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38.気の迷い

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自室に戻る足どりは軽くいつもより早足でマーカスさんとエリックさんに不思議そうな顔をされた。

部屋の前に交代の騎士さんが見えて…

「デュークさん!ガイさん!」

そこに見慣れたお顔があり嬉しくて思わずダッシュしたら、マーカスさんとエリックさんが慌てだす。

「お会いできてよかった!!色々とすみません」

思わず頭を下げると

「お止め下さい。貴女の身を守れなかった私どもは本来護衛から外される所、アーサー殿下の温情で続けられることになりました」

お二人はそう言い胸に手を当て騎士の礼をしてくれる。

「よかった!これからもよろしくお願いします」

今日はいい日だ! マーカスさんとエリックさんにお疲れ様をして入室する

部屋に入るとサリナさんとエレナさんが迎えてくれ、うれしくてサリナさんに抱き付いてしまった。
勢いよく抱き付きよろけたサリナさんをエレナさんがささえてくれ、二人に抱き留められ嬉しい。

「おかえりなさい。サリナさん。これからもよろしくお願いします」
「お任せ下さい」

微笑むサリナさんは少し涙目だ。サリナさんに話を聞こうとした時、4刻の鐘の音が聞こえてきた

「多恵さん。まずは昼食をしっかり召し上げって下さい。これから時間はたっぷりありますから」

サリナさんに見守られその日のランチは最高に美味しいものになった。
次の来客まで少し時間があるのでサリナさんとお茶を頂きながら事件当日の話をします。

サリナさんは当日は別の職務に付いていて場内を移動していたそうです。
すると殺気立った騎士が来て説明もなく騎士棟の一室に連れて行かれ、そこには何故か宰相イザーク様がいらっしゃって、私に茶葉を用意したか聞かれ

「身に覚えが無い」

と答えると、説明のないまま部屋で待機するように言われる。そして7刻半にアーサー殿下が部屋に訪れ誘拐事件はあった事を知らされた。
サリナさんが知った時は犯人が捕まり、私が妖精城に連れて行かれた後だった。
未だ完全に疑いがはれていないサリナさんは、アーサー殿下が指示した部屋で監視の元休むことに。
そして翌日6刻頃アーサー殿下からライカさんに名前を利用されていた事を告げられ、やっと無罪放免となった。
直ぐに職場復帰しようとしたが、侍女長が無実とは言え疑われ精神的負担を考慮し、昨日までお休みになったそうです。

「多恵さんが戻られると聞いて直ぐ復帰したかったのですが、侍女長のお許しが出なかったのです。
休暇は反対にストレスになりました」

そう言い頬を膨らませるサリナさん。

「私の無実が分かり多恵さんもご無事だったので、安心したのですが、なぜライカさんが私を利用したのかが分かりません。
彼女とは仲は良くも悪くも無く普通に同僚でした。ライカさんが黙秘している今。今だ釈然としません」

サリナさんに心当たりは無いか聞いてみると

「…強いて言えば彼女はグラント様に好意を寄せていた事でしょうか。グラント様が多恵さんの伴侶候補になった事を聞いて落ち込んでいましたから」

出発前の熱い眼差しはそれだったんだ。

「騎士団が連日取調べでおりますので、近いうちに判明するでしょう。多恵様そろそろオブルライト公爵様がいらっしゃいます。ご用意を」

公爵様は初めてお会いします。
多分人見知り発動するわ。当たり前だけどグラント様のお父様だよね…… 今はあまり余計な事は考えないでおこう。無事に終わるといいけど…


先触れから少ししてオブルライト公爵様が来室されました。ど緊張してます。
入室されたオブルライト公爵様はイケおじで、お歳は私と同じ位のアラフィフぐらいでしょうか。
グラント様が歳をとったらこんな感じになるのかなぁ⁉︎

「御目文字叶っい光栄に存じます。オブルライト公爵当主クラーク・オブルライトと申します。
この度は家臣が女神の乙女で有らせられる多恵様に危害を加え、弁解のしようもございません」

公爵様は最敬礼をして謝罪を続けられます。

「本来なら家督を愚息に譲り王国に領地の返還等償うべきですが、多恵様もご存知の通り間もなく寒気により流行り病が猛威をふるいます。
故に領地が落ち着きましたら償う旨、陛下に陳情しております」

ご挨拶を受け

「謝罪をお受けしました。お頭をお上げ下さい。
多恵と申します。微力ながらオブルライト領の病予防をお手伝いさせていただきます。よろしくお願いいたします。色々お話したい事がありますので、まずはお掛け下さい。」

公爵様は安堵した表情をしてソファーにかけられます。

「多恵様は事件の詳細をお聞きになっておられますか?」
「はい。大まかにですが。一つ気になっているのですが、サマンサさんはどうなったのですか?誰も教えてくれないので…」

公爵様は苦々しい顔をして

「罪を犯した者の身を案じなさるのですか⁉︎多恵様はお優しいのですね。サマンサは今騎士団の地下牢に収監されていますが、精神的に不安定で話を出来ない事も多く事件解明に時間を要しそうです」

あーやっぱりあの時も色々おかしかったからなぁ…

「よかったです。こんな事言うの不謹慎ですが、私は落とし穴から出ていて、その後の部屋の様子を見ていないので、もしかしてその場で処刑されてしまったのではないかと…  恐くてですね… 聞き辛くて…」

すると表情を緩めた公爵様は

「やはりグラントが言うとおりのお人だ。多恵様が落とし穴に落ちた後に、殿下が自ら手を下そうとしましたが、グラントが止め一旦城に送る事になりました。サマンサはその場での処刑を求めましたが、グラントが多恵様が後で知ると悲しまれると、殿下を説得したのです。私がその場に居たなら殿下と判断をしたでしょう」

グラント様わかってる! 自分が関わった人が死ぬのは後味悪いし、きちんと事件の全貌が分かってからでも遅くないし罪を償う事もできる。
当事者としてはこうなった理由を知りたいから生きていてくれてよかった。

「ナタリー様は大丈夫ですか⁈ サマンサさんはナタリー様の侍女だと聞いていたので… ショックをうけられたのでは⁈」
「ご心配いただきありがとうございます。体調を崩し伏せっていましたが、昨日から普通の生活をしております」

すると何故か口籠る公爵様。少しの沈黙の後に意を決したように

「多恵様はヒューイ殿下とナタリーの婚約が決まった事をお聞きでしょうか⁈」

恐る恐る聞いてくる公爵様は申し訳無さそうだ。
全然OKなのに!寧ろそれがハッピーエンドなのだ

「はい!御婚約誠におめでとうございます!」

あれ?公爵様呆気にとられていますよ⁈
私は殿下に恋がれてませんからね!

「元々お2人は結ばれる運命だったのに、タイミング悪いリリスが、私を召喚しちゃうから話が拗れただけです。殿下も毛色変わった雌猫に興味を持って寄り道しただけです。
そういえば公爵家にもう1名寄り道中の方がいらっしゃるので、正規ルートに戻る様に軌道修正いただけると助かりますが」

公爵様は緊張がとれ穏やかな表情になり

「私はその者にはそのまま毛色の違う美しい猫を追かけ捕まえればいいと思っています」
「いや!一時の気の迷いですよ。いいのですが後継ぎでしょう⁈」
「息子を信じていますし、今息子の判断が正しいと確信いたしましたから」

『…これ以上はやめておこう。逃げ道無くなりそうだ』

話題を変えなっくっちゃ!
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