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50.子うさぎ
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「多恵様!」
「ケイティさん…私やらかしました…うっ…」
「多恵様!これで押さえて下さい。目を擦ると腫れますから」
ケイティさんにハンカチを受け取り涙を拭う。
必死に泣き止もうとするのに、意思に反し涙が止めどなく出てくる。
「閣下。こちらに…」
ケイティさんが声をかけるとグラント様が移動する?どこ行くの?
ふと顔を上げると寝室にいて、グラント様はベッドサイドに私を下ろし額に口付けた
「子うさぎみたいだ…」
そう言い小さく笑って部屋を出ていった。グラント様が退室するとケイティさんが前に跪き
「落ち着かれて話せるようになりましたら、お呼び下さい。私はグラント様にお茶をお出しして参ります」
足早にケイティさんは部屋を出ていった。
ぽっつ…ん… と1人になり、やっと涙は引っこんだ。すると
『たえ いたい かなしい?』
『てん君ごめんね。心配ないから』
『でも たえ なく だれ いたい した?』
『違うよ!自分が嫌になっの…』
『たえ いや?』
てん君は自己嫌悪を知らないみたい。でも今は説明できる精神状態では無い。
『少しすれば良くなるから大丈夫だよ』
『フィラ よぶ?』
『大丈夫だから呼ばないで』
フィラが来ると話がややこしくなる気がする。フィラは頼りになるし優しい。でも人同士の関わりに少し疎い。多分今の私の気持ちは理解出来ないと思う。
「多恵様。お茶をお持ちしましたので入室許可を」
「どうぞ」
ケイティさんが入室すると、寝室にお茶のいい香りが漂う。お茶を飲み落ち着くとカップをケイティさんに預けて
「ケイティさん聞いてくれる?」
「なんなりと…」
前に跪かれると話しにくいから、横に座ってもらい
一通り話した。リックさんとケニー様のお家事情はぼやかして話したが、ケイティさんは知っている感じだった。貴族の間では有名な話なの?
「リックさんに悪い事しちゃった。リックさんにお詫びと殿下に私が悪かったって弁解しないと」
ケイティさんは私の手を取り首を振って
「多恵様。お気持ち分かりますが、リック様はお仕えする者としては未熟です。お仕えしている時は私情を挟んではいけませんし、多恵様は箱庭のしきたり、ルールをご存知無いのは城仕えの者は知っております。
ならば、私共が配慮するべきなのです。舞踏会の後は貴族との交流も増え、この様に会話に困る事も増えまいります。これから学び困った際には我々に頼って下さい。誠心誠意お仕えいたします」
ケイティさんの言葉が嬉しくて、また泣きそうになる。
「ありがとう。私がんばるし色々教えて下さい」
微笑むケイティさんはとても綺麗で、頼れるお姉さんだ。
「グラント様が心配され居間でお待ちです。お会いになられますか?」
本当は恥ずかしいから会いたく無いけど、そんな子供みたいな事は出来ないから、お会いしてお礼を言わないと。
ベッドから下りて寝室の扉から居間をこっそり覗くと、グラント様の美しい横顔が見えた。箱庭の住人は美男美女しか居ないし、長身でスタイルもいい。
その中でも私に関わりのある人は別格だ。グラント様なんて女性って言われても疑わない。なんでこんな人達に好かれるのか、只々疑問でしか無い。じっと観察してたら、あっ気付かれた…
『うっ!』
グラント様の微笑みに目がやられそう!
「落ち着かれましたか⁈」
「色々すみません。ご迷惑おかけしました」
グラント様は立ち上がり目の前に来て手を取りソファーに誘導してくれる。
「事情はダグラス殿から聞きました。貴女に非は無い」
「いえ。私の勉強不足と配慮が足りませんでした。
アーサー殿下に事情を説明に行きたいですが、お忙しいですよね…」
するとグラント様は苦笑いをして
「恐らく殿下からお越しになると思いますよ。確認しておきましょう」
「よろしくお願いします」
頭を下げて直るといつの間にかグラント様が目の前にいて手を取られる。大きな手にドキドキしてしまい俯いた。直視出来ません!
