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61.ロイド

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「フィラ?」

部屋は薄暗くて表情はよく見えない。起き上ろうとしたら手で制止されベッドの縁にフィラは座った。
色々聞きたい事はあるけどフィラが話すのを待つ。
フィラはずっと私を見つめて私の手を握り辛そうにぽつりぽつりと話し出した。

「多恵は俺の番だ」
「うん」
「だが彼奴がお前を欲したら俺は彼奴に敵わない」
「彼奴って誰?妖精王のフィラより凄い人がいるの?」

妖精王より凄い人なんて神しかいないじゃないの?

「妖精王ロイド。第2女神イリアの箱庭の妖精王で、ロイドは妖精王と異界人乙女との間に生まれ、この世界の妖精王の中でも強い妖力を持つ。普通妖精王は自分の箱庭でしか力が使え無いが、ロイドはこの世界全ての妖精国で力を使える。今回お前を妖精城で保護をするのを断ったのはロイドの力がお前に向くのを恐れたからだ。彼奴が本気で来たら俺は阻止出来ない」

よかった…フィラに嫌われたかと思った。信じていたけど本人の口から聞けて安心した。でもロイドが何故私を欲しがるの?
私の言いたいことを察してフィラが話出す

「ロイドは中々番を見付けられず、やっと番と出会え妖力も安定し後は子を儲ければ妖力の暴走も防げる筈だった。
しかし番を迎え入れたが子ができず、また妖力が不安定になりイリアの箱庭の自然の均衡バランスが崩れ色々所に影響を及ぼしている。
ロイドのうちに秘める妖力は途轍もなく大きく、暴走したらイリアの箱庭は消滅するだろう。
今ロイドは必死なのだ。子を生すため手段を選ばないだろう。
ロイドは必死にお前に接触しようとしている。俺の力で何とか阻止しているが、いつまで持つか分からん」

アーサー殿下が妖精王の世継ぎ問題があるからベイグリーの皇太子が私に会いに来てるって言ってた。
ふとフィラと目があったら急にフィラが寝ている私に覆い被さって来てキスしようとする。
咄嗟に顔を背けて避ける。無理矢理は嫌!

「やめて!フィラらしく無いよ」
「今強引にお前を抱き先に子を生せばロイドにお前を奪われずに済むのか⁉︎」

フィラの吐息が首元に辺り身震いすると、鎖骨辺りに口付けされた。身を捩り逃げようとするけど男の人の力には勝てない! フィラは好きだけどまだ体を許せるまででは無い。なんでそんなに急ぐの⁈

「ぅ…」

悲しくて泣けて来た。

「くっ!」

拘束をやめフィラが身を離す。私の頬を優しく両手で包み震える声で「悪かった」と呟いた。

「今まで何にも執着した事がない。だがお前は特別だ。俺が妖精王だから異世界人であるお前を欲するのかもと悩んだが、お前でなければこんなに焦がれ事はない。俺はお前をロイドに奪われそうで怖いんだ…」

大きいフィラが暗闇を恐れる幼子に見えて抱きしめてあげたくなり、身を起こしフィラを抱きしめた。
小さな私の腕ではフィラを包んであげれなくて…

「あれ腕がまわらない…⁉︎」

っと呟いたらフィラは小さく笑いながら大きな腕で抱きしめてくれた。
大好きなフィラの高めの体温と香りに包まれ幸せを感じて不思議な気持ちになる。

「ロイドは番がいるならばその相手と間に子供が授かるのが一番なんでしよ⁈  無秩序に…えっと…何と言うか仲良ししても妊娠しないよ。女性は妊娠しやすい時期あるからね」

そう!女性の体はデリケートなのだ。元の世界の私も結婚後6年も子供が出来ず不妊治療もしたし、精神的に病みかけたりもしたから、ロイドの番さんの気持ちはよく分かる。この世界の妊活事情はどうなってるのかなぁ⁈

「多恵は解決策があるのか⁈」
「解決策というか妊娠しやすい時期とかのアドバイスは出来るよ。でもそれをしたら必ず子が授かる訳では無いからね。私の世界でも子供は授かりものっていう位、人の技術や知識で得れるものでは無いから。あくまで授かり易い状況をつくるだけだよ」

フィラは私の手を取り視線を合わせ

「ロイドをいやリズを助けて欲しい」

”リズ”って何処かで聞いたぞ⁈

「リズは俺とレックロッドの仲違いのせいでベイグリーに行く事になり、そこでロイドに見初められて番になったんだ。俺も若干責任は感じている。リズに子ができればロイドもケニーも下手な事はしないだろ」
「ん?なんでケニー様が出て来るの?」
「リズ、エリザベスはケニーの妹だ」

驚いていたら夢を思い出した。確か男の人が

『俺とリズを救って欲しい』

って言ってた。夢の話をフィラにしたら間違いなくそれはロイドで、何度かロイドの思念をフィラか阻止したらしい。あの声はロイドだったんだ。

あれ!あの夢で迎えをやるって言ってた。
迎えの話をしたらフィラは考え込んで、ロイドにはフィラが話をしてくれる事になり、私は当初の予定通りベイグリー皇太子が帰るまで針子さんになって身を隠す事になった。

向き合い話した事で蟠りも無くなりスッキリした。
フィラは明日の晩また来てくれる事になった。
なんか名残惜しくて私からフィラの背中に抱きついた。多分慣れない部屋で弱気になってるんだと思う。

「そんな事されたら帰れないだろう…」

珍しく照れている。そんなフィラを愛しく思いベッドに上がりフィラの頬にキスをした。
フィラは目を見開き私の腰に腕を回して、反対の手で頭の後ろを支えフィラの綺麗なお顔が近づく…

「多恵様!物音がしましたが何かありましたか?」

ランさんが控えめにノックし様子を聞いて来た。
“ちっ”フィラは舌打ちをして名残惜しそうに額に口付けを落として

「今の続きはまた明日な!」

とイケボで囁き帰って行った。も!腰が砕けたでしょう! この後入室して来たランさんとアンリさんにした言い訳は、意味不明で後で恥ずかしすぎて悶え中々ねむれなかった。
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