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99.ビビアン

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今日の予定も終わり後2日で舞踏会だ。スカーフ祭りから濃い日々だった。色々あり過ぎてラストダンスは決める間が無く、知らない間にアーサー殿下に決まっていた。もうどうでもいいや…今まで起こった事を考えたらラストダンスの相手なんて大した事ない。

早めに夕食をとり寝室に籠り、てん君とベッド上でだらだらする。私の腕の中で丸まるてん君に癒されていると、徐にてん君は起き上がりベッドから下りてテラスの窓に向かう。この行動はフィラが来た合図になっている。

テラスの窓を開けると定位置のベンチに座るフィラ。ゆったりと立ち上がりこちらに歩いてくる。

「今日は駆け寄って来ないのか⁈」
「面会が多くて疲れたの…」

フィラは私を抱き上げてベンチに座らせくれる。
頬を両手で優しく包み口付けを落とす。
フィラの大きな手は温かく優しく、疲れを忘れさせてくれる。ふと思い出して

「今日はオーランド殿下と面会があったのね。嫌なら今日は聞かないけど…レッグロッドとフィラのお母様と諍いがあり、その影響でレックロッドは妖精の加護を失くしたって聞いた。私はこの箱庭の為にも仲直りの手助けがしたいの。
原因が前乙女らしいから他人事ではないし」

「リリスと俺の妖力の負担になり頭が痛い問題だ。しかし何百年も拗れてどうしていいかわからん。
レッグロッドの前王からレッグロッドは妖精国に歩み寄りっているが、妖精達の信頼を取り戻すのは至難の業だ」

なかなかの難題に考えるのをやめた。そしてフィラの抱っこが気持ちよくて眠くなって来た。

「疲れているだろう。舞踏会も近いもう休め。俺はお前をエスコートするのが楽しみなんだぞ」
「分かった。私もフィラと踊るの楽しみにしてるね!」

軽い口付けをしてフィラは帰っていった。
ふわふわした気持ちでベッドに入りてん君と眠りについたり。この時また騒動が起こるなんて知りもせずに…


翌朝、いつもの様に2刻の鐘の音で目覚める。
身支度が終わり朝食だと思ったら気不味そうにサリナさんが

「突然で申し訳ありませんが、朝食は別室でご用意致しますので移動願いますか⁈」
「へ?昼食や晩餐は別の部屋とかあったけど、朝食は初めてだよ。誰かと一緒?」

するとサリナさんは気まずそうに

「陛下とアーサー殿下でございます」
「…」

朝から濃い2人だ…結構お腹空いているけど食事喉通るかしら…

昨晩から第1騎士団が護衛に戻り久しぶりにデュークさんとガイさんが付いてくれています。
デュークさんはこっちに来てから何かとお世話になっているから、私の中ではお兄ちゃん枠になっている。

雑談しながら移動していたら背後から声を掛けられた。振り返るとオーランド殿下だった。
ご挨拶しようと近づくと距離をとられた。あれ昨日は熱烈だったのに一晩で豹変?
不安な顔をしていたらオーランド殿下の後ろに控えていたカイルさんが

「多恵様。おはようございます!我々は朝食の前に鍛錬をしていて汗まみれなのです。レディに失礼なので殿下は遠慮しているんですよ」
「全然気になりませんけど⁈」

クンクンしても大輔みたいに男臭く無いし、香水かなぁ⁈いい香りするけどなぁ…
ふとオーランド殿下を見上げたら顔が赤い。朝から激しい訓練をしたんだなぁ…騎士は大変だ。

「デューク殿…多恵様はいつもこの様な感じですか?」
「はい。ご自覚無い様で我々も戸惑う事があります。悪気はございません故、慣れて頂きたい」

何か騎士にしか分からない会話をしていて疎外感。少し不貞腐れていたらガイさんが陛下が急ぐ様に促し、オーランド殿下にお別れをして先を急いだ。

部屋に着くと陛下とアーサー殿下が難しい顔をして話をしている。私お邪魔ですよね…踵を返して帰ろうとしたら、アーサー殿下に気付かれた。
満面の笑みで来てエスコートされ着席すると給仕が始まる。
食事中は特に変わりなく和気藹々と食事をし、最後のデザートに手をつけたら、徐に陛下が

「多恵殿。スカーフ祭りでバスグルが多恵殿に接触しようとしていた事は聞いているね。実は昨晩ファーブスの港にバスグルの王家の船が入港しファーブス公爵家に滞在している。
我々も深夜に報告を受け戸惑っている。どうやらビビアン王女が来ていて、明日の舞踏会で多恵殿にスカーフ祭りの謝罪と、配下の者の引き取りに来たそうだ」

フルーツヨーグルトを食べた時に言われ吹き出しそうになった。ビビアン王女?何故今?
またまた何か起こる予感がする。

「多恵殿。大丈夫です。貴女をお守りしますから」
「ありがとうございます。しかし王女様が何かされるとは思えません」

グリード殿下そんな話して無かったけど、何かあるとは思っていた。でもそれは伴侶候補たちがダンスの順番とかで揉めるぐらいの予想だった。
ビビアン王女の恋愛が絡んでくるなんて想定外だ。

ビビアン王女からしたら私は恋敵になるの?
私がグリード殿下を望んだわけじゃないからね!
もうモーブルは平民の方と恋愛しますから、揉め事は勘弁して下さい。

朝食を後は陛下とアーサー殿下は打ち合わせがあるらしく、デュークさんとガイさんと部屋に戻る。
帰りは足取りが重い…
部屋の前に来ると文官さんがいた。グリード殿下から面会の願いだった。『キター!』もう勘弁して下さい。

扉の前でフリーズしていたら廊下の向こうから、キース様が歩いて来る。私に気付いたキース様は走って来た。キース様廊下は走っては駄目ですよ…

「多恵様。どうされました?顔色が悪い」

いきなり私の頬を両手で包み目線を合わせてくる。
そんな私悲壮な顔していますか?

「キース様。お久しぶりです。朝からお仕事ですか?」

文官さんにキース様とお話しがあるので、グリード殿下との面会をお昼からにして欲しいと伝えてもらい、キース様と一緒に部屋に戻る。

キース様と帰ってきてサリナさんが驚いている。
私もびっくりだよ。
キース様に席を勧めようとしたら、反対にキース様に誘導され隣に座る。あの…近いし手をにぎにぎしないで下さい。

どうやらキース様はビビアン王女の報告を陛下にする為に登城され、寄ってくださったそうです。
ビビアン王女…今は聞きたく無いなぁ…
キース様は私の顔を覗き込んでため息を吐く。

「また何か抱えてらっしゃる」

キース様は洞察力があり隠し事出来ないんだった。
でもグリード殿下の事は言えない。キース様は無理に聞いて来ない。私が話すまでいつも待ってくれ、絶賛動揺中の私にはこの気遣いは嬉しい。キース様の肩にもたれて現実逃避させて下さい。

「落ち着くまでこうしていていいですか?」
「喜んで…肩だけでは無く私の全ては貴女の為に捧げましょう」

お礼を言いお言葉に甘えた。ナイスタイミングでキース様が来てくれて良かった。
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