に付きます。至らぬ所が多いと思いますが、よろしくお願いします。マリカ。多恵様にご挨拶を」
「マリカと申します。一生懸命お仕えいたします。よろしくお願いします」
マリカさんは綺麗なカーテシーをし緊張しながら挨拶をくれた。
「多恵です。知らない事が多いので教えて下さいね」
「はい!」
超かわいい。構ってあげたい!
「多恵様。4刻半にグリード王弟殿下がお見えになるとお聞きしております。お食事をお早く召し上がって下さい」
キース様との事があってまるっと忘れていた。グリード殿下来るんだ。火照った顔が一気に冷めていく。リリスの力で明後日に私を飛ばしてくれないかなぁ… 一瞬現実逃避すると
「多恵様。今日はクロワッサンですよ」
サリナさんが笑顔でクロワッサンが入ったカゴを見せてくれる。焼きたてでめっちゃいい匂いだ。席に着いて一口食べたら幸せ! ふとサリナさんと目が合う。しまった!またパンに釣られた…
サリナさんは私の操縦方法を熟知している様に思うのは気のせいだろうか…
ゆっくり目を開けたキース様と目が合う。
「やっぱり寝不足だったんですね。よく寝ていましたよ」
すると甘い微笑みを向け
「夢で純白の花嫁姿の貴女を見ました。美しかった…予知夢であって欲しい」
そしてゆっくり起き上がり抱きしめてくるキース様。来た時と違ってスッキリしたお顔をされている。サリナさんがそっと温かいお茶を用意してくれ、2人で並んでお茶を飲みほっこり。キース様の手を取り手の平にリボンのお返しを乗せて、キース様の反応待ち。めっちゃ緊張する…
リボンのお返しは栞。桜色の生地に焦茶色の刺繍糸で『 T to K 』と刺繍した。
10㎝程の小さい栞。普段持ち歩けるように手帳に挟めるサイズにした。この世界はスマホなんて無いから手帳が必須アイテム。令嬢の様な完璧は刺繍は出来ないから簡単なクロスステッチで刺繍した。趣味の域を出ない腕前だから、キース様の反応がとても気になる。サリナさんは褒めてくれたけど不安だ。
「これは…」
「栞です。リボンのお返ししたくて… 私は文字を書けないから手紙は代筆なんです。自分で何かしたくて趣味レベルの裁縫しか出来なくてですね…
こんな物しか出来なくてすみません」
すると栞を凝視したキース様は、刺繍を見て何を書いてあるのか質問してきた
「私の世界の文字で”多恵からキースへ”という意味の略語なんです」
キース様はまだ栞を見つめています。あまり見ないで欲しい。手縫いだから縫い目が粗いのが分かっちゃう!
「そこの侍女。少し外してもらえないか… 勿論扉を開けくれていい」
サリナさんは私に視線で確認してくる。頷くと礼をし退室して行った。そして2人きりになり無言のキース様に緊張する
「貴女の側で眠り目覚めたら貴女がいる。こんな幸せな事はない。私は今気持ちを抑えられない。妖精王や他の候補者が想いを告げ、貴女が受け取ったのも知っています。そして我々の想いが貴女の負担になるのも理解しています。しかし一欠片でいい貴女の愛が欲しい。私に与てもらえませんか⁈」
キース様にぐっと身を寄せられて固まる。でも嫌じゃないんだよね… こっちに来て私の倫理観崩壊していて、皆さんの想いが嬉しいし心地よい。
不器用な私が皆んな平等に愛せるか不安で、一歩が踏み出せないと言い訳をすると
「誰かに言われませんでしたか? リリスの箱庭住人は愛情深く、一度心に決めた人を一生涯愛すると。想いが叶わなくても変わる事はない」
そう言いキース様は更に距離を詰める。プチパニック状態の私はしどろもどろで
「応えれるかわかりません」
「受け取ってくれればいい」
「まだ私の全てを見せていないから、本当の私を見たら幻滅するかも」
