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55.かくれんぼ
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お昼まで少し時間があり書物庫に寄ってもらう事にした。歩いていると何か嫌な予感がする。
いつもこうやって移動してると、誰かしら遭遇する。いつもは真っ直ぐ行くけど曲がってみた。
暫く歩くと後ろでイザーク様の声がした。あのまま真っ直ぐ行っていれば遭遇していた。
『私冴えてる!』
ほくほくしながら書物庫に着いき、書物庫の扉を開けて入ったら…
目の前にキース様が!あれ⁈私冴えてなかったけ⁈
あれ~何でキース様がいるの⁈
うわぁ…藍色の三揃えのスーツがカッコ良く相変わらずクールな貴公子が居ますよ。お決まりの見えてないフリして、こっそりクリスさんの後ろに隠れて
「クリスさんゆっくり右手前の本棚までゆっくり移動して下さい。後ろの私は気にせずに!お願い!」
「はぃ?」
「早く!」
戸惑いながらも私の言った通り右の棚まで移動を始めるクリスさん。キース様の死角をキープしながらクリスさんと移動する。
よしよし!まだ気付かれていない。本棚を利用して隠れよう。後ろを振り向いてもキース様はいない。
次の本棚を目指して爪先立ちして歩く。気分は忍者だ。へへ…何か隠れんぼみたいで何か楽しい!
もう少しで次の本棚…って思ったら、目の前が藍色に染まる。ふと目線を上げると切長の美しい瞳が私を見つめている。びっくりして仰け反ったら、腰に腕を回され抱え込まれた。
上手く逃げでいたつもりだったけど、簡単にキース様に捕まりました。
「多恵様。ご機嫌よう。楽しそうな事をなさっておられますね。私もご一緒させて下さい」
「キース様こんにちは。あの…離して下さい」
抱き寄せられて恥ずかしくてもがくが、キース様の腕は緩まない。
「離してしまうと隠れてしまいそうでなので、ずっと捕まえおきましょう」
腰に腕を回され身動き出来ない。じたばた抗うが足が床に着いていない! キース様は片腕で私を抱き上げている。騎士でも無いのに凄い力だ!趣味は筋トレなん⁈
「閣下。多恵様をお離し下さい!」
「仕方ありませんね」
やっと解放されたのでご挨拶します。見つかったからにはお相手しないと。
「今日はお仕事で登城ですか?」
「いえ。書物庫に資料を借りに来たのと、多恵様のお耳に入れたい事がございまして」
何か起こる予感がする。乙女ゲーならイベントとかになるのか? 要らないぞ!平凡な生活ぷりーず!寝巻きで1日だらだらしたい。誰とも喋らず過ごしたい。
「先程、イザーク様から多恵様ダンスレッスンを共にし、その後に面会のお時間をいただきました。よろしくお願いしますね」
「へ?レッスンもですか?」
聞いておらず慌てていると
「はい。昨日はアーサー殿下とグラント殿とレッスンされたと聞いております。もちろん伴侶候補の私とも踊っていただけますよね⁈」
「あれは成り行きで予定していた訳ではありません」
「今日はダンスを共にしたいのもありますが、多恵様ご発案の防護靴が出来上あがり、そちらも見て確認いただきたいのです」
もう出来たんだ!イワン先生の嬉しそうな顔が浮かんだ。
「ご意見いただき改良後、港の労働者に配る予定です。これで怪我が減り港も更に活気付くでしょう。喜ばしい事です」
「お役に立てたなら嬉しいです」
本当は書物庫は静かにしないといけないけど、誰もいないから普通に会話しながら本を探す。
確か奥の棚に冒険物語があったのを思い出し、キース様に奥の本棚に行くと伝えるとやはり付いて来た。薄暗い奥の棚に行くと重厚な扉が見えてきた。
確か禁書庫だ。じっと見ているとキース様が
「あそこは禁書庫です。陛下と宰相以外の者は何人たりとも入る事はできません」
「えっ?殿下も?」
偶々近くに居たトーマスさんが
「責任者の私も入れません。どんな書物が有るのか興味津々ですが命は大切なのでね」
