女神の箱庭は私が救う【改編版】

いろは

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21.男前登場

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【297年前。女神リリスの召喚により異世界より1人の女性が箱庭に現れた。名はレベッカ。緩やかなウェーブがかかった金髪にターコイズブルーの瞳が綺麗な女性だった。彼女が選んだドアは”黒のレッグロッド”。乙女を得たレッグロッド帝国は国をあげて歓迎しレベッカを迎えた。

この時代レッグロッドが抱えていた問題はレッグロッドの地形にあった。レッグロッドは切り立った山々に囲まれていて、隣接した国に向かうには険しい山道を数日かけ越えなければならない。
そしてレッグロッドは平地が少なく農産物の自給率は低く、農作物はモーブルから香辛料や海産物はアルディアからの輸入に頼っていた。

レッグロッドの主産物は鉱物と高地に自生する薬草である。レッグロッドで採れる宝石は純度が高く、他国の市場で高値売買された。しかし輸出は時間と人件費がかかる。

当時の王は乙女レベッカに解決を依頼した。
乙女レベッカは異世界の知識をもちいて、アルディア王国とモーブル王国に地下道をつなげ各国へ近道を作った。山越えをしなくなり移動時間は半分以下に。新鮮な食材が輸入されレッグロッド帝国の食文化は豊かになった。
そして高品質の宝石はモーブルの港から、また薬草はアルディアの港より他の箱庭に渡り外貨を得たのである。

レッグロッド帝国の発展に貢献した乙女レベッカは、当時の王弟ウィルソンと婚姻し、後にレッグロッド帝国筆頭公爵となり、レッグロッド帝国を支え続けた。
伴侶を得た乙女レベッカは2児に恵まれ、晩年家族に囲まれ幸せな生活を送り、65歳で生涯を終えた】

大まかな粗筋はこのようは内容で、関わった人物紹介や地下道の作り方、乙女レベッカが流行らせたファッション、メイクやスイーツが紹介されていた。

なんかすごい…私この箱庭を救えるか自信が無くなって来た… 参考どころか落ち込んで来た。

大きい掃き出し窓の外を見ながら遠い目をする。
テンション駄々下がりで、ソファーに両手を着いてあからさまに落ち込んだ。私の様子にマーカスさんとガイさんが慌てだす。

「多恵様。お疲れの様です。お部屋にお戻りを!
おイヤで無ければ、お部屋までお抱え致します!」
「へ?」

体調悪く無いよ⁈ 何か昨日せいで周りの人が過保護になってませんか⁈

もう少し書物庫に居たかったけど、マーカスさんの判断で部屋に戻ることなってしまった。お昼までは書物庫に籠ろうと思ってたのに…
重たい本はガイさんが持ってくれ、マーカスさんは私の右手をしっかりホールド中です。
ゆっくり本を選べなかったのと、テンション駄々下がりのダブルパンチで回復に時間がかかりそう。

それに只今強制送還の中です。廊下を進んでいくと廊下の先に文官さんと貴族男性が話をしている。

『うわぁ…知らない人』

迂回したいけどこの順路が部屋までの最短。絶賛過保護中のマーカスさんとガイさんは許してくれないだろう。

私は周りから人当たりがよく話しやすいと言われるが基本人見知りだ。気心知れない人との交流は極力避けるタイプで、視力が悪い事を理由にして気づかないふりをする事も多い。だから目の前の知らな人達を避けたかった。

『回避できそうにない』

更にテンションが下がる。もうテンションの底が見えてくるのではないか⁈ 文官さんが私に気付いて礼をしてくれた。それに気付いた貴族男性が振り返り表情を明るくしこっちに向かって来る。

『うっわぁ…面倒くさい』

上手く表情をつくらないと! 貴族男性は私の前までくると礼をして名乗った。

「お目にかかり光栄でございます。私は宰相補佐を務めておりますグラント・オブルライトと申します。先日の文によるご面会の願い失礼致しました。
またお受けいただき感謝いたします」

何と明日の面会予定のグラント様だった。
銀髪の長髪を後ろで一つにまとめ菫色のきれいな瞳をしている。私の萌えポイント銀縁の細いフレーム眼鏡が似合う美形。アーサー殿下を太陽とするならグラント様は月と言ったところか…

