女神の箱庭は私が救う【改編版】

いろは

文字の大きさ
上 下
10 / 189

10.番

しおりを挟む
謎の彼が去って唖然としていたら、ロイドさんとジュードさんが慌てて駆け寄って来た。

「多恵様!ご無事でございますか⁈一瞬姿を見失ってしまい、申し訳ございません」
「大丈夫ですけど、何が起こったのか私にもよく分からなくて」

2人が警戒レベルMAXで部屋に強制送還される。
ジュードさんは部屋に戻る途中で他の騎士さんに何か指示をし、部屋の前まで来ると扉の前に今日の当番じゃない騎士さんがいる。
不思議に思いながら部屋に入るとアーサー殿下がいた。侍女のライカさんとエレナさんは緊張した面持ちで部屋の隅に控えている。

『何かありましたか?』

アーサー殿下にソファーに座る様に促され着席するとライカさんがお茶を淹れてくれた。
アーサー殿下が指示し侍女の2人は退室し、私の後にはロイドさんとジュードさんが控えている。
アーサー殿下が騎士2人に何があったか聞いていて、私はなぜアーサー殿下が来てるのか理解するのに時間がかかった。
そうか!私の護衛は第1騎士団が担いその団の責任者はアーサー殿下だった。一瞬とはいえ護衛対象を見失い、何もなかったとは言え問題みたい。それに私一応女神の乙女だし。

緊迫した空気の中、危機感のない私はのんきにお茶を飲んでいた。オリーブの木?で会った彼は謎だけど、何故か恐怖心は無かった。

『えっと男前でタイプだったからじゃないから
!』

何故か言い訳したくなった。すると黙って報告を受けていたアーサー殿下は眉を顰めて

「多恵殿何があったのですか?」

と私に質問してきたので、私はあったことを時系列で話す。出会った彼の特徴を話したらアーサー殿下は目を見開いた。そして髪が指輪になったと右手を見せると、左手を額に当て考え込んでしまった。

部屋の中の空気が重々しい。どうしていいか分からず、ヘルプして欲しくて後ろの2人に視線を向ける。でも2人の表情は固く反応はない。なすすべなく誰か話し出すまで静かにし、ふと右手のピンキーリングが目に入る。これって外せるのか試したくなって外してみる。

『ん⁈』

抜けない!キツくて抜けない訳では無く、はまった位置から動かないって表現が正しい。
いろいろ試してふと指輪を回した。その瞬間私の周りに光の玉が浮遊し始めた。その光の玉は何故か暖かく部屋の重い空気が解消してくれるようだ。光の玉に癒されているとアーサー殿下が私を真っ直ぐ見ている。 

「やはり妖精王か…」

アーサー殿下が呟きすぐにライカさんを呼び紙とペンを用意させ何か書き出した。書き終えると部屋外の騎士を呼び書き終えた紙を渡し指示を出すと、指示を受けた騎士さんはすぐ部屋を出て行った。

その様子をぼんやり見ていたら

「多恵殿。お疲れのところ申し訳ないが、今から陛下にお会いいただく。ロイド、ジュードもお前達も一緒に来い」
「今からですか⁈」

ちょっと疲れてて嫌なんだけど…拒否権はありますか? 返事が遅れると殿下は

「お疲れなら私が抱いてお連れしましょう!」

真剣な面持ちで言う殿下。

『!!』

そっそれって姫抱っこですか? 一気に顔が熱くなり

「あっ歩くの遅いですが、自分で歩けますから」

と断ると直ぐに手を差し出されてエスコートされてる。

『もぅ行くの⁉︎』

茶菓子食べときゃよかった。 

『すみません意味分かりません!誰か説明して下さい』

と言える訳もなくアーサー殿下のエスコートを受け、また遠い陛下の執務室を目指す。遠回りするからめっちゃ歩く…って考えいたら

「多恵殿。その木の下で出会った方とお話しましたか?」
「”近いうちに迎えに行く”っと言ってました。髪を指輪に変えたし、あの方は魔法使いや魔導士の類の方ですか?」

と質問すると真っ直ぐ見据えた殿下は

「詳しくは陛下の執務室で」

と答えてくれなかった。いつも飄々としたイメージの殿下だったから真剣な表情の殿下は新鮮。
暫く歩き廊下の角を曲がったところで反対側からトーイ殿下が護衛騎士と歩いて来るのが見えた。 

『あれ?あそこは陛下の執務室⁈今回は早かったよ⁈』

私の表情で気づいたのかトーイ殿下が

「多恵殿。執務室はここですよ!」

とイタズラに笑う。そんなに疲れた顔してますか?
入室許可受け執務室に入るとヒューイ殿下がいて、すぐに駆け寄り私の手を取り謝る。

「多恵殿。申し訳ありません。私が最後までお供をしていれば、貴女を危険な目に合わせなかったのに…」

いや…殿下が居ても一緒だったと思います。は言わんでおこう。そして陛下が咳払いをして着席を促す。
そしてアーサー殿下が説明を始め、一時的に私の姿を見失っな事を陛下に話し、ロイドさんとジュードさんに状況を説明させた。次に部屋で私がアーサー殿下に話した事と同じ説明を陛下にする事になった。

一通り説明が終わると陛下が

「やはり妖精王か⁈」

と呟くアーサー殿下は頷き、ヒューイ殿下とトーイ殿下は驚いていた。

「すみません。妖精王とは?ご説明頂けませんか⁈」

理解してない人ここに居ます!
アーサー殿下はロイドさんジュードさんを退室させ、座り直して徐に話し始めた。アーサー殿下の説明は…

箱庭にある4国の一つ”妖精の国”の王様で、女神リリスの助ける。この箱庭には妖精が存在し自然の維持を手助けしている。その妖精を守り統率するのが妖精王。現王は”フィラ”という男性の王だ。先代は女性で女王だった。

妖精王はこの箱庭の妖精の力の均衡を図り、妖力が多くなった妖精の力を吸い、反対に弱くなった妖精に妖力を与える役割を担う。
妖精の妖力を調整していくうちに、妖精王の妖力はいずれキャパオーバーを起こす。キャパオーバーすると妖精王の妖力は暴走し箱庭は大半を破壊してしまう。
キャパオーバーを防ぐ唯一の方法は子を儲けて力を子に分ける事だ。子を儲ける相手は人とされており、過去の妖精王も人の子と結ばれている。
本来妖精王が人と交流する事はほぼ無く、妖精王が人と接点を持つのは番が必要になった時だけ。
以上の話から妖精王は世継ぎが必要な時期に来たらしい。

『近いうちに迎えに行く』

って私番認定されてます⁈まさか…これもあってリリスは4つの国で子を儲けて欲しいって言ってたの?
無理強いはしないって言ってたけど、ほぼ(妖精王に関しては)拒否権なしじゃん!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~

ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ 以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ 唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活 かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった

ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。 しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。 リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。 現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

処理中です...