「貴女の小さな仕草も愛らしく目が離せない。ずっと見ていたい…」
「ずっと見られると困ります。気が抜けないから倒れちゃう」
「ならば先程の様にお抱きしますよ」
そう言い熱もを持った眼差しを向ける。困って
「あまり意地悪されるなら暫く会いません」
「それは困るので今日は引きましょう」
「そうして下さい」
すると遠くから4刻の鐘の音が聞こえ騎士さん交代の知らせが入った。退勤するダグラスさんに謝り、リックさんにも伝言を頼んだ。ダグラスさんも私に非は無いと言うけれど、やっぱりそう思えない。この自己嫌悪はしばらく引きずりそうだ。
今日の当番騎士さんに挨拶して部屋に戻るとエレナさんがケイティさんから引き継ぎを受けていた。
エレナさんに元気分けてもらおう!
「多恵様。本日は私がお仕え致します。よろしくお願いします。ご報告です。今日のダンスレッスンはイワン様の都合で中止になりました」
「えっ!そうで無くてもまだ全然踊れなくて時間無いのに…」
ダンスはキライだけど踊れなく相手に抱えられて踊るのはもっと嫌だ!
「「私が!」」
おっ?ハモった!
「私がお教えしましょう」
とグラント様が右手を左胸にあて微笑みます。なんかヤル気が満々がちょと怖いよ…
「グラント様お忙しいでしょう⁈ご無理はなさらないで下さい。えっと…エレナさん踊れる⁈」
「はい!」
元気に返事してくれたら昼食準備中のケイティさんが
「多恵様。エレナは男爵家子女ですから淑女教育は一通り受けておりますし、ダンスは上手だと聞いております。グラント様では女性パートをお教え出来ないでしょうから、エレナご協力さない」
エレナさんは嬉しそうで、相反してグラント様なんか不服そうだ。でもグラント様と2人きりだとちょいちょい口説かれそうで練習どころでない!
ケイティさんの提案でグラント様と昼食をご一緒する事になった。向かい合い食事をしたが、思いのほか会話が弾み楽しい食事になった。食事中にちょいちょい温かい眼差しが気になったけどスルーします
食後お茶をいただき少し休憩してから練習を始めます。手本を見たくてグラント様とエレナさんにお願いすると、グラント様は無表情でエレナさんは頬を染め恋する乙女。
こちらは音楽プレーヤーなんて無いから、私が手拍子でリズムを取り2人は踊りだします。
『わぁ!めっちゃ綺麗!』
エレナさんプロ並だ!グラント様のリードもスマートでカッコいい!
もーいっそ2人で踊った方が良いんじゃーない⁈
「ケイティさん…私やらかしました…うっ…」
「多恵様!これで押さえて下さい。目を擦ると腫れますから」
ケイティさんにハンカチを受け取り涙を拭う。
必死に泣き止もうとするのに、意思に反し涙が止めどなく出てくる。
「閣下。こちらに…」
ケイティさんが声をかけるとグラント様が移動する?どこ行くの?
ふと顔を上げると寝室にいて、グラント様はベッドサイドに私を下ろし額に口付けた
「子うさぎみたいだ…」
そう言い小さく笑って部屋を出ていった。グラント様が退室するとケイティさんが前に跪き
「落ち着かれて話せるようになりましたら、お呼び下さい。私はグラント様にお茶をお出しして参ります」
足早にケイティさんは部屋を出ていった。
ぽっつ…ん… と1人になり、やっと涙は引っこんだ。すると
『たえ いたい かなしい?』
『てん君ごめんね。心配ないから』
『でも たえ なく だれ いたい した?』
『違うよ!自分が嫌になっの…』
『たえ いや?』
てん君は自己嫌悪を知らないみたい。でも今は説明できる精神状態では無い。
『少しすれば良くなるから大丈夫だよ』
『フィラ よぶ?』
『大丈夫だから呼ばないで』
フィラが来ると話がややこしくなる気がする。フィラは頼りになるし優しい。でも人同士の関わりに少し疎い。多分今の私の気持ちは理解出来ないと思う。
「多恵様。お茶をお持ちしましたので入室許可を」
「どうぞ」
ケイティさんが入室すると、寝室にお茶のいい香りが漂う。お茶を飲み落ち着くとカップをケイティさんに預けて
「ケイティさん聞いてくれる?」
「なんなりと…」
前に跪かれると話しにくいから、横に座ってもらい
一通り話した。リックさんとケニー様のお家事情はぼやかして話したが、ケイティさんは知っている感じだった。貴族の間では有名な話なの?
