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2.召喚の儀
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「ヒューイ様…【女神の乙女】ってなんですか?」
ヒューイ様は重い私を抱えたままソードリーフの草原を軽やかに下りながら、私の質問に優しく答えてくれる。
「この世界を簡単に説明します。この世界は5人の女神によって作られ、女神それぞれが大陸をつくり、そこに生命を誕生させたといわれています。この箱庭は第三女神リリスがつくりました。
この箱庭には我がアルディア王国の他に、レッグロッド帝国、モーブル王国と妖精国があります。
他の女神もそうですが女神が手をかせるのは自然に関わる事のみ。
人同士の問題や病気や文明の発展には手をかせないのです。しかし人間は欲深く必ず揉め事が生じます。そして問題が続くとこの世界は人間によって破壊されてしまう。悩んだ女神はこの世界より文明が発達した異世界人を召喚する事にしたのです」
ラノベの様な話に頭がついて行かず、ポカンとしてしまう。そんな私を後目に話を続けるヒューイ様。
「女神リリスによって召喚された異世界人が男性なら”聖人”女性なら”乙女”と呼ばれる様になりました。この召喚は女神の神力をかなり消耗し簡単には行われません。前回の召喚は300年前と記録されています。そして召喚された乙女(聖人)は先程の丘の上に建つ女神の台座にお出ましになります」
「他にも沢山人がいましたが私が来るの分かってたんですか⁈」
ヒューイ様は左手を上げあるものを指さし私の視線を誘導する。そこには物見櫓らしきものがある。
「あそこから女神の台座がよく見えます。騎士か交代で常駐し、常に台座を監視しています。
前触れは乙女(聖人)の召喚される7日前に台座に扉が出現します」
どうやら私が開けた扉は召喚の扉だったのだ。さらに話を進めるヒューイ様。
「ドアは4枚。
黒い扉はレッグロッド帝国
黄い扉はモーブル王国
緑の扉は精霊国
我がアルディア王国は青い扉となります。
ドアノブが金色だと聖人(男性)で、銀色だと
乙女(女性)とされてます。
私も歴史書で読んだだけで、実際目にするまで半信半疑でした。それに今回の召喚は歴史書に書かれている手順と異なる事ばかりでかなり困惑しました」
《召喚》に興味を持ちヒューイ様に聞いてみる事した。すると
「女神の台座に乙女(聖人)が異界から召喚されると、扉は台座から離れて上昇します。そして乙女(聖人)が扉を選ぶと、選ばれてなかった扉は消失します。歴史書では選ばれる扉は1枚。ですが今回は2枚残りました」
『私が欲張って2枚同時に持ったからだ…』
“異例”は私が原因でした。それを言うべきか悩んでいたら
「台座にいた皆が呆気に取られていたら、1枚になる事なくそのまま降下を始めました。召喚作法では扉が台座まで下り、乙女(聖人)が自らドアを開けお出ましになるまで、ドアに触れてはならないと記述されています。
しかし、オーランド殿はドアの降下中に扉に触れたのです。触れた瞬間扉は消失しました」
『黒い扉が外から引っ張られたのは彼が触れたからなんだ…』
「それに…」
『ぇ!まだあんの?』
「本来台座に下った扉から乙女(聖人)がお出ましになるのに、降下の途中に貴女が扉から飛び出して来ました。台座のすぐ側に居たのでお助け出来ましたが、危うくソードリーフの上に落ちケガを負うところでした」
『あ~扉消えちゃうって慌てて飛び出しちゃたからかぁ… ヤバ!危うく血まみれだったんだ』
心の中でヒューイ様に感謝していたら
「レッグロッド帝国の内情を聞き及んでいます。
なんとしても乙女を得たかったのでしょう。
それにしてもオーランド殿下は若すぎる…」
そう呟いたヒューイ様は眉を顰めた。そして溜息を吐き
「しかし召喚は神聖な儀式だ。許される事ではない… 多恵様が気にされる事ではありません」
「って、言われても気になりますよ」
「多恵様はお優しいのですね…」
と笑顔を向けられる。微笑みを向けられ脳内で一人悶えていたら少し先に白馬が見えてきた。
その白馬はじっとこっちを見ている。大きく元の世界の馬より一回り大きい?感じがする。
「愛馬です」
紹介されたヴォルフは嘶くと鼻先を私の顔を近付けてきた。元々動物苦手な私は強張ってしまう。
「大丈夫ですよ。ヴォルフは雄にしては大人しい性格です。どうやら多恵様を気に入った様だ」
恐る恐るヴォルフを見ると優しい瞳と目が合い安心する。そしてヒューイ様が私をヴォルフに乗せようとしたので
「ヴォルフ…重くて申し訳ないけど乗せてね」
謝るとヴォルフは私の頬に顔を寄せてきた。
これってOKって事よね!
