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74.正体
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「ケニーその大鷲で皇太子と乙女を港に運べ、あとの者は外に馬を用意している。直ちに移動せよ」
『ケニー様がここにいる。…と言う事は…てん君は?』
一気に血の気が引いて行くのが分かる。楽しそうにレオン皇太子は聞いてもいない事を話し出す。
「あぁぁ…俺の世界統一はここから始まる。女神の乙女を妃とし、先駆けにチャイラ島を支配した後にベイグリー公国を手にする。乙女がいれば女神の加護など必要ない」
「レオン皇太子。追手がすぐ参ります。お早く」
何も出来ない私はケニー様を睨む事しか出来ない。でも何故か無表情のケニー様の瞳は悲しそうにみえる。
成功を確信したレオン皇太子が私は抱いたまま大鷲に近づくと大鷲が足を上げる。すると
『たえ だいじょう しんじる』
『てん君?』
大鷲の首元に隠れていたてん君がレオン皇太子に飛びかかった。驚いたレオン皇太子の手が緩み私は地面に落ちる。
『いっ痛い!』
次の瞬間何かに掴まれた。それは大鷲で顔を上げると目が合う。大鷲の瞳は優しくて慈愛に満ちている。大鷲は私をケニー様に預け、てん君と逃げ惑う悪人たちを捕まえては投げつけた。気が付くと辺りに悪人が伸びて倒れている。
ケニー様が
「例え陛下の命とはいえ貴女を欺くのは辛かった。これで苦痛から解放されます。安心してください。今頃陛下とイザーク様、ベイグリー公国の宰相様が事情説明をしている筈です。詳しくは落ち着いたら全てお話します。大まかに説明するなら…」
ケニー様は興奮して早口で事の成り行きを説明し始めた。
ルーク陛下はベイグリー公国の王からレオン皇太子の乙女拉致を企ていると密書を受けたことから始める。陛下はベイグリーの王と協力し皇太子の悪事を暴くために策を講じた。ケニー様の役目は“裏切り者”。レオン皇太子に協力し私をレオン皇太子に引き渡し、成功した暁にはレオン皇太子が王となった国の宰相にする事を報酬に協力すると云うものだった。
何じゃそれ!知ら無しそんな2国を巻き込んだお大事になってるなんて…それよりケニー様!もっと優しく抱いて下さい。力み過ぎて痛い!
私の顔が歪んだのに気づいたケニー様は力を緩めてくれた。
「任務中何度が我慢できずに貴女の様子を伺いに行きました。申し訳ありませんでした。怖がらせてしまった様です。流石に寝室に忍び込んだ時は陛下とイザーク様にお叱りを受けてました」
だろうね!めっちゃ怖かったんだから! 声が出るなら『ホラーだよ!』っと一発パンチおみまいしたい位だ。…非力だから猫パンチ位の威力無いけど…
「やっと貴女に触れられる…この1週間辛かった…」
ケニー様は呟き私の頬に口づけを落とす。ちょっとどさくさに紛れて何してんの⁉︎
「ん?」
急にケニー様が下を向くと不機嫌なてん君が前足でケニー様の足を連打している。
『こいつ うそ だめ たえ こわい した』
『てん君ありがとう。少し怖かっただけ』
『こいつ つがい ない だめ』
『うぅ…んそうだね』
さっきはフィラ程大きかったてん君は力を使い果たしのか、最小サイズのチワワになっている。
でもめっちゃケニー様を怖い顔で威嚇している。ギャップが可愛い!抱きしめてもふもふしてあげたい。するとてん君の後ろに大鷲が来ててん君を咥えて私のお腹に乗せてくれた。
『多恵。初めまして。私はリリスの聖獣。リリスの命でケニーに協力していました。
てんとは兄弟の様な関係よ。てんは焦って飛び出した様ね。こんなに衰弱して可哀想に。。。
妖精を呼んでごらんなさい。少しは体力を回復出来るわ』
大鷲さんの言ったように妖精を呼んでみた。すると怖い位集まってきて
“たえ かわいそう”、“ちから あげる”
とキスをいっぱい受けました。ほんの少しだけど力が戻った様な気がする。話せるかなぁ⁈
急に風が吹き目の前にフィラが現れた。すぐにケニー様の腕から私を奪い強く抱きしめてくれる。フィラの香りに包まれやっと落ち着いてきた。
「多恵…妖精に力を貰ったようだな。少しは話せるか⁈取り合えずてんを戻せ。奴も疲労している」
頷き「も…どれ…」擦れたけどてん君を戻した。てん君お疲れさまでした。ありがとう!
