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77.ライカ
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呆れ顔の陛下が席に戻り私は手紙の続きを読む。すると意味の分からない文の下にもう一行追伸が書いてあった。
“アーサー殿下の推薦と本人の希望によりライカ嬢を我が婚約者の侍女として連れ帰る事になりました。詳しくはアーサー殿下からお聞き下さい。
多恵様付きの侍女故、厚遇を約束します。ご安心を…”
「え⁈殿下どうゆう事ですか?」
アーサー殿下、ヒューイ殿下、トーイ殿下が一斉に私を見る。あーごめんなさい!皆んな殿下でした。
「アーサー殿下!ライカさんがベイグリーに渡るって、サイラス殿下の手紙に書いています。初耳です!」
「そうだ。今から説明しようと思っていたんだ。その前にライカ嬢から手紙を預かっている。まずそちらを読んでみなさい」
殿下は上着の内ポケットから手紙を取り出して渡してくれた。ほのかに薔薇の香りのする封筒に綺麗な字で私の名が書かれていた。
“親愛なる多恵様
この手紙をお読みになる頃には私はベイグリー公国の地に降り立っている頃でしょう。
牢でお話させていただいてそのまま挨拶も無しに、去ることをお許しください。
私は私欲に塗れ取り返しのつかない罪を犯しました。本来であれば一生牢で暮らすか良くて修道院での奉仕の罰を受けるべで、私もそれを望みました。
しかしアーサー殿下が密偵の牢番を告発し捕縛に協力した功績として罪を不問にしてくださいました。
実家の子爵家はさすがに乙女の拉致の助力したことは免れず、両親は領地にて実質の幽閉になり愚弟が跡目を引継ぐ事で落ち着き、子爵家は残す事ができました。
ベイグリー公国の叔母が嫁いだ公爵家も同様に代替わりし存続。叔母と公爵には実刑が下るそうです。
私は実家の子爵家から離籍され叔母の公爵家にも籍を入れておらず平民となっておりました。
身分を無くしたのに反対に心は解放されたような気がします。
今後、奉仕活動した後に田舎でひっそり暮らそうと思っておりましたが、アーサー殿下がサイラス殿下の婚約者の侍女を探しており、私にベイグリー公国に渡らないかとお声をかけてくださいました。
初めは私の様な罪人では務まらないとお断りしようと思いましたが、殿下が私の侍女の仕事を評価してくださり、新天地でやり直す機会を与えて下さったのだと思います。悩みましたがお受けする事にしました。
本音を言えば祖国のアルディアを離れたくありませんが、罪を犯した私が居づらいのも本音です。
悩んでいた時に多恵様がかけて下さった言葉を思い出したのです。
『必ずライカさんを必要とする場所があるから…』
この言葉を思い出した時に、泣いてしまいました。目の前に「居場所」を見つけたように思いました。
アルディアに恩返しは出来ませんが、推薦いただいたアーサー殿下の恥にならぬように、ベイグリー公国に誠心誠意お仕えしたいと思います。
私は多恵様と出会えてよかった。
貴女様に出会わなければ身分や社会的地位に拘る、嫌な人間に成り下がるところでした。新天地で自分を見つめなおし私らしく人生を歩んで参ります。
最後になりましたが、多恵様のご多幸をお祈り申し上げます。いつかお会いできるのを楽しみにしております。
ライカ・ル・クルード“
読み終わりアーサー殿下を見た。目を細めて微笑んで頷いてくれます。思わず立ち上がりアーサー殿下の前に行き手を差し出し感謝を述べました。
アーサー殿下は立ち上がりハグをして…
「今度は貴女の気持ちを汲めたようですね」
「ありがとうございます。配慮に感謝いたします」
「感謝は形でいただきたいな…」
アーサー殿下は指で頬を突いています。これはキスの催促ですか⁈でも…
『うわぁ!フィラがめっちゃ睨んでいる』
でも感謝だし頬だからいいかなぁ… アーサー殿下の肩に手を乗せて背伸びをして頬にキスしようとした…ら…
急にアーサー殿下が横を向いて唇にキスしてしまった!
