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18.忙しい

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翌朝起きたくなくてベットでうだうだ中。
今日は嫌な事いっぱいの1日。

『”嫌”だからてん君やっつけてくれないかなぁ…』

なんてぼんやり考えていたら

『たえ いや なに?』
『っえ?てん君聞こえた?』
『たえ いや だめ』

どうやら”嫌”って言葉に反応するようだ。

『ありがとう。大丈夫だよ!本当に嫌な時は守ってね』
『わかった たえ… なでて⁈』

ほんのり左手甲が暖かくなる

左手を意識して『来い!』と唱えるとてん君はベットの上に現れた。

『あれ?』

てん君小さくなってない? もふもふしながら…

『てん君小さくなってない?』
『たえ なでなで なぃ』

撫で撫で回数=体の大きさ らしいです。 
昨日は色々有り過ぎて忘れてたけど、1日1回はもふってあげよう!

「おはようございます。多恵さんお目覚めですか⁈今日は朝から予定が入ってますので、そろそろ支度下さい」

てん君に戻ってもらいサリナさんに入室してもらう。

朝食を食べながら今日の予定を聞く。予定は…

3刻過ぎ マナーレッスン
3刻半頃 レックロッド宝石商と面談
4刻   昼食
4刻半  モーブルのデザイナーと面談
5刻半  ダンスレッスン

サリナさんが色々説明してくれますが半分も頭に入ってきません。無意識にブロックしてしまう。
身支度が終わりソファーで時間までのんびりしていると誰か来たようです。
文官さんが急ぎの手紙を持ってきた。基本文官さんが持って来る書類や手紙は宰相様のチェックが入ってるから安心です。ヤバいものはありません。

手紙はグラント・オブルライト様?から…誰?
サリナさんに聞いたら今度お茶会に出席するオブルライト公爵家の御嫡男様です。
さらにびっくりしたのがあのナタリー嬢のお兄様です。なんだろ…この手紙ヤバいんじゃーないの!
不安でサリナさんを見たら

「グラント様はアーサー殿下の御学友で公明正大なお方。宰相補佐をされ次期宰相と期待されているお方です。多恵さんか心配する様な事は無いと思いますよ」

『最近サリナさんに心を読まれる事が多いのは気のせいだろうか…』

そんな事を考えながら手紙を開封し読む。
内容は時候の挨拶から始まり突然の手紙の詫びと、お茶会前に一度面会を願う文章でした。

『面会って…何?こっ怖!』

固まっているとサリナさんが指示待ちしています。
悩んだ挙句サリナさんに手紙を読んでもらい、意見を貰います。サリナさんは手紙を読むと

「多恵さんがお嫌でなければお会いになられては⁈オブルライト家の話も聞けて、お茶会も安心できるのではないですか?」

確かにサリナさんの言う通りかもしれない。予備知識があった方が対応できるだろうし。
面会を決意しサリナさんにスケジュールの調整をお願いする。

そしてあっという間に時間が来てマナー講師がお見えになる刻になりました。

講師はダーナ侯爵家夫人ケイト様。私と同年代ぐらいだろうか。品のある知的なご夫人です。
挨拶し早速学ぶ。勉強なんて学校出て以来だ…始まってまだそんなに経って無いのにもう眠たい。
眠い目でサリナさんを見たら…

『!』

めっちゃこっち見ている。焦って姿勢を正し”勉強してます”をアピールしておこう。

「本日はありがとうございました。またよろしくお願いいたします」

やっとマナーレッスンの1日目が終わったよ。次は2日後です。
お茶休憩して直ぐにレックロッドの宝石商の方が来室されました。

元の世界でもアクセサリーは全く着けないし、もともと興味が無い。持っているアクセサリーは夫に貰った婚約指輪と母から成人した時に貰った真珠のネックレスとイヤリングだけ。

宝石商のおじさんは大きなトランクから宝飾品を取り出しテーブルに並べ始めた。
ダイヤ、サファイヤ、ルビーにエメラルド等、元の世界と種類も名も同じ様だ。私は5月生まれで誕生石はエメラルド。
やっぱり身に着けるなら誕生石エメラルドかなぁ…と小ぶりの首飾りを見ていたら

