女神の箱庭は私が救う【改編版】

いろは

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11.静観

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「あの…妖精王の相手って私⁈」
「間違い無いだろう」

やっぱり⁈ですよねー。

「しかし!今回の召喚で選ばれたのは我がアルディアで妖精の国ではない。妖精王フィラ陛下にはその権利はありません!」

ヒューイ殿下が声を荒げる。

『あー。皆んな選ばれた国が乙女を独占出来ると思っているんだった』

ヒューイ殿下の発言納得。
なんか妖精王VSアルディアになりそうな雰囲気。詳しくは女神の台座でリリスから説明があるから、とりあえずこの場は穏便に治めるのが急務のようだ。

「陛下よろしいですか⁈」
「多恵殿。今は儂等しかおらん。気にせず申せ」
「ちなみに今日送った書簡ではいつ台座にいつ集まる様に提案したのですか?」
「10日後の4の刻に女神の台座に各国代表乙女の相手1名で台座に来るように連絡しておる」

この後陛下に台座でリリスからの説明があるまでは、何があっても静観してほしいとお願いする。

「詳しくは話せませんが、全ての箱庭の住人が幸せになる提案がリリスからあるはずですから」

私のお願いに皆んな微妙な反応。

「リリスは何か考えがお有りか⁈」

頷くと沈黙が続き…

「多恵殿の意見を尊重しよう。皆もしばらく静観せよ。ただし、妖精王は神出鬼没ゆえ多恵殿の護衛はこれまで以上に厳重に。多恵殿。しばし窮屈に感じるだろうが理解くだされ」

一応と返事したけど妖精王と遭遇した時は周りと隔離された(結界的な空間?)みたいだったから、護衛を増やしても妖精王がマジで来襲したら防ぐ術はない気がする。とりあえず…木の周りには近づかないでおきます。

妖精王フィラの出没から9日経ち女神の台座に集まる日が来ました。
あれから妖精王が現れる事は無かった。
ただ、時折りピンキーリングから光の玉が現れ私の周りをしばらく飛び回る事が何度があり、まるで偵察に来たみたい。
現れるタイミングは必ず私が1人の時(寝る直前が、多かった)だったので、皆さんには内緒にしている。だって言ったらそれこそ寝室にも騎士さんが常駐しそうだから…
あの日から当初護衛役の第1騎士団に加え第2騎士団からも護衛が付きました。どうやらヒューイ殿下が私の相手だから、自分の騎士団からも騎士を出したかったようだ。
ヒューイ殿下真面目すぎます…やや面倒臭いです。
なんて口が裂けてもいいません。

そして翌朝2刻の鐘の音で目が覚めた。
ベッドの周りを光の玉が飛び回っている。いつもに増して多いなぁ…って寝ぼけた頭で考えていたらサリナさんが扉越しに声をかけてきた。光の玉は慌てて窓の外へと消えて行く。

『いや…慌てて逃げなくてもサリナさんには見えてないよ』

そう思いながら光の玉達に労った。

「多恵さん。体調は如何ですか⁈」

サリナさんが日課の紅茶を入れてくれる。さわやかな柑橘フレーバーの紅茶を飲みながらサリナさんと他愛もない会話を楽しむ。

サリナさんに移動が多いので動きやすい服をお願いする。

「かしこまりました。…多恵さん…ちゃんと戻って来ますよね⁈」

唐突にサリナさんが聞いきてびっくりする。

『ん?』

どうやら女神リリスに会う事を何処で聞いたようで、私が他国か異世界に帰るのでは⁈という噂が王城で持ち上がっている様だった。
陛下情報漏洩していますよ。城内の情報管理大丈夫ですか!!

