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63.助言

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夜になってサリナさんも騎士さんも退室して1人になった。小さい声でてん君を呼びもふもふタイムです。目を瞑り気持ち良さそうなてん君は、急に立ち上がり戻ると言い私の左手を前足で叩く。

『フィラ くる てん もどる』
『なんで?』
『フィラ つがい たいせつ じゃま ない』

意味が分からず困っていると急に背中に温もりを感じ大好きな香りに包まれる。

『フィラ たえ なかよし てん もどる』
『あぁ…てん いつもありがとな』
『えっと…戻れ?』

てん君が戻り二人きりになり変な雰囲気になる。昨日の続きですか⁈
えっと…今日は妖精王ロイドの話するんでしょ⁈ 甘い雰囲気出している場合ではないよ。
身を捩りフィラから逃げようとするけど体格差に勝てず、ジタバタしただけでした。

「ロイドの話する為に来たんでしょ⁈離して話し辛いよ!」
「仕方ない」

拘束を解いてくれたけどベッドに腰掛けたフィラは軽々と私を膝の上に乗せて腰をホールドした。
うっ動けない…

「ロイドの妊活も大切だけど今日城内の女中のさんから大変な話を聞いたの。レオン皇太子が私をロイドの花嫁にする為に来たと、レオン皇太子の従者から聞いたって。何か知ってる?」
「あぁ…知っている。ロイドから聞いてる。残念だが本当だ。レオンは多恵にロイドの子を産ませ箱庭とロイドが安定したら、子はリズに預け多恵は自分の正妻に迎えるつもりらしい。次期妖精王の義父の肩書が欲しいだけだ。奴は前々から気に入らなかったが、正直ここまで腐った奴とは思わなかった。多恵を何だと思っているんだ!」

うわーリリスの箱庭の住人はいい人ばかりだから、この世界にクズいるなんて考えもしなかった。

「アルディアの王から連絡があってな、多恵に会うために明日朝から妖精国にレオン皇太子一行が来るらしい。もちろん相手にしない。
ただ薬草取引でアルディアは立場が弱く拒否出来ない。薬草不足は俺にも原因があるだけにアルディアの要望を無視できん。恐らく明後日辺り晩餐会が開かれるはずだ。そこに多恵は同席を求められるだろう」
「晩餐会って食事会?」

最低限のテーブルマナーはケイト先生にOKもらってるから大丈夫。ダンスがないなら何とかなる!
…と思う。

「まぁ…食事会と舞踏会を合わせた感じだ」
「ダンスあるの?」
「有るに決まっているだろう!」

あー終わった…はぃ!ヤル気ゼロです。参加したくなぃ…

「晩餐会では俺の側にいろ守ってやる」
「よろしくお願いします」
「…」

ん?何もしていないのに頭撫で撫でですか?
ん?くんくんしてる?

「いい匂いだ。美味そうだ」
「いい匂い?湯浴みしたから?あっそうそうキース様にチョコいただいてさっき1つ食べたから⁈」

あれ?嫌そうな顔してる。
フィラは首元に顔を埋めて溜息を吐く。吐息が首元にかかり身震いする。

「ちょっと!」
「俺の前で他のヤツの話はするな…」
「へ?あ…ごめん?」

なんで怒られるかなぁ…

「!」首元にキスされた!
「ちょっと!こそばいから止めて!」

柔らかいフィラの唇が首元に…同時に大きく温かいフィラの手が腰から徐々に色んな所を撫で始める
あー甘い雰囲気に持ち込まれる!
手の平でフィラの唇がを塞ぎ、反対の手で撫で撫でしてる手を押さえて

「ロイドの話がまだです!」

フィラは溜息を吐き顔上げ私の頬にキスをして話しだす

「ロイドはリズと会って助言して欲しいそうだ。ロイドは他の妖精国に来る事が出来るがリズは無理。多恵が妖精国に来てロイドに直接助言してくれてもいいが」
「むっ無理!男の人に夜の事情を話すなんて。フィラも嫌でしょう!番が他の男の人に閨の話するなんて」
「子を宿す行為は自然の摂理だ。やましい事などない」

フィラやロイドが良くても私が嫌。リズさんにしか話したくない。百歩譲って別の女性に伝言お願いするか、代筆してもらって手紙を書くか…手紙…代筆…それもかなり嫌だ。

フィラは困った顔をしている。私がイリアの箱庭に行くとレオン皇太子にとっては【飛んで火にいる夏の虫】になるからダメだ。ならリズさんに里帰りついでにアルディアに来てもらう? ロイドが絶賛溺愛中だからダメって言いそうだなぁ…

「ならばカクリー家のリズの元乳母にイリアの箱庭に行かせればいい。カクリー侯爵も娘の事ならば喜んで協力するだろう」
「でも今カクリー家は今様子が変だと言ってなかった?」
「おかしなのはケニーだ。あいつレオンと密会して何か画策している」

「あっ」

禁書庫の事と夕方のケニー様の様子がおかしかった事をフィラに相談しようと思ていたんだ。

「何か思い当たる事があるのか?」

フィラに禁書庫の事と夕方この部屋を見ていた事を話すと、思い当たる事はあるが確信が無いらしい。グレー状態のケニー様。事態が把握できるまでは決して一人にならない様に言われた。
一人になりたくてもなれませんがね…

ふとフィラと目線が合う。相変わらず優しい琥珀色瞳。分かっているし気付いている。日に日にその瞳に熱がこもってきている事。多分私もフィラに心許してきている。
でも今は問題山積で恋愛モードに入れる状態ではない。私は不器用だから恋愛モードに入ると他の事が手につかない。
だから今は駄目。せめてアルディアの問題だけでも片付かないとフィラを受け入れる事は出来ない。
きっとフィラも分かってくれていて強引に迫って来ない。

「多恵。お前が受け入れてくれるまで俺は待つ。俺の番はお前でないとダメなんだ。少しは俺の事受け入れ始めているんじゃないか。ならば口付を与えて欲しい。一片でいいお前の愛がほしい…」

そう言って距離を詰める。
後ずさりしかけて『フィラとキス?』想像したら嫌じゃない気がした。逃げない私に気付いたフィラは恐る恐る私の頬を両手で包み込み

「逃げるなら今のうちだぞ…」

ゆっくり綺麗なフィラの顔か近づく。こんな素敵な人に求愛されているのを不思議に思っていたら唇に柔らかい感触を感じる。
フィラの口付けは優しく暖かいお布団に包まれている感じがしてなぜか少し泣けてきた。

「ん?」

少し激しくなってきた。びっくりしてフィラの胸元を押したけど、強く抱きしめられさらに深く口付けされ苦しくなってきた。

『うぅ!!』 

てん君が唸りフィラが慌てて離した。

「もー苦しい!」

思わず怒ってしまった。甘い雰囲気はどこへ?

「お前な・・・」

フィラは笑って優しく私を抱きしめた。
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