「オーランド殿下は首飾りにルビーを希望されております。こちらは如何ですか⁈」
「…ん⁈」

宝石商のおじさんはサリナさんに大きいなルビーの首飾りを渡し試着を促しています。サリナさんが戸惑いながら私の首に首飾りを着けて…

『おっ重い!なにこれ!』

唖然とする私を後目に宝石商のおじさんはイヤリングと髪飾りも目の前に用意している。両方とも大ぶりのルビーだ。

『何!このルビー推し!選んでって言ったのにルビー決定で出来レースじゃん!』 

思わず無表情で無言になってしまう。私の様子に気付いたサリナさんが静かに首飾りを外してくれました。宝石商のおじさんは

「このルビーはオーランド殿下の瞳の様に澄んでいるレックロッドの最高級品です」

と自信満々でプレゼンしてきます。今オーランド殿下のはにかんだ笑顔が浮かんだ。夫候補だしこれは受けないといけないパターンか… 

私が遠いところに逃避行している間に宝石商のおじさんは私の説得を諦め、次はサリナさんに猛アピールしています。サリナさんも可哀そうな状態です。

結果は宝石商のおじさんの一人勝ちでルビーの首飾り・イヤリングと髪飾りの3点セットに決まりました。但しさっきの首飾りは大きすぎるので、3点とも小ぶりのデザインに変更してもらいます。
変更せねば却下だ!アクセサリーは着けない!

宝石商のおじさんはやり切った様で満足気です。
次もルビー推しは嫌なので、好きな宝石は誕生石のエメラルドだと何度も何度も言いおじさんに復唱させました。


宝石商のおじさんが帰ったらどっと疲れ燃え尽きた。サリナさんは疲労を隠しながら昼食の準備をしてくれています。
昼食は野菜たっぷりのスープと私の好きなサンドイッチが出た。しかし、おじさんが強烈過ぎ疲れて味が分かりません。ふとサリナさんを見ると目を閉じて回復中のようです。昼から来るモーブルのデザイナーさんがまともな人である事を祈ります。


時間通りにモーブルのデザイナーさんが来ました。

『ん?MR.?Ms.?どっち?』

「お目にかかれ光栄でございます。女神の乙女様。
本日はグリード殿下の命を受け、ドレスの仕立ての打合せに参りました。生地も最高級の物をご用意してございます。出来うる限りご希望に添いますので、何なりとお申し付け下さい。私、モーブル王国専属デザイナーのゴードンと申します」

あっ!男性だった!でも中性的でめっちゃ綺麗!
女の私より何百倍も綺麗だよ!
ゴードンさんはデザイン画を見せてくれ、希望を聞いてくれる。良かった…ちゃんとした人みたいだ。
サリナさんもリラックスした表情している。

デザインはどれも素敵だったけど、この箱庭の女性が似合いそうなモノが多い。皆さん背が高く女性も170㎝は余裕である。
私はリリスが見栄え良くしてくれたけど、ぜいぜい160㎝程で多分似合わない。だから自分の好みでお願いしました。

肌露出は抑えてウエストを強調しないライン。スカート部分はボリュームを出さずロングフレアースカートの様なラインで。
スカート丈はダンスが不慣れだから足首が隠れる長さにしてもらった。今まで無いデザインらしくゴードンさんは「斬新だ!」と感動されています。
単にシンプルにしただけなんですが…

生地、飾、色はゴードンさんにお任せします。特に希望はありません。おっと忘れてた!アクセサリーがALLルビーなので、ルビーと合う色みでお願いします。

ゴードンさんはすぐに私の希望を聞いてデッサンします。プロだね~私の要望全て入ってるよ!
これなら安心して任せてられます!

「デザインはご希望通りにし、色見や生地はグリード殿下にお伺いし殿下の要望を取り入れます」

『ん?なぜグリード殿下が出てくる?』

頭に疑問符をつけていたら、ゴードンさんが説明してくれ

「乙女様はグリード殿下の妃候補故、殿下のお衣装とも合わせねばなりませんから!」

あー。ここでも夫候補だから受けなならんのか…
今私遠い目してますきっと…

ゴードンさんはサリナさんからアクセサリーのデザイン画を預かり、持ち帰ってドレスの参考にする様です。デザイン画を見たゴードンさんがぼそっと

「アクセサリーが小ぶりですね…」

呟いたけど聞かなかった事にします。
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