「リックさんに悪い事しちゃった。リックさんにお詫びと殿下に私が悪かったって弁解しないと」
ケイティさんは私の手を取り首を振って
「多恵様。お気持ち分かりますが、リック様はお仕えする者としては未熟です。お仕えしている時は私情を挟んではいけませんし、多恵様は箱庭のしきたり、ルールをご存知無いのは城仕えの者は知っております。
ならば、私共が配慮するべきなのです。舞踏会の後は貴族との交流も増え、この様に会話に困る事も増えまいります。これから学び困った際には我々に頼って下さい。誠心誠意お仕えいたします」
ケイティさんの言葉が嬉しくて、また泣きそうになる。
「ありがとう。私がんばるし色々教えて下さい」
微笑むケイティさんはとても綺麗で、頼れるお姉さんだ。
「グラント様が心配され居間でお待ちです。お会いになられますか?」
本当は恥ずかしいから会いたく無いけど、そんな子供みたいな事は出来ないから、お会いしてお礼を言わないと。
ベッドから下りて寝室の扉から居間をこっそり覗くと、グラント様の美しい横顔が見えた。箱庭の住人は美男美女しか居ないし、長身でスタイルもいい。
その中でも私に関わりのある人は別格だ。グラント様なんて女性って言われても疑わない。なんでこんな人達に好かれるのか、只々疑問でしか無い。じっと観察してたら、あっ気付かれた…
『うっ!』
グラント様の微笑みに目がやられそう!
「落ち着かれましたか⁈」
「色々すみません。ご迷惑おかけしました」
グラント様は立ち上がり目の前に来て手を取りソファーに誘導してくれる。
「事情はダグラス殿から聞きました。貴女に非は無い」
「いえ。私の勉強不足と配慮が足りませんでした。
アーサー殿下に事情を説明に行きたいですが、お忙しいですよね…」
するとグラント様は苦笑いをして
「恐らく殿下からお越しになると思いますよ。確認しておきましょう」
「よろしくお願いします」
頭を下げて直るといつの間にかグラント様が目の前にいて手を取られる。大きな手にドキドキしてしまい俯いた。直視出来ません!
「貴女の小さな仕草も愛らしく目が離せない。ずっと見ていたい…」
「ずっと見られると困ります。気が抜けないから倒れちゃう」
「ならば先程の様にお抱きしますよ」
そう言い熱もを持った眼差しを向ける。困って
「あまり意地悪されるなら暫く会いません」
「それは困るので今日は引きましょう」
「そうして下さい」
すると遠くから4刻の鐘の音が聞こえ騎士さん交代の知らせが入った。退勤するダグラスさんに謝り、リックさんにも伝言を頼んだ。ダグラスさんも私に非は無いと言うけれど、やっぱりそう思えない。この自己嫌悪はしばらく引きずりそうだ。
今日の当番騎士さんに挨拶して部屋に戻るとエレナさんがケイティさんから引き継ぎを受けていた。
エレナさんに元気分けてもらおう!
「多恵様。本日は私がお仕え致します。よろしくお願いします。ご報告です。今日のダンスレッスンはイワン様の都合で中止になりました」
「えっ!そうで無くてもまだ全然踊れなくて時間無いのに…」
ダンスはキライだけど踊れなく相手に抱えられて踊るのはもっと嫌だ!
「「私が!」」
おっ?ハモった!
「私がお教えしましょう」
とグラント様が右手を左胸にあて微笑みます。なんかヤル気が満々がちょと怖いよ…
「グラント様お忙しいでしょう⁈ご無理はなさらないで下さい。えっと…エレナさん踊れる⁈」
「はい!」
元気に返事してくれたら昼食準備中のケイティさんが
「多恵様。エレナは男爵家子女ですから淑女教育は一通り受けておりますし、ダンスは上手だと聞いております。グラント様では女性パートをお教え出来ないでしょうから、エレナご協力さない」
エレナさんは嬉しそうで、相反してグラント様なんか不服そうだ。でもグラント様と2人きりだとちょいちょい口説かれそうで練習どころでない!
ケイティさんの提案でグラント様と昼食をご一緒する事になった。向かい合い食事をしたが、思いのほか会話が弾み楽しい食事になった。食事中にちょいちょい温かい眼差しが気になったけどスルーします
食後お茶をいただき少し休憩してから練習を始めます。手本を見たくてグラント様とエレナさんにお願いすると、グラント様は無表情でエレナさんは頬を染め恋する乙女。
こちらは音楽プレーヤーなんて無いから、私が手拍子でリズムを取り2人は踊りだします。
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