ヒューイ様にヴォルフに乗せてもらいさらに丘を下っていく。ソードリーフの草原を抜けしばらくすると平地に馬車と騎士らしき人たちが見えてきた。
騎士らしき人は10人ほどとメイドさんもいる! リアルメイドだぁ!!
あちらもこちらに気づいたようで歓声があがる。
「おぉ~!!我が王国は【女神の乙女】を得たぞぉ!!」
「これで王国は安泰だ~!」
何か熱烈歓迎と熱狂ぶりに苦笑い。
やっと馬車まで来ると騎士さんは整列し一番年長らしき騎士さんが一歩前に出て、右手を左胸にあて礼をしご挨拶いただく。
「お初にお目にかかります。私はアルディア王国第二騎士団副団長 クレイブ・ブローフと申します。こうして女神の乙女様をお迎えでき光栄でございます。王城までの道中我ら第二騎士団で護衛させていただきます」
丁寧なご挨拶にこちらも改まって
「高い所から失礼します。私は川原多恵と申します。“川原”が家名で“多恵”が名です。よろしくお願いします」
とお辞儀をした。顔を上げると騎士さん達の羨望の眼差しがイタい。
『私大した力ないよ…期待しないで…』
凄い視線にちょっと泣きそうになると、戸惑った私に気づいたヒューイ様が
「すぐ出立の準備を。日が暮れる前に王都に着きたい」
ヒューイ様の言葉を聞いた騎士さんは一斉に動きだす。ヒューイ様は靴を履いていない私を馬車に乗せ、メイドさんに私の身の回りを任せると先ほどのクレイブさんと話を始めた。
みんな帰り支度で忙しそうだ。ふかふかの座席に座って一息つくとどっと疲れが来た。ぼーっと放心状態。そこへメイドの女性が飲み物を持ってきてくれた。
「紅茶をご用意いたしましたが、お召し上がりになられますか?」
「ありがとうございます。いただきます」
温かい紅茶で一息…めっちゃほっこり。
メイドさんが冷えるからと外套と膝掛けをかけてくれた。更にほっこりし落ち着いて来たせいが色々疑問が出てきた。
私は転生したの?それとも転移したの?
ヒューイ様は重い私を抱えたままソードリーフの草原を軽やかに下りながら、私の質問に優しく答えてくれる。
「この世界を簡単に説明します。この世界は5人の女神によって作られ、女神それぞれが大陸をつくり、そこに生命を誕生させたといわれています。この箱庭は第三女神リリスがつくりました。
この箱庭には我がアルディア王国の他に、レッグロッド帝国、モーブル王国と妖精国があります。
他の女神もそうですが女神が手をかせるのは自然に関わる事のみ。
人同士の問題や病気や文明の発展には手をかせないのです。しかし人間は欲深く必ず揉め事が生じます。そして問題が続くとこの世界は人間によって破壊されてしまう。悩んだ女神はこの世界より文明が発達した異世界人を召喚する事にしたのです」
ラノベの様な話に頭がついて行かず、ポカンとしてしまう。そんな私を後目に話を続けるヒューイ様。
「女神リリスによって召喚された異世界人が男性なら”聖人”女性なら”乙女”と呼ばれる様になりました。この召喚は女神の神力をかなり消耗し簡単には行われません。前回の召喚は300年前と記録されています。そして召喚された乙女(聖人)は先程の丘の上に建つ女神の台座にお出ましになります」
「他にも沢山人がいましたが私が来るの分かってたんですか⁈」
ヒューイ様は左手を上げあるものを指さし私の視線を誘導する。そこには物見櫓らしきものがある。
「あそこから女神の台座がよく見えます。騎士か交代で常駐し、常に台座を監視しています。
前触れは乙女(聖人)の召喚される7日前に台座に扉が出現します」
どうやら私が開けた扉は召喚の扉だったのだ。さらに話を進めるヒューイ様。
「ドアは4枚。
黒い扉はレッグロッド帝国
黄い扉はモーブル王国
緑の扉は精霊国
我がアルディア王国は青い扉となります。
ドアノブが金色だと聖人(男性)で、銀色だと
乙女(女性)とされてます。
私も歴史書で読んだだけで、実際目にするまで半信半疑でした。それに今回の召喚は歴史書に書かれている手順と異なる事ばかりでかなり困惑しました」
《召喚》に興味を持ちヒューイ様に聞いてみる事した。すると
「女神の台座に乙女(聖人)が異界から召喚されると、扉は台座から離れて上昇します。そして乙女(聖人)が扉を選ぶと、選ばれてなかった扉は消失します。歴史書では選ばれる扉は1枚。ですが今回は2枚残りました」
