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65.誰?

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2刻の鐘の音が聞こえて目覚めた。今日から針子として働きます。

『たえ あさ げんき』
『てん君おはよう!今日からお仕事するんだ!』
『たのしい?』
『うん!』
『てん わからない でも たえ うれしい いいこと』

新たに調べた子供サイズのメモと裁縫道具を用意していると、サリナさんが朝食を持って来てくれました。
今日は“きゃー!!”ホットケーキです。テンションあげあげです。
食後は身支度を整えミリアさんが来てくれるのを待つ。扉を開けると濃紺のお仕事着のミリアさんが来ました。うわーやっぱり美人は何着ても似合うなぁ…羨ましいです。

部屋でレオン皇太子の外出の確認待ちをする。暫くするとカリナさんが戻りレオン皇太子が妖精国へ出発したと報告してくれました。これで安心して作業場に行けます。

ミリアさんと二人で勤め人用廊下を移動。作業場に着くと皆さんマスクを作ってくれています。やっぱり職人!手が早くて見惚れちゃいます。早速ケイトさんに子供用マスクのメモを渡すと、針子さんに指示して早速試作を作り上げます。
私は作業場の一番奥でミリアさんとのんびりマスクを縫います。ミリアさんは針仕事の経験が無いようなので、メモのサイズに布をカットする作業をしてもらいます。
静かな作業場で黙々と作業しあっという間に4刻になりました。針子さんは皆食堂で昼食を取りますが、私は多くの人と接触しない方がいいようで、作業場にサリナさんがお弁当を持って来てくれ奥の休憩室でミリアさんと食べます。
何がって言われたら分からないけど楽しい!
休憩も終わり昼からの作業に入ります。また黙々とマスクを縫っていると廊下が騒がしいぞ?急ぎのお仕事? すると侍女のエレナさんが作業場に駆け込んで来て開口一番

「多恵様。すぐここを出で寮にお戻りを!」
「へ?何で?ごめんエレナさん意味が…」

また廊下が騒がしく、男の人が言い合っているみたい。いや~な予感がする…こうゆう予感は大抵当たるのだ

「ここが針子の作業場か!」

薄水色の長髪をなびかせ超絶美丈夫が入って来た。作業場の針子さんが溜息を吐き熱い眼差しを向けている。

『っで!貴方だれ?』

水色美丈夫の後ろからアーサー殿下が現れた。殿下顔色悪い。

「レオン殿!案内する旨お伝えしたはす。勝手に城内を散策されては困ります」
「すまない。私は気になると我慢できないタチでして。それよりアーサー殿ここで乙女考案のマスクとやらを作っているのだな」

作業場内を歩き出す水色美丈夫。

「多恵様。落ち着いて作業をして下さい。殿下が対処下さいますから」

ミリアさんが小声で伝えてくる。頷きマスクを縫い続けると視線を感じ顔を上げた。
綺麗な水色の瞳と目が合う。別格の美丈夫さんで、今まで会った美丈夫と違うタイプだ。どう説明したらいいんだろう⁈

『…あっ!悪役ヒールの美形枠』

影のある美形って感じだ。目力がつよ! 目線をマスクに戻して作業を再開すると頭上で笑い声が聞こえて来た。

「この私と目が合ったのに無視をするとは!其方面白いなぁ」
「えっ?」

周りを見渡すと針子さんは皆んな水色美丈夫に見惚れている。私だけが針仕事を続けていた。そりゃ目立つよね…

「其方の名は?」
「えっと…アンでございます」
「乙女考案のマスクなる物を我が国でも導入したい。腕のいい針子を連れて帰りたいのだ。其方に決めた!ベイグリーに来い」

ドヤ顔でそう言うとその男をまじまじ見て

「は?お断り致します。私はまだお勤め1ヶ月の見習いでございます。お役に立てる技術はございません」

私の発言に作業場が凍りつき水色美丈夫は呆気にとられていて、アーサー殿下は頭を抱えています。

水色美丈夫は私の手を取り手の甲に口付けを落として微笑みます。針子さんは溜息を吐き殿下は苦々しい表情です。
他の女性には嬉しいシチェーションだけど、私のまわりは顔面偏差値高いので動じませんから。

「レオン皇太子!」
「へ?」

この人が強欲皇太子?王族だけあって美形だ。でも【オレイケてる】感がいけ好かない。

「ベイグリーに来れば私の側に置き望む全てを与えよう」
「お戯れはおやめ下さい。恐れながら私には過ぎた待遇でそれに似合う対価価値は私にはありません。職務中ですので失礼致します」

途端に気まずい雰囲気に… プライド高そうだからこれ位言ったら怒るだろう。

「断ると申すか⁈」

怒りを含んだ地を這うような声で威嚇しています。

「私のような無作法者を連れ帰れば皇太子様の品位を下げてしまいます。お考え直しを…」

呆気に取られるの2回目ですね皇太子。いい加減諦めてくれ。冷静に周りを見渡すと皆顔色が良くない。ごめん私が原因ですよね。

「そ…」

皇太子が何か言いかけた時、息を切らしヒューイ殿下が来て

「レオン殿。妖精王から乙女の体調が良くなり明後日の晩餐会には出席されると連絡が入りました。打合せがある故貴賓室に戻っていただきたい」

皇太子は私の頬を撫で、また来ると告げ退室していきました。皇太子に付いてアーサー殿下も退室されます。

「多恵殿大丈夫ですか?」
「ありがとうございます。でもあの人なんでここに来たんですか?今日はフィラのところに行っているはずなのに」

気まずそうにヒューイ殿下は

「妖精王が門前払いなさった様です。どこで聞いたのか定かでは有りませんが、マスクの事を聞いた様で、針子の作業場を見学したいと申され貴賓室だお待ちいただいていたのですが…」
「勝手に来ちゃったんですね」
「はい。重ね重ね申し訳ない」

申し訳無さそうなヒューイ殿下。貴方は悪くないよ…
まだ作業場は混乱しています。針子さんに迷惑をかけたので謝罪したら、皆さん滅多にお会い出来ない王族の方に(美丈夫)会えたと反対に感謝されました。どこの世界も女子はミーハーです。

裁縫道具を片付け急遽部屋に戻ります。きっと明日は何処かの部屋に缶詰ですね… お仕事は1日で終わってしまいました。

楽しかったのに…皇太子のばか…
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