「ボリスなぜ妖精王である俺にも知らされて無かったんだ」
ボリスって誰?
『リリスの命よ。詳しくはリリスに聞いて』
どうやら大鷲さんが”ボリス”らしい。
ケニー様は最敬礼しフィラに挨拶をしていたら、第2と第3の騎士が大勢やって来て地面で伸びているレオン皇太子をはじめ手下達を拘束し連行して行く。
「私はベイグリー公国の皇太子だぞ!この様な扱いただで済むと思うなよ!直ちに薬草の取引は止めてやる!私はそこのケニーに騙されたのだ、父上に書簡を送ってくれ!」
まぁー何て悪人らしいセリフ。
超絶怖い顔をしたクレイブ副団長がレオン皇太子を縛り上げ、冷気を放った表情のヒューイ殿下が連行していきます。
『あっ!どさくさに紛れてヒューイ殿下がレオン皇太子を蹴てる!』
気持ち分かるよ… 滞在中散々振り回されていたもんね…
少し遅れてサリナさんとグラント様が来た。サリナさん泣いちゃてる!ごめんなさい!
グラント様が私に触れようと手を出したらフィラが跳ね除けた。疲れているから揉めないで!
「ケンカ…しないで…」
辛うじて出る声で諌める。2人は気不味そうに目を逸らした。結局フィラに抱き上げられ右手はグラント様に握られた。
ふと前を向くとトーイ殿下とケニー様が向き合っている。徐にトーイ殿下がケニー様の頭を叩いた!
「いたいよ!」
「心配させやがって!お前普段から奇行が多いから裏切りを信じたわ!この馬鹿が…」
「殿下…好奇心旺盛と言って下さい」
2人は笑い合っている。良かったね殿下親友を失わなくて…
安心したら眠くなって来た。体が重い…陛下とイザーク様に顛末を聞きたいのに視界がぼやけて来た…
今寝ちゃうとまた寝過ぎて…しま…う。
額に柔らかい感覚?
「ゆっくり休め」
次は頬が大きな何かに包まれた?
「良い夢を…」
安心した私はここで意識を手放した。
『ケニー様がここにいる。…と言う事は…てん君は?』
一気に血の気が引いて行くのが分かる。楽しそうにレオン皇太子は聞いてもいない事を話し出す。
「あぁぁ…俺の世界統一はここから始まる。女神の乙女を妃とし、先駆けにチャイラ島を支配した後にベイグリー公国を手にする。乙女がいれば女神の加護など必要ない」
「レオン皇太子。追手がすぐ参ります。お早く」
何も出来ない私はケニー様を睨む事しか出来ない。でも何故か無表情のケニー様の瞳は悲しそうにみえる。
成功を確信したレオン皇太子が私は抱いたまま大鷲に近づくと大鷲が足を上げる。すると
『たえ だいじょう しんじる』
『てん君?』
大鷲の首元に隠れていたてん君がレオン皇太子に飛びかかった。驚いたレオン皇太子の手が緩み私は地面に落ちる。
『いっ痛い!』
次の瞬間何かに掴まれた。それは大鷲で顔を上げると目が合う。大鷲の瞳は優しくて慈愛に満ちている。大鷲は私をケニー様に預け、てん君と逃げ惑う悪人たちを捕まえては投げつけた。気が付くと辺りに悪人が伸びて倒れている。
ケニー様が
「例え陛下の命とはいえ貴女を欺くのは辛かった。これで苦痛から解放されます。安心してください。今頃陛下とイザーク様、ベイグリー公国の宰相様が事情説明をしている筈です。詳しくは落ち着いたら全てお話します。大まかに説明するなら…」
ケニー様は興奮して早口で事の成り行きを説明し始めた。
ルーク陛下はベイグリー公国の王からレオン皇太子の乙女拉致を企ていると密書を受けたことから始める。陛下はベイグリーの王と協力し皇太子の悪事を暴くために策を講じた。ケニー様の役目は“裏切り者”。レオン皇太子に協力し私をレオン皇太子に引き渡し、成功した暁にはレオン皇太子が王となった国の宰相にする事を報酬に協力すると云うものだった。
何じゃそれ!知ら無しそんな2国を巻き込んだお大事になってるなんて…それよりケニー様!もっと優しく抱いて下さい。力み過ぎて痛い!
