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83.グラントside
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「第3からの報告はまだか!」
「確認中です。暫くお待ち下さい。それより陛下!妖精王フィラに連絡をしなくてよろしいのですか⁈」
補佐官にそう言うと陛下は青い顔をして、もしそんな事をしたら妖精王は多恵様を二度と離さなくなるといい頭を抱えた。
「しかしもうすぐ日没です。鷹匠の捜索も出来ませんし、祭りも終わり手がかりもありません。やはり誘拐でしょうか…」
「暗部からの報告では他国の密偵の動きは無く誘拐の可能性は低いとみる」
捜索本部である陛下の執務室は重い空気に包まれる。何故こんな事になった… トーイ殿下が付いていながら何故多恵様を見失うんだ。
出来れば私も捜索に出たい。しかしイザーク様が現場で指揮を取られているので、私が城内を指揮する事になり陛下の執務室に缶詰になっている。
現場にいた者の報告によると祭りの警邏にアーサー殿下が行かれ、殿下に令嬢や町娘が群がり広場がパニック状態に。多恵様の護衛に就いていた者は押し倒された者を救いつつ守っていたが、あまりの人集りに限界を超えた様だ。トーイ殿下も転んだ子供が押し潰されそうになったところを助けている隙に、多恵様と手が離れ見失った。
「アーサーは何故あの場に行ったのだ!毎年パニックを避ける為、警邏はデュークに指揮を任せているのに!」
「恐らく兄上は多恵殿の町娘姿を見たかったのでしょう。それにしても軽率すぎる…」
陛下とヒューイ殿下は頭を抱えている。何やってんだアーサー。普段の冷静沈着なお前はどこに行った!今目の前にアーサーが来たら殴ってしまいそうだ。
多恵様は怪我をされて無いだろうか、日が落ち冷えてきているが寒さに震えていないだろうか⁈
多恵様が私の抱擁は温かくて心地いいと言ってくれていた。直ぐにでも駆けつけて温めて差し上げたい。やり場の無い苛立ちだけが増して行く。
日が落ち手掛かりが全く無い。スカーフ祭りで女性達はスカーフを巻いている事で目撃情報が乏しい。
遠くで7刻の鐘の音が聞こえてきた。陛下が夜半の捜索は平民や貴族の知るところになり不安を煽り弊害を生むことから、今日の捜索打切りを決断された。
その時入室許可も得ずトーイ殿下が凄い勢いで入ってこられた。
「陛下報告します。多恵殿の居場所がわかりました。モーブルの王弟グリード殿下が保護されておられます。グリード殿下の家臣が書簡を持ち正門に現れ兄上が書簡を確認したところ、グリード殿下に間違いないようです。
居場所はモーブル国境の村キラスの宿。誘拐や拉致の類では無く、村人が祭りの混乱の中で人違いをして多恵殿を連れて行ってしまった様です。夜半のキラスの森は危険な為、明日多恵殿を連れて来城されるそうです。
使者に宿泊の願いと、明日使者に多恵殿の着替えを預けて欲しいと記されていました」
「あ…よかった」
陛下は両手で顔を覆い安堵し、私も安心から力が抜け体をソファーに沈める。
安心したら今度は多恵様を救ったグリード殿下に羨望の念を抱く。確かグリード殿下も多恵様の伴侶候補だったはず。醜い嫉妬心が湧き上がってくる。
今こうしている間にもグリード殿下が多恵様を口説いているかもしれないと思うと居た堪れない。
叶うならキラスの森を突っ切ってでも今から私がお迎えに行きたい。
「グラント殿。多恵殿を思う気持ちはわかりますが、お向かえは無理ですよ。明日帰って来た多恵殿がゆっくり休める様に整えましょう」
ヒューイ殿下に気持ちを見透かさられていた様だ。
多恵様の事だ今強引に迎えに行けば気をつかわれるだろう。それに寝不足の顔をしていると、また心配をかけてしまう。早くこの場を治め就寝しよう。