「…」
『あれ…あそこから出てきた人見たよ。殿下の指示って…内密にって…』
急にリックさんの言葉が蘇る。『明るい表の顔を信用してはいけない!』
全身の血の気が引く。目の前の色が無くなりモノクロに見えてきた。
「多恵様どうされました⁉︎顔色が悪い。ご気分が優れませんか⁈」
キース様が何慌ててるけどもう意味が分からない。
頭の中を色んな事がぐるぐる回っている。同時に目も回ってきて気持ち悪い。私の周りで誰かが話しかけているけど全く耳に入らない。急に体が浮く感じがするけど反応する気力も無い。
『どうしよう…気づいてはいけないモノを見てしまった様な気がする。怖い…』
周りが急に明るくなったのが分かり顔を上げると、掃き出し窓横のソファーに座っていて、心配そうにキース様がのぞき込んでいる。
臙脂色の澄んだ瞳と目が合った。キース様は安堵の表情をし少し落ち着いて周りを見たら、トーマスさんと騎士さん達が心配そうにこっちを見ている。
「あれ?」移動した記憶が無い。
「お落ち着かれましたが?急に顔色が悪くなり私共の声も届かない様でしたので、こちらにお運びしました。まだ優れない様でしたら医師を呼びに行かせますが⁈」
「大丈夫です。落ち着きました」
トーマスさんが果実水を入れてくれたのでいただき一息つく。徐にトーマスさんが黒い塊が入って箱を持って来て勧めてくれる。
「これは第4女神アリアの箱庭名産の“チョコラーテ”という菓子です。甘味が強く独特な風味がしますが疲れた時にいいので良ければどうぞ」
「チョコ?わぁ!嬉しい!いただきます」
一ついただき口に運ぶ。ビターチョコで甘味少な目で私好みの味だった。チョコは大好き!箱庭にチョコがあるなんて更に食事事情が豊かになる。急激に気分がよくなった。
顔色が良くなって騎士さんは胸をなでおろしていた。でもきっとアーサー殿下に報告が行って今晩あたり様子見と言いながらくるんだろうなぁ… 覚悟しておこう。トーマスさんも騎士のお2人も安堵しているけどキース様だけが鋭い視線を送ってきます。
「何か思うところがあるのではありませんか? お一人で抱え込まず頼っていただきたい」
絶対キース様は禁書庫の事で私が知っている事があるのを見抜いている。何かあるのは分かるけどはっきり見えない。そんな状況で相談もできないしまだ困惑している。誰をと何を信じていいか分からなくなっている。取りあえず…
「急に元の世界での記憶が流れ込んで?来て、一瞬ここが何処か分からなくなって困惑したんです。すみません。ご心配おかけしました」
キース様の視線は真っ直ぐで心の中を探られている気がした。
「はぁ~。私はまだまだですね。貴女の信頼を得れていないようだ。今は聞きません。貴女の信頼を得れた時は頼っていただきたい」
キース様は言わずとも察してくれたようです。みんなの心遣いに感謝して部屋に戻る事になった。
いつもこうやって移動してると、誰かしら遭遇する。いつもは真っ直ぐ行くけど曲がってみた。
暫く歩くと後ろでイザーク様の声がした。あのまま真っ直ぐ行っていれば遭遇していた。
『私冴えてる!』
ほくほくしながら書物庫に着いき、書物庫の扉を開けて入ったら…
目の前にキース様が!あれ⁈私冴えてなかったけ⁈
あれ~何でキース様がいるの⁈
うわぁ…藍色の三揃えのスーツがカッコ良く相変わらずクールな貴公子が居ますよ。お決まりの見えてないフリして、こっそりクリスさんの後ろに隠れて
「クリスさんゆっくり右手前の本棚までゆっくり移動して下さい。後ろの私は気にせずに!お願い!」
「はぃ?」
「早く!」
戸惑いながらも私の言った通り右の棚まで移動を始めるクリスさん。キース様の死角をキープしながらクリスさんと移動する。
よしよし!まだ気付かれていない。本棚を利用して隠れよう。後ろを振り向いてもキース様はいない。
次の本棚を目指して爪先立ちして歩く。気分は忍者だ。へへ…何か隠れんぼみたいで何か楽しい!