私の顔が歪んだのに気づいたケニー様は力を緩めてくれた。
「任務中何度が我慢できずに貴女の様子を伺いに行きました。申し訳ありませんでした。怖がらせてしまった様です。流石に寝室に忍び込んだ時は陛下とイザーク様にお叱りを受けてました」
だろうね!めっちゃ怖かったんだから! 声が出るなら『ホラーだよ!』っと一発パンチおみまいしたい位だ。…非力だから猫パンチ位の威力無いけど…
「やっと貴女に触れられる…この1週間辛かった…」
ケニー様は呟き私の頬に口づけを落とす。ちょっとどさくさに紛れて何してんの⁉︎
「ん?」
急にケニー様が下を向くと不機嫌なてん君が前足でケニー様の足を連打している。
『こいつ うそ だめ たえ こわい した』
『てん君ありがとう。少し怖かっただけ』
『こいつ つがい ない だめ』
『うぅ…んそうだね』
さっきはフィラ程大きかったてん君は力を使い果たしのか、最小サイズのチワワになっている。
でもめっちゃケニー様を怖い顔で威嚇している。ギャップが可愛い!抱きしめてもふもふしてあげたい。するとてん君の後ろに大鷲が来ててん君を咥えて私のお腹に乗せてくれた。
『多恵。初めまして。私はリリスの聖獣。リリスの命でケニーに協力していました。
てんとは兄弟の様な関係よ。てんは焦って飛び出した様ね。こんなに衰弱して可哀想に。。。
妖精を呼んでごらんなさい。少しは体力を回復出来るわ』
大鷲さんの言ったように妖精を呼んでみた。すると怖い位集まってきて
“たえ かわいそう”、“ちから あげる”
とキスをいっぱい受けました。ほんの少しだけど力が戻った様な気がする。話せるかなぁ⁈
急に風が吹き目の前にフィラが現れた。すぐにケニー様の腕から私を奪い強く抱きしめてくれる。フィラの香りに包まれやっと落ち着いてきた。
「多恵…妖精に力を貰ったようだな。少しは話せるか⁈取り合えずてんを戻せ。奴も疲労している」
頷き「も…どれ…」擦れたけどてん君を戻した。てん君お疲れさまでした。ありがとう!
「ボリスなぜ妖精王である俺にも知らされて無かったんだ」
ボリスって誰?
『リリスの命よ。詳しくはリリスに聞いて』
どうやら大鷲さんが”ボリス”らしい。
ケニー様は最敬礼しフィラに挨拶をしていたら、第2と第3の騎士が大勢やって来て地面で伸びているレオン皇太子をはじめ手下達を拘束し連行して行く。
「私はベイグリー公国の皇太子だぞ!この様な扱いただで済むと思うなよ!直ちに薬草の取引は止めてやる!私はそこのケニーに騙されたのだ、父上に書簡を送ってくれ!」
まぁー何て悪人らしいセリフ。
超絶怖い顔をしたクレイブ副団長がレオン皇太子を縛り上げ、冷気を放った表情のヒューイ殿下が連行していきます。
『あっ!どさくさに紛れてヒューイ殿下がレオン皇太子を蹴てる!』
気持ち分かるよ… 滞在中散々振り回されていたもんね…
少し遅れてサリナさんとグラント様が来た。サリナさん泣いちゃてる!ごめんなさい!
グラント様が私に触れようと手を出したらフィラが跳ね除けた。疲れているから揉めないで!
「ケンカ…しないで…」
辛うじて出る声で諌める。2人は気不味そうに目を逸らした。結局フィラに抱き上げられ右手はグラント様に握られた。
ふと前を向くとトーイ殿下とケニー様が向き合っている。徐にトーイ殿下がケニー様の頭を叩いた!
「いたいよ!」
「心配させやがって!お前普段から奇行が多いから裏切りを信じたわ!この馬鹿が…」
「殿下…好奇心旺盛と言って下さい」
2人は笑い合っている。良かったね殿下親友を失わなくて…
安心したら眠くなって来た。体が重い…陛下とイザーク様に顛末を聞きたいのに視界がぼやけて来た…
今寝ちゃうとまた寝過ぎて…しま…う。
額に柔らかい感覚?
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