この後グリード殿下への嫉妬心と闘いながら就寝する事となった。
「確認中です。暫くお待ち下さい。それより陛下!妖精王フィラに連絡をしなくてよろしいのですか⁈」
補佐官にそう言うと陛下は青い顔をして、もしそんな事をしたら妖精王は多恵様を二度と離さなくなるといい頭を抱えた。
「しかしもうすぐ日没です。鷹匠の捜索も出来ませんし、祭りも終わり手がかりもありません。やはり誘拐でしょうか…」
「暗部からの報告では他国の密偵の動きは無く誘拐の可能性は低いとみる」
捜索本部である陛下の執務室は重い空気に包まれる。何故こんな事になった… トーイ殿下が付いていながら何故多恵様を見失うんだ。
出来れば私も捜索に出たい。しかしイザーク様が現場で指揮を取られているので、私が城内を指揮する事になり陛下の執務室に缶詰になっている。
現場にいた者の報告によると祭りの警邏にアーサー殿下が行かれ、殿下に令嬢や町娘が群がり広場がパニック状態に。多恵様の護衛に就いていた者は押し倒された者を救いつつ守っていたが、あまりの人集りに限界を超えた様だ。トーイ殿下も転んだ子供が押し潰されそうになったところを助けている隙に、多恵様と手が離れ見失った。
「アーサーは何故あの場に行ったのだ!毎年パニックを避ける為、警邏はデュークに指揮を任せているのに!」
「恐らく兄上は多恵殿の町娘姿を見たかったのでしょう。それにしても軽率すぎる…」
陛下とヒューイ殿下は頭を抱えている。何やってんだアーサー。普段の冷静沈着なお前はどこに行った!今目の前にアーサーが来たら殴ってしまいそうだ。
多恵様は怪我をされて無いだろうか、日が落ち冷えてきているが寒さに震えていないだろうか⁈
多恵様が私の抱擁は温かくて心地いいと言ってくれていた。直ぐにでも駆けつけて温めて差し上げたい。やり場の無い苛立ちだけが増して行く。
日が落ち手掛かりが全く無い。スカーフ祭りで女性達はスカーフを巻いている事で目撃情報が乏しい。
遠くで7刻の鐘の音が聞こえてきた。陛下が夜半の捜索は平民や貴族の知るところになり不安を煽り弊害を生むことから、今日の捜索打切りを決断された。
その時入室許可も得ずトーイ殿下が凄い勢いで入ってこられた。
「陛下報告します。多恵殿の居場所がわかりました。モーブルの王弟グリード殿下が保護されておられます。グリード殿下の家臣が書簡を持ち正門に現れ兄上が書簡を確認したところ、グリード殿下に間違いないようです。
居場所はモーブル国境の村キラスの宿。誘拐や拉致の類では無く、村人が祭りの混乱の中で人違いをして多恵殿を連れて行ってしまった様です。夜半のキラスの森は危険な為、明日多恵殿を連れて来城されるそうです。
使者に宿泊の願いと、明日使者に多恵殿の着替えを預けて欲しいと記されていました」
「あ…よかった」
陛下は両手で顔を覆い安堵し、私も安心から力が抜け体をソファーに沈める。
安心したら今度は多恵様を救ったグリード殿下に羨望の念を抱く。確かグリード殿下も多恵様の伴侶候補だったはず。醜い嫉妬心が湧き上がってくる。
今こうしている間にもグリード殿下が多恵様を口説いているかもしれないと思うと居た堪れない。
叶うならキラスの森を突っ切ってでも今から私がお迎えに行きたい。
「グラント殿。多恵殿を思う気持ちはわかりますが、お向かえは無理ですよ。明日帰って来た多恵殿がゆっくり休める様に整えましょう」
ヒューイ殿下に気持ちを見透かさられていた様だ。
多恵様の事だ今強引に迎えに行けば気をつかわれるだろう。それに寝不足の顔をしていると、また心配をかけてしまう。早くこの場を治め就寝しよう。
この後グリード殿下への嫉妬心と闘いながら就寝する事となった。
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