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41.嫌う理由

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キース様の真っ直ぐな視線に逃げ場が無くなった。
キース様が距離を詰めてきて、思わず一歩下がろうとした時。キース様に手を取られ

「多恵様。逃げないで下さい」
「でも、キース様今日は少し雰囲気が違うので…」

『怖い…』とは言えなかった。真剣な眼差しのキース様は私に話があると言い、手を離してくれない。
怖い反面真剣な眼差しに逃げることができず話を聞く事にした。

「私の妹はチャイラ島の大商人の跡取り息子に気に入られ、言い寄られ縁談を申し込まれました。父も妹も嫌がり断ると、相手は人を雇い連れ妹を攫おうとしたのです。幸い我が公爵家の護衛騎士が妹を守り大事にはいたりませんでした。
しかし、妹は心を病み伏せって部屋から出れなくなり、癒す為に沢山の時間を有しました」
「そんな事が…今はどうされているのですか?」

妹さんは幼馴染の男性が心を配り寄り添い、たくさんの時間をかけやっと日常を取り戻したそうだ。そして幼馴染の想いが伝わり婚約。今は婚約者の領地で穏やかに過ごしている。

やっと話が見えてきた。キース様のチャイラに対する嫌悪感は妹さんの事があったからだ。また表情を曇らせたキース様は話を続ける

「貴女の拉致を目論んでいるチャイラ人の入国が分かった時は、怒りでおかしくなりそうでした。
直ぐにグラント殿に連絡し、お茶会を中止する様に忠告したのに!」

するといきなりキース様は取った私の手を引き、腕の中に閉じ込めた。予想外の事に固まる私。すると部屋の端に待機していたサリナさんが駆け寄って来て

「キース様!お止め下さい!」 

キース様は騎士さんに比べたら華奢だけど、やっぱり男の人だ。がっしりしてて身動き出来ない!
あーでも好きな細マッチョだ

「キース様!」

サリナさんの叱責で我にかえり

「キース様!お戯れを…」
「私は本気です。私の知らぬところで貴女に何か有れば私は耐えれない。貴女を守る権利をいただきたい!」

これって求婚プロポーズなの⁈

「すみません。私今リリスのお仕事でいっぱいいっぱいで、恋愛とか考えられません。お気持ち…ありがとうございます…」

どんどんサリナさんの声が大きくなり

「キース様!これ以上は外の騎士に対応いただく事になります!すぐにお離し下さいまし」

サリナさんMAXに怒ってる! やっとキース様の腕の力が緩んだら、すかさずサリナさんが私の手を引き背後に私を匿った。

「多恵様。私は貴女の事となると余裕が無くなります。カッコ悪くてもいい! 全てを貴女に捧げたい。しかし早急過ぎた様だ。お詫び致します。
しかし、私の本気の気持ちは知っていただきたい」

真剣な眼差し目を逸らせない。しばらく見つめ合っちゃいました。
ノック音がして文官さんがキース様を呼びにきたようだ。キース様はため息をつき

「またお会いするお時間をいただきたい」
「分かりました。あっ!キース様今から陛下とイザーク様と話し合いですよね!頑張って下さい!」

一瞬びっくりした表情をされましたが、こちらが赤面するほどの素敵な笑顔を返してくれ退室された。
サリナさんは怒り継続中で

「公爵家後嫡男が何と破廉恥な!」

サリナさんの機嫌が戻るまでもう少しかかりそうです。暫く大人しくしておきます。

こうしてキース様との面会を終えて疲れはMAX。早く休たくて湯浴みを急ぐ。

やっと休めることになり、ふらふらと寝室に入る。眠くなるまでベッドで木板タブレットで色々検索していると、てん君が出たがっているので呼びます。

『たえ つかれ たくさん』
『うん。疲れたね…』
『でも なで ほしい』
『もち!喜んで!』
 
てん君のもふもふ時間タイムは癒しです。極上の毛玉で癒されていると

『たえ フィラ くる』
『えっ! まじで⁉︎』

てん君はベッドから降りてテラスに向かいテラス窓をペシペシ叩きます。テラスの窓を開けて出ると
テラスのチェアーにフィラが座っていた。

「多恵…」

フィラは席を立ち私をすぐ抱き寄せる。テラスは季節が進みヒャッとしたけど、フィラの高めの体温ですぐ温もりを取り戻す。

「多恵に会いたいから来た」
「うん。今日はねいっぱい働いたから疲れたの」

フィラは私の頭に頬を乗せより密着する

「無理はするな。お前に何かあったら耐えれん」
「結構頑張らないと問題いっぱいだから…」
「…俺は何かできるか?」
「うーん…思い付かない…けど…」

背の低い私の顔はフィラの胸元に来る。抱き締められてフィラの新緑の香りに包まれている。

「フィラの香り好き。リラックスするからこれ…癒しか…も」

フィラの香りと温かい体温で眠気が一気に来た。

『フィラ たえ ねる!』

てん君は部屋に駆けていき、ベッドから木版タブレットを咥えてきて

『たえ ねる てん これ もどれ ない』
「てん君大丈夫。まだ寝ない…か…ら」

急に体が浮いた? フィラが私を抱き上げていた

「多恵。木版タブレットとてんを戻せ。お前が寝ると戻せ無いぞ」
「はぁ…い。戻れ」
「いい子だ」

フィラは額に口付けを落として

「そのまま寝てていい。ベッドまで俺が運ぼう」
「いいよ…じぶ…ん…」
『たえ やすむ』

ここからの記憶はない。

やっぱり私はフィラが一番気を許せるみたいだ。
まだ愛かは分からない。でもフィラと接するのは好き。まだこっちに来て1ヶ月経ってない。ゆっくりでいいよね!もうちょい待ってフィラ
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