不安げな顔をしているサリナさん。お世話していただいているけど、最近では雑談する事も増えて友達のように接してくれていた。私くらいの年になると中々新しい友達って出来にくいから、サリナさんの存在は嬉しかった。
サリナさんも同じように感じてくれていると思ったら、うれしくてハグしちゃいました。照れるサリナさんかわいい!でも抱き付いたの(実年齢)おばちゃんでごめんなさい。

「6の刻までに戻るので美味しいお茶菓子お願いしますね」
「お早いお帰りを…」


とほほ笑んでくれた。

ひととおり準備が出来て部屋で迎えを待っているとヒューイ殿下が来た。
今日の護衛は各団から選ばれた精鋭騎士の混合チーム。やはり各国から王族が集まるので不測の事態に備えての事らしい。
集合場所に行くとアーサー殿下とトーイ殿下が待機されていました。なんかトーイ殿下が機嫌悪そうです。兄弟喧嘩ですか?


「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いします。今日は私も参りますので護衛はご安心を」

どうやらアーサー殿下も行くようです。いきなりトーイ殿下が私の手を取り

「多恵殿。私も行きたかったのですが、王城の守りが手薄になってしまうので、私は留守番になりました。残念です」

あ…機嫌悪かったのは留守番だからか…

「トーイ殿下。王城と陛下をお守りするのも大切なお役目ですよ」

と宥めたがまだ納得していないようだ。
今日は侍女さんは同行せず、代わりに第1騎士団の女騎士さんが私に身の回りをお世話してくれます。第1騎士団は王族の護衛を担う騎士団で、王妃様や王女様には女騎士が付くそうです。
今回付き添ってくれるのはアンリさん。スラっと背が高く薄茶色の切長の瞳にハニーブロンドの長髪をポニーテールにしたクールビューティさんです。

「今日1日よろしくお願いします」

とお辞儀すると騎士の礼を返してくれました。キレかっこよくて惚れてしまいそうです。

アンリさんのエスコートで馬車に乗り出発。
両殿下は騎乗して馬車に並走。ヒューイ殿下はまっすぐ前を向いていて、アーサー殿下は時々馬車に目線を送り、目が合うと手を振ってきます。行動で性格が分かりますね…

『ヒューイ殿下は硬派でアーサー殿下は軟派だな』

馬車の中ではアンリさんとガールズトークが弾み、退屈することも無くあっという間に女神の台座に着きました。さー今から大仕事です。

目的地に着くとすぐに騎士さん達がテントを張り拠点作りを始めます。流石訓練されている騎士さん達は見る見るうちにテントを組み上げていきます。

『うーん職人だ』

出来上がったテントで待機。数名の騎士が台座付近の偵察に行ってるからです。
殿下と私はアンリさんが入れくれたお茶で休憩中。
私はアーサー殿下がずっと話しかけてくるから、お相手をしています。しかしこの人いつもに増してよく話すなぁ…
対照的に緊張しているのかヒューイ殿下は一点を見つめ続けています。少し怖いです。

偵察に行っていた騎士さんが戻り報告を受けると、モーブル王国とレックロッド帝国も既に来ているそうです。
ヒューイ殿下と私も直ぐに台座に向かう事になった。

ソードリーフまでは殿下の愛馬ヴォルフで向かい、ソードリーフまで来るとここから歩きです。
殿下はテンギの皮のブーツに履き替えています。

『ん??』

私のブーツは?履き終えた殿下が

「多恵殿参りましょう」
「殿下!私まだブーツまだ履いていません。ブーツはどこですか?」

慌てて聞くと、とても爽やかな笑顔で…

「多恵殿は私が抱いて参りますので、心配ありませんよ。」
「!!」

なんですと!今なんて言ったこの人!

「いえ!ブーツが有れば自分で行けますから!」
「心配なさらなくても多恵殿は軽いから問題ありません。」

『重さの問題じゃないんだよ…』

恥ずかしいし台座には他国の王族の方が来てるのに抱っこされて登場とか無理…

「時間が有りません。参りましょう」

呆然としている間に抱き上げられた。顔に熱をもつ。殿下の満足げな笑顔が何か腹立つなぁ!
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