「完璧な人間はいませんよ。それに貴女の短所も私は愛おしい」
どんどん距離を詰められソファーの端まできて後がない。キース様の手が私の頬に添えられる。
この流れはキスなんだけど嫌じゃ無いから困った。
キース様の綺麗なお顔が近く。でも争う気が起きない…
そして触れるだけの優しい口付け。欲情を含んでいなくて愛情だけを感じ心が満たされていく。
瞼や頬にいっぱい降ってくる口付けに溺れていたら扉を誰かノックする。
どうやらキース様の従者が迎えに来たようだ。途端にキース様が不機嫌になる。
幼子が拗ねた様な顔にキース様もこんな表情するんだと思い愛おしく思う。
キース様は確認するかの様に口付けして身を離して
「明日は必ず貴女を守ります。貴女に想いが届いた私は無敵ですから」
「頼りにしていますね」
キース様は立ち上がり私の手を取り引き寄せ抱きしめた。何故かキース様はサリナさんを呼び冷やしたタオルを頼んでいる。意味が分からずキョトンとしていたらサリナさんが温かい目で見てきます。
「この栞は大切に肌身離さず持ち歩きます。今日は私にとって最良の日となるでしょう。明日は大変な1日となるのでお早くおやすみ下さい」
「明日はよろしくお願いします」
甘い微笑みを向けキース様は退室されて行った。
ぼーと立ち尽くす私にサリナさんが冷やしタオルを渡してくれる。何故冷やしタオルなのか疑問に思っていたら
「多恵さんお顔が真っ赤です。冷やして落ち着いて下さい」
慌てて鏡をみる。
「・・・」
見事に真っ赤だ。例えるならお笑いコントの酔っ払いのようだ。冷たいタオルを顔に押し付け必死に冷やす。駄目だ!どんどん熱くなってくる。
「サリナさんどうしよう…キース様のお心もらっちゃいました。勢いって怖い」
すると微笑んだサリナさんが
「私がお見受けするに求婚者のお心は本物でございます。多恵さんがお嫌でなければお受けすれば良いかと。お断りしても諦める方々ではありませんしね。皆さんも多恵さんが戸惑っているのも理解されているはずです」
また顔が熱くなり、ふわふわした感じがする。
またフィラにバレるんだろうなぁ…
夜がこわい…
少し落ち着いた頃にケイティさんが食事の準備に来た。食卓の準備をサリナさんがしていたら、ケイティさんが誰かを連れてきた。綺麗な亜麻色の髪と瞳の雪と変わらない年頃の可愛らしい娘さん。エレナさんの替わりの侍女さんで、暫くケイティさんに付いて仕事を覚えるらしい。
「多恵様。新しい侍女のマリカです。暫く私に付きます。至らぬ所が多いと思いますが、よろしくお願いします。マリカ。多恵様にご挨拶を」
「マリカと申します。一生懸命お仕えいたします。よろしくお願いします」
マリカさんは綺麗なカーテシーをし緊張しながら挨拶をくれた。
「多恵です。知らない事が多いので教えて下さいね」
「はい!」
超かわいい。構ってあげたい!
「多恵様。4刻半にグリード王弟殿下がお見えになるとお聞きしております。お食事をお早く召し上がって下さい」
キース様との事があってまるっと忘れていた。グリード殿下来るんだ。火照った顔が一気に冷めていく。リリスの力で明後日に私を飛ばしてくれないかなぁ… 一瞬現実逃避すると
「多恵様。今日はクロワッサンですよ」
サリナさんが笑顔でクロワッサンが入ったカゴを見せてくれる。焼きたてでめっちゃいい匂いだ。席に着いて一口食べたら幸せ! ふとサリナさんと目が合う。しまった!またパンに釣られた…
サリナさんは私の操縦方法を熟知している様に思うのは気のせいだろうか…
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