もう少しで次の本棚…って思ったら、目の前が藍色に染まる。ふと目線を上げると切長の美しい瞳が私を見つめている。びっくりして仰け反ったら、腰に腕を回され抱え込まれた。
上手く逃げでいたつもりだったけど、簡単にキース様に捕まりました。
「多恵様。ご機嫌よう。楽しそうな事をなさっておられますね。私もご一緒させて下さい」
「キース様こんにちは。あの…離して下さい」
抱き寄せられて恥ずかしくてもがくが、キース様の腕は緩まない。
「離してしまうと隠れてしまいそうでなので、ずっと捕まえおきましょう」
腰に腕を回され身動き出来ない。じたばた抗うが足が床に着いていない! キース様は片腕で私を抱き上げている。騎士でも無いのに凄い力だ!趣味は筋トレなん⁈
「閣下。多恵様をお離し下さい!」
「仕方ありませんね」
やっと解放されたのでご挨拶します。見つかったからにはお相手しないと。
「今日はお仕事で登城ですか?」
「いえ。書物庫に資料を借りに来たのと、多恵様のお耳に入れたい事がございまして」
何か起こる予感がする。乙女ゲーならイベントとかになるのか? 要らないぞ!平凡な生活ぷりーず!寝巻きで1日だらだらしたい。誰とも喋らず過ごしたい。
「先程、イザーク様から多恵様ダンスレッスンを共にし、その後に面会のお時間をいただきました。よろしくお願いしますね」
「へ?レッスンもですか?」
聞いておらず慌てていると
「はい。昨日はアーサー殿下とグラント殿とレッスンされたと聞いております。もちろん伴侶候補の私とも踊っていただけますよね⁈」
「あれは成り行きで予定していた訳ではありません」
「今日はダンスを共にしたいのもありますが、多恵様ご発案の防護靴が出来上あがり、そちらも見て確認いただきたいのです」
もう出来たんだ!イワン先生の嬉しそうな顔が浮かんだ。
「ご意見いただき改良後、港の労働者に配る予定です。これで怪我が減り港も更に活気付くでしょう。喜ばしい事です」
「お役に立てたなら嬉しいです」
本当は書物庫は静かにしないといけないけど、誰もいないから普通に会話しながら本を探す。
確か奥の棚に冒険物語があったのを思い出し、キース様に奥の本棚に行くと伝えるとやはり付いて来た。薄暗い奥の棚に行くと重厚な扉が見えてきた。
確か禁書庫だ。じっと見ているとキース様が
「あそこは禁書庫です。陛下と宰相以外の者は何人たりとも入る事はできません」
「えっ?殿下も?」
偶々近くに居たトーマスさんが
「責任者の私も入れません。どんな書物が有るのか興味津々ですが命は大切なのでね」
「…」
『あれ…あそこから出てきた人見たよ。殿下の指示って…内密にって…』
急にリックさんの言葉が蘇る。『明るい表の顔を信用してはいけない!』
全身の血の気が引く。目の前の色が無くなりモノクロに見えてきた。
「多恵様どうされました⁉︎顔色が悪い。ご気分が優れませんか⁈」
キース様が何慌ててるけどもう意味が分からない。
頭の中を色んな事がぐるぐる回っている。同時に目も回ってきて気持ち悪い。私の周りで誰かが話しかけているけど全く耳に入らない。急に体が浮く感じがするけど反応する気力も無い。
『どうしよう…気づいてはいけないモノを見てしまった様な気がする。怖い…』
周りが急に明るくなったのが分かり顔を上げると、掃き出し窓横のソファーに座っていて、心配そうにキース様がのぞき込んでいる。
臙脂色の澄んだ瞳と目が合った。キース様は安堵の表情をし少し落ち着いて周りを見たら、トーマスさんと騎士さん達が心配そうにこっちを見ている。
「あれ?」移動した記憶が無い。
「お落ち着かれましたが?急に顔色が悪くなり私共の声も届かない様でしたので、こちらにお運びしました。まだ優れない様でしたら医師を呼びに行かせますが⁈」
「大丈夫です。落ち着きました」
トーマスさんが果実水を入れてくれたのでいただき一息つく。徐にトーマスさんが黒い塊が入って箱を持って来て勧めてくれる。
「これは第4女神アリアの箱庭名産の“チョコラーテ”という菓子です。甘味が強く独特な風味がしますが疲れた時にいいので良ければどうぞ」
「チョコ?わぁ!嬉しい!いただきます」
一ついただき口に運ぶ。ビターチョコで甘味少な目で私好みの味だった。チョコは大好き!箱庭にチョコがあるなんて更に食事事情が豊かになる。急激に気分がよくなった。
顔色が良くなって騎士さんは胸をなでおろしていた。でもきっとアーサー殿下に報告が行って今晩あたり様子見と言いながらくるんだろうなぁ… 覚悟しておこう。トーマスさんも騎士のお2人も安堵しているけどキース様だけが鋭い視線を送ってきます。
「何か思うところがあるのではありませんか? お一人で抱え込まず頼っていただきたい」
絶対キース様は禁書庫の事で私が知っている事があるのを見抜いている。何かあるのは分かるけどはっきり見えない。そんな状況で相談もできないしまだ困惑している。誰をと何を信じていいか分からなくなっている。取りあえず…
「急に元の世界での記憶が流れ込んで?来て、一瞬ここが何処か分からなくなって困惑したんです。すみません。ご心配おかけしました」
キース様の視線は真っ直ぐで心の中を探られている気がした。
「はぁ~。私はまだまだですね。貴女の信頼を得れていないようだ。今は聞きません。貴女の信頼を得れた時は頼っていただきたい」
キース様は言わずとも察してくれたようです。みんなの心遣いに感謝して部屋に戻る事になった。
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