皆一斉に立ち上げる!と同時にアーサー殿下に抱きしめられて、今度はアーサー殿下からキスしてきた。突然の事に固まる私。
するとフィラより早く陛下がアーサー殿下の首根っこを捕まえ引きはがし、私はフィラに抱え込まれて部屋はカオス状態に…
ケイティさんとサリナさんは凍り付きそうなくらい表情は冷たく、エレナさんは頬赤らめ照れている。そしてヒューイ殿下は苦笑しトーイ殿下は楽しそうに笑っています。この状況私はどぉ治めたらいいですか⁈
結局この場を治めてくれたのがイザーク様で陛下と殿下達の次の公務の時間が迫っていると告げこの場はお開きになった。
「多恵殿。今度お時間を頂きたい」
「多恵!アーサーになんかに時間を割く事はしなくていいぞ!」
またフィラとアーサー殿下の睨み合いが始まると、サリナさんが静かに怒りながら部屋の扉を開けて男性陣の退室を促します。
『はぁ・・・疲れた・・・』
一息吐こうとしたら帰り間際にトーイ殿下が
「後日お時間を頂いてケニーと謝罪に参ります。今回のあいつの奇行は許されるものではないので…」
「必要ありませんよ。次やったら“ぐー”でパンチします」
と握り拳を胸の前で構える。トーイ殿下が楽しそうに構え方をレクチャーしてくれた。それを見ていたケイティさんに諌められて、二人で謝ることになった。ホンとトーイ殿下はおもしろい!
皆さんが退室したのにフィラは背中に張り付いていて帰る気が無い様だ。
ずっと不機嫌でどぉ機嫌を取ろうか悩んでいたら、侍女の皆さんが居るのにキスしてきた。
エレナさんが手で口を塞ぎ必死で叫ぶのを我慢し、サリナさんとケイティさんは無表情。
「これでさっきの(アーサーのキス)は上書きしたから大丈夫だ。まだ疲れているだろう…今日はこれで帰る」
やっと帰るんだと思ったらまた隙を見てキスしてくる。だんだんフィラの機嫌が良くなっている反面、私が恥ずかしくて居場所を無くす。
もー!早くお帰り下さい!
こんなやり取りを何回か繰り返しやっとフィラは帰って行った。
この後は気分変えて寝るまでの間、侍女の皆さんとお茶を頂きガールズトークに華をさかせました。
“アーサー殿下の推薦と本人の希望によりライカ嬢を我が婚約者の侍女として連れ帰る事になりました。詳しくはアーサー殿下からお聞き下さい。
多恵様付きの侍女故、厚遇を約束します。ご安心を…”
「え⁈殿下どうゆう事ですか?」
アーサー殿下、ヒューイ殿下、トーイ殿下が一斉に私を見る。あーごめんなさい!皆んな殿下でした。
「アーサー殿下!ライカさんがベイグリーに渡るって、サイラス殿下の手紙に書いています。初耳です!」
「そうだ。今から説明しようと思っていたんだ。その前にライカ嬢から手紙を預かっている。まずそちらを読んでみなさい」
殿下は上着の内ポケットから手紙を取り出して渡してくれた。ほのかに薔薇の香りのする封筒に綺麗な字で私の名が書かれていた。
“親愛なる多恵様
この手紙をお読みになる頃には私はベイグリー公国の地に降り立っている頃でしょう。
牢でお話させていただいてそのまま挨拶も無しに、去ることをお許しください。
私は私欲に塗れ取り返しのつかない罪を犯しました。本来であれば一生牢で暮らすか良くて修道院での奉仕の罰を受けるべで、私もそれを望みました。
しかしアーサー殿下が密偵の牢番を告発し捕縛に協力した功績として罪を不問にしてくださいました。
実家の子爵家はさすがに乙女の拉致の助力したことは免れず、両親は領地にて実質の幽閉になり愚弟が跡目を引継ぐ事で落ち着き、子爵家は残す事ができました。
ベイグリー公国の叔母が嫁いだ公爵家も同様に代替わりし存続。叔母と公爵には実刑が下るそうです。
私は実家の子爵家から離籍され叔母の公爵家にも籍を入れておらず平民となっておりました。
身分を無くしたのに反対に心は解放されたような気がします。
今後、奉仕活動した後に田舎でひっそり暮らそうと思っておりましたが、アーサー殿下がサイラス殿下の婚約者の侍女を探しており、私にベイグリー公国に渡らないかとお声をかけてくださいました。
