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44.打開策
しおりを挟む私がビビっているのに気付いたケイティさんが
「グラント様、キース様。その様に殺気立っては多恵様が萎縮なさいます。紳士の振舞いを…」
注意され深呼吸をした2人は姿勢を正し突然の訪問を謝罪された。やっといつものお2人に戻り安堵する。
「いえ。しかしこの後ヒューイ殿下とのお約束がありますから、あまり時間は取れません」
「「多恵様!」」
2人の話はやっぱり舞踏会のエスコートでした。
アーサー殿下が退室後にイザーク様の執務室に行き、舞踏会のエスコートをする事を伝え(この時にキース様が居た)、第1騎士団騎士棟に向かう途中にグラント様に会いエスコートを自慢していた。
『殿下…なにやってんの!』
殿下の子供の様な振る舞いにため息を吐く。すると不安げな顔をしたグラント様が
「本当ですか?多恵様は殿下をお選びに…我々に機会は無いのですが⁈」
「えっえっと…結論から言うと、舞踏会のエスコートの意味を知らずに、普段のエスコートと同じ認識で返事しちゃいまして…深い意思や意味は全くありません」
そう言うと表情を緩めたキース様が
「ならば我々にもまだ希望があるのですね!」
「って言うかアーサー殿下にどう弁解しようか悩んでまして…」
あんなに喜んでいるの見たら断り辛い。また泣きそうになっていたら、ケイティさんが腕組みをして考え込んでいて徐に
「そうですね…アーサー殿下はこの王国で2番目の地位にあり、殿下のエスコートを回避するにはそれ以上の地位の方で無いと問題が起きるでしょう。
グラント様もキース様も難しいのでは⁉︎」
グラント様もキース様も難しい顔をして考え込んでいます。適当に返事した事を後悔しているとてん君が…
『フィラ いる フィラ よぶ』
『何でフィラなの?』
『フィラ おう えらい』
「あっ!それアリかも!」
突然大きな声を出し皆んなびっくりしている。御免なさい大声だして!皆んなに説明しようとした時、目の前が真っ白になり好きな香りに包まれる。
「呼んだか?」フィラだ
「お願いがあるんだけど、その前に離して!」
「お前の願いなら何でも聞くが離すのは断る!」
「話しにくいし皆んな困っているから!」
フィラの腕から解放されて皆んなを見ると、深々と礼をしている。そして
「お初にお目にかかり光栄でございます。オブルライト公爵家グラントと申します」
「同じくファーブス公爵家キースと申します。お目にかかり光栄にございます」
『おぉ!流石公爵家嫡男。フィラ相手でも物怖じしないな…』
フィラは軽く頷きすぐ私に向き直り、腰に手を回し引き寄せた。まるでグラント様とキース様を牽制しているみたいだ。フィラは蕩けるような笑みを浮かべて
「俺は何をすればいいんだ⁈」
「舞踏会のエスコートをお願いしたい⁈ダメ?」
フィラは嬉しそうに頭の上に口付けを落として
「俺一択だろ!」
グラント様とキース様は驚いた表情をしています。
サリナさんは明るい表情に変わり
「フィラ陛下は妖精王でアーサー殿下より地位は上にございます。フィラ陛下がエスコートを申し出れば誰も異議を言えないはずです。多恵さんとても良い考えですわ!」
まだ伴侶を決めるつもりは無い。しかし王国挙げての舞踏会で参加者の皆さんに誤解を与えたく無いし、アーサー殿下にも恥をかかせたく無い。てん君の言う通りフィラに頼むのが一番無難なのだ。
皆さんの反応を恐る恐る見ると、お2人から熱のこもった視線を送られて
「流石多恵様。思慮深い!多恵様はまだ相手をお決めでは無いのですね⁈」
「はい。私こちらに来て1ヶ月ですよ!そんな簡単に夫を決めるなんて無理です」
破顔した2人に手を取られて手の甲に口付けを落とされた。直視できない位美しいお2人に顔が熱くなる。恥ずかしいくてフィラに目線を変えると、フィラは無表情で2人を見ている。
フィラ!怖いよ…
只今微妙な空気が漂っています。
誰か助けて下さい!
「フィラ陛下。恐れながら発言の許可を」
すると出来る先輩が空気を変えてくれるようです。
「許そう」
「本日より多恵様付侍女を務めさせていただきます。ケイティと申します。以後お見知りおきを…
そして陛下にお願いがございます。
多恵様は舞踏会のエスコートの意味をご存知無く、アーサー殿下のエスコート受け入れられお困りでございます。多恵様からお断りする事は難しく、できましたら陛下よりアルディ国王へエスコートの申し込みをいただけますでしょうか!
その方が皆様の面目が保てて丸く収まります」
フィラは視線をケイティさんに向けて
「事情は理解した。どうせアーサーが多恵が何も考えていない時に、どさくさに紛れて了承を得たんだろ?そんな抜けている所も可愛いぞ!多恵」
グラント様とキース様が”抜けてる所”で微笑ましく頷いているの納得いかない!
「分かった直ぐに書簡を出そう。多恵これでいいか?」
「ありがとう。フィラ!でも抜けてる発言は何かイヤ」
部屋の雰囲気が和んだのはいいけど、皆んなに暖かい眼差しを向けらているのは気のせいだろうか…
そうしているうちに扉外からヒューイ殿下の先触れが来た。フィラは書簡を用意のために帰り、グラント様とキース様は仕事中だったらしく、慌ただしく退室されて行った。
やっと殿方をお見送りし振り返ると、サリナさんがケイティさんに怒られています。
「サリナ。貴女は多恵様が召喚されてから一番長くお側に居るはずです。ならば多恵様がこちらのしきたり等をご存知無いのも分かっていたはずです。
主が困ったり誤った判断をしそうな時に、そっとお助けするのがお仕えする私共の役目です。
今回は多恵様の機転とフィラ陛下のご協力で大事に至りませんでしたが、同じ事が無き様に務めなさい」
ケイティさんは私を見て深々と礼をして
「この度は私共の配慮のないばかりに、多恵様に心労を与えてしまい申し訳ございません」
「違うよ!フィラの言ったみたく何も考えず返事した私が悪いんだよ!サリナさんは悪くないから」
そう!私が悪いのに謝らないでほしい。でもケイティさんは
「多恵様はお優し過ぎます。今後もしっかり務めさせていただきますので、よろしくお願いします」
お2人に謝られ恐縮するけど、これが彼女らの仕事なんだ。だからそれ以上何も言わす謝罪を受けた。
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