おっと見とれている場合ではない。ご挨拶しお辞儀をする。丁度よかった!明日の面会の要件を聞いておこう。

「グラント様。多恵様は体調が優れずお部屋にお戻りの途中故失礼いたします」

マーカスさんが戻りを促す。

「えっ?マーカスさん私は調子悪くないですよ!ただテンションが下がっているだけなので大丈夫です」
「昨日も事もございますのでご無理はいけません。お部屋に戻ります」

きっと殿下達に昨日第1騎士団の皆さんはお叱りを受けたな! 皆さん過保護過ぎです。

「マーカス殿。多恵様の身を案じられるは当然ですが、お心もお察しせねばなりませんよ。私には多恵様は未だお部屋には戻られたく無い様にお見受けいたしますが」

嬉しい援護射撃に思わず大きく頷く。グラント様は口元に手をやり小さく笑っている。その笑い方何処かで見たことあります。

「マーカスさん、ガイさん。殿下から何を言われたのかは分かりませんが、昨日の不調はたまたまです。そんなに私ひ弱ではありませんから、過剰な心配は不要です。私も凄く反省していますから同じことはしません」

そういい元気をアピる。そしてグラント様に聞きたい事があり、護衛のお二人に

「グラント様と明日のお話をしたいので、少し離れてお待ちいただけますか⁉︎」

強めの口調でお願いすると、不安そうな顔をしながらも距離を取ってくれた。

「グラント様。もしよければ明日の面会の目的をお聞かせいただけませんか⁈」

グラント様は驚いた表情をして

「オブルライト領地で毎年流行る病の話と愚妹事をお茶会の前にご承知おきいただきたく面会を希望いたしました」

和かに表情は作っているけど何を探っている様に見て取れる。

「私の気のせいでしたらすみません。私の為人を見極める為ですか⁈大切な領民を任せうる人物なのかどうかを…」

グラント様は必死に表情を作られていますが図星の様です。するとグラント様は右手を左胸に添えて深く頭を下げて謝罪をされます。

「多恵様にお詫び申し上げます。仰るとおりでございます。毎年我が領地では沢山の領民が病で命を落とします。いろいろと手を尽くしますが抑える事ができません。領地を治める者として信頼おけるお方なのか知っておきたかったのです」

やっぱりなぁ…

「いえ、謝罪は必要ありませんよ。女神リリスの召喚した乙女とはいえ、善人とは限りませんからね。領主として当然の事と思います。お茶会の席でしっかり見極めてください」
「多恵様…」

なんかグラント様の眼差しが変わりましたよ?⁈なんで?

「多恵殿!グラント!」

廊下の向こうからアーサー殿下がこちらに向かって来ます。走ってる?

『殿下~!廊下は走ってはいけませんよ!』と心で注意しておこう

「グラント多恵殿になんの用だ!」
「どうしましたか殿下? 私は明日多恵様と面会の機会をいただいたのでご挨拶していただけです」

私の肩を抱いたアーサー殿下は心配そうに

「多恵殿。此奴が迷惑をかけていませんか?」
「いえ、ご丁寧にご挨拶頂いていました。反対に私が失礼をしたかもしれません。グラント様失礼しました」

と頭を下げ詫びる。頭を上げたらグラント様に手を取られ手の甲に口付けされた。

「!」

突然の事で固まり赤面していると、反対の手をアーサー殿下に取られて殿下に引き寄せられた。

「多恵様。お時間いただきありがとうございました。では明日楽しみにしています」

グラント様は微笑んで颯爽と行ったしまった。何この状況? 殿下は去って行くグラント様の背中を見ている。

「あの…殿下…手を離して下さい」

恥ずかしいです。それにマーカスさんとガイさんが突然の殿下の登場に困っていますよ!
殿下は無言で手を持ち替えエスコートをし、そのまま部屋に向かい歩き出します。

『なぜに?』
「マーカス、ガイついて来い」
『だから何で?』

アーサー殿下を見ると難しい顔をしていて、質問出来る雰囲気ではない。

私何かしましたか?
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