『私が欲張って2枚同時に持ったからだ…』
“異例”は私が原因でした。それを言うべきか悩んでいたら
「台座にいた皆が呆気に取られていたら、1枚になる事なくそのまま降下を始めました。召喚作法では扉が台座まで下り、乙女(聖人)が自らドアを開けお出ましになるまで、ドアに触れてはならないと記述されています。
しかし、オーランド殿はドアの降下中に扉に触れたのです。触れた瞬間扉は消失しました」
『黒い扉が外から引っ張られたのは彼が触れたからなんだ…』
「それに…」
『ぇ!まだあんの?』
「本来台座に下った扉から乙女(聖人)がお出ましになるのに、降下の途中に貴女が扉から飛び出して来ました。台座のすぐ側に居たのでお助け出来ましたが、危うくソードリーフの上に落ちケガを負うところでした」
『あ~扉消えちゃうって慌てて飛び出しちゃたからかぁ… ヤバ!危うく血まみれだったんだ』
心の中でヒューイ様に感謝していたら
「レッグロッド帝国の内情を聞き及んでいます。
なんとしても乙女を得たかったのでしょう。
それにしてもオーランド殿下は若すぎる…」
そう呟いたヒューイ様は眉を顰めた。そして溜息を吐き
「しかし召喚は神聖な儀式だ。許される事ではない… 多恵様が気にされる事ではありません」
「って、言われても気になりますよ」
「多恵様はお優しいのですね…」
と笑顔を向けられる。微笑みを向けられ脳内で一人悶えていたら少し先に白馬が見えてきた。
その白馬はじっとこっちを見ている。大きく元の世界の馬より一回り大きい?感じがする。
「愛馬です」
紹介されたヴォルフは嘶くと鼻先を私の顔を近付けてきた。元々動物苦手な私は強張ってしまう。
「大丈夫ですよ。ヴォルフは雄にしては大人しい性格です。どうやら多恵様を気に入った様だ」
恐る恐るヴォルフを見ると優しい瞳と目が合い安心する。そしてヒューイ様が私をヴォルフに乗せようとしたので
「ヴォルフ…重くて申し訳ないけど乗せてね」
謝るとヴォルフは私の頬に顔を寄せてきた。
これってOKって事よね!
ヒューイ様にヴォルフに乗せてもらいさらに丘を下っていく。ソードリーフの草原を抜けしばらくすると平地に馬車と騎士らしき人たちが見えてきた。
騎士らしき人は10人ほどとメイドさんもいる! リアルメイドだぁ!!
あちらもこちらに気づいたようで歓声があがる。
「おぉ~!!我が王国は【女神の乙女】を得たぞぉ!!」
「これで王国は安泰だ~!」
何か熱烈歓迎と熱狂ぶりに苦笑い。
やっと馬車まで来ると騎士さんは整列し一番年長らしき騎士さんが一歩前に出て、右手を左胸にあて礼をしご挨拶いただく。
「お初にお目にかかります。私はアルディア王国第二騎士団副団長 クレイブ・ブローフと申します。こうして女神の乙女様をお迎えでき光栄でございます。王城までの道中我ら第二騎士団で護衛させていただきます」
丁寧なご挨拶にこちらも改まって
「高い所から失礼します。私は川原多恵と申します。“川原”が家名で“多恵”が名です。よろしくお願いします」
とお辞儀をした。顔を上げると騎士さん達の羨望の眼差しがイタい。
『私大した力ないよ…期待しないで…』
凄い視線にちょっと泣きそうになると、戸惑った私に気づいたヒューイ様が
「すぐ出立の準備を。日が暮れる前に王都に着きたい」
ヒューイ様の言葉を聞いた騎士さんは一斉に動きだす。ヒューイ様は靴を履いていない私を馬車に乗せ、メイドさんに私の身の回りを任せると先ほどのクレイブさんと話を始めた。
みんな帰り支度で忙しそうだ。ふかふかの座席に座って一息つくとどっと疲れが来た。ぼーっと放心状態。そこへメイドの女性が飲み物を持ってきてくれた。
「紅茶をご用意いたしましたが、お召し上がりになられますか?」
「ありがとうございます。いただきます」
温かい紅茶で一息…めっちゃほっこり。
メイドさんが冷えるからと外套と膝掛けをかけてくれた。更にほっこりし落ち着いて来たせいが色々疑問が出てきた。
私は転生したの?それとも転移したの?
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