初めは私の様な罪人では務まらないとお断りしようと思いましたが、殿下が私の侍女の仕事を評価してくださり、新天地でやり直す機会を与えて下さったのだと思います。悩みましたがお受けする事にしました。
本音を言えば祖国のアルディアを離れたくありませんが、罪を犯した私が居づらいのも本音です。
悩んでいた時に多恵様がかけて下さった言葉を思い出したのです。
『必ずライカさんを必要とする場所があるから…』
この言葉を思い出した時に、泣いてしまいました。目の前に「居場所」を見つけたように思いました。
アルディアに恩返しは出来ませんが、推薦いただいたアーサー殿下の恥にならぬように、ベイグリー公国に誠心誠意お仕えしたいと思います。
私は多恵様と出会えてよかった。
貴女様に出会わなければ身分や社会的地位に拘る、嫌な人間に成り下がるところでした。新天地で自分を見つめなおし私らしく人生を歩んで参ります。
最後になりましたが、多恵様のご多幸をお祈り申し上げます。いつかお会いできるのを楽しみにしております。
ライカ・ル・クルード“
読み終わりアーサー殿下を見た。目を細めて微笑んで頷いてくれます。思わず立ち上がりアーサー殿下の前に行き手を差し出し感謝を述べました。
アーサー殿下は立ち上がりハグをして…
「今度は貴女の気持ちを汲めたようですね」
「ありがとうございます。配慮に感謝いたします」
「感謝は形でいただきたいな…」
アーサー殿下は指で頬を突いています。これはキスの催促ですか⁈でも…
『うわぁ!フィラがめっちゃ睨んでいる』
でも感謝だし頬だからいいかなぁ… アーサー殿下の肩に手を乗せて背伸びをして頬にキスしようとした…ら…
急にアーサー殿下が横を向いて唇にキスしてしまった!
皆一斉に立ち上げる!と同時にアーサー殿下に抱きしめられて、今度はアーサー殿下からキスしてきた。突然の事に固まる私。
するとフィラより早く陛下がアーサー殿下の首根っこを捕まえ引きはがし、私はフィラに抱え込まれて部屋はカオス状態に…
ケイティさんとサリナさんは凍り付きそうなくらい表情は冷たく、エレナさんは頬赤らめ照れている。そしてヒューイ殿下は苦笑しトーイ殿下は楽しそうに笑っています。この状況私はどぉ治めたらいいですか⁈
結局この場を治めてくれたのがイザーク様で陛下と殿下達の次の公務の時間が迫っていると告げこの場はお開きになった。
「多恵殿。今度お時間を頂きたい」
「多恵!アーサーになんかに時間を割く事はしなくていいぞ!」
またフィラとアーサー殿下の睨み合いが始まると、サリナさんが静かに怒りながら部屋の扉を開けて男性陣の退室を促します。
『はぁ・・・疲れた・・・』
一息吐こうとしたら帰り間際にトーイ殿下が
「後日お時間を頂いてケニーと謝罪に参ります。今回のあいつの奇行は許されるものではないので…」
「必要ありませんよ。次やったら“ぐー”でパンチします」
と握り拳を胸の前で構える。トーイ殿下が楽しそうに構え方をレクチャーしてくれた。それを見ていたケイティさんに諌められて、二人で謝ることになった。ホンとトーイ殿下はおもしろい!
皆さんが退室したのにフィラは背中に張り付いていて帰る気が無い様だ。
ずっと不機嫌でどぉ機嫌を取ろうか悩んでいたら、侍女の皆さんが居るのにキスしてきた。
エレナさんが手で口を塞ぎ必死で叫ぶのを我慢し、サリナさんとケイティさんは無表情。
「これでさっきの(アーサーのキス)は上書きしたから大丈夫だ。まだ疲れているだろう…今日はこれで帰る」
やっと帰るんだと思ったらまた隙を見てキスしてくる。だんだんフィラの機嫌が良くなっている反面、私が恥ずかしくて居場所を無くす。
もー!早くお帰り下さい!
こんなやり取りを何回か繰り返しやっとフィラは帰って行った。
この後は気分変えて寝るまでの間、侍女の皆さんとお茶を頂きガールズトークに華をさかせました。
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