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109.マルス
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正門から一際大きい馬車が入って来る。馬車の横には騎乗したバルカンさんが並走していて一瞬目が合った。婚姻し幸せ満タンなのか蕩ける様な微笑みを頂くと目の前がダークグレーに変わる。見上げるとミハイルが私の前に立っていて視界を遮っている。ほんとに嫉妬深いよね…
やっと視界が開けたら馬車が停まりバルカンさんが扉を開けている。そして
『!!』
前にも増して熊感が強くなったジャン陛下がお見えになった。ローランドの話ではジャン陛下に代わり他国との取引が増え、国は繁栄し豊かになっているという。ジャン陛下の理想は叶えられているようだ。威厳が出て来たから熊感が強くなったのかなぁ⁈
「あっ!!」
「「春香?」」「ハル?」
「髭だ!」
そう、前に会った時は髭は無かったのに今は立派な顎髭をたくわえてらっしゃる。すると笑いながらジャン陛下が前に来た。慌ててカーテシーをする。
「春香妃殿下。くくく…お変わりなく愛らしいな!」
「ジャン陛下。この度は私共のお披露目に参列いただきお礼申し上げます。国王とは言え我が妻にあまり馴れ馴れしくしないで頂きたい」
「殿下!陛下に失礼ですよ」
すると陛下は豪快に笑いローランドの手を握りぶんぶん振りながら
「相変わらず悋気が激しいな。加減を間違うと春香妃殿下に愛想を吐かされますぞ」
「心配には及びません」
のっけから濃すぎる…
するとまたバルカンさんと目が合う。そうだお祝いを言わないと
「陛下。バルカン様にご挨拶してよろしいでしょうか⁈」
「あぁ!構わない。良かったなバルカン。気にかけてもらって」
夫達が一気に機嫌が悪くなるのが背中に感じながらバルカンさんの前に出ると、バルカンさんは跪いて私の手を取り口付けた。
「「「!!」」」
『あっ…今説教部屋が行きが確定した…』
「またお会いできました事嬉しく思っております。この度はご成婚おめでとうございます」
「バルカンさんもお元気そうで何よりです。そうそう!バルカンさんこそご婚姻おめでとうございます。お幸せそうですね」
すると大きな溜息を吐いたバルカンさんが
「はぁ…ダメですね。妻を愛し婚姻しましたが、貴方に会うと封印した想いが戻って来そうになります」
「だっダメですよ!封印は解かないで下さい!」
するとローランドが後から抱き付きバルカンさんから遠ざけて挨拶を強制終了した。不機嫌な夫達と楽しそうな陛下と只管微笑むバルカンさん…
もうカオスな状態!すると宰相のモーリス様が来て陛下がお待ちだと割って入ってくれた。
「では、妃殿下。妃から荷と手紙を預かっておるのでお時間を頂きた」
「では時間調整は宰相補佐様にお願いしておきますね」
「よろしく頼む」
こうしてやっとヴェルディアのお迎えが終わり、この後続いて来城された国賓をお迎えし日が暮れる頃にやっと部屋に戻る事が出来た。夕食の前に湯浴みをし夕食は夫達と気楽にいただく。するとローランドが難しい顔をして聞いてくる
「春香。レイトン殿下はまた春香の知識を借りたい様だ。しかしレイシャル王国は今他国の助けはいらない。陛下の命で面談は断る事が出来ないが、アフルガンの望みを聞く義理も無く断っていいんだ。しかし春香は人の命に係わる事は助けたいのだろ?」
「う…ん。内容にもよるかなぁ。本当に命に係わる事と人の欲で望んでいる事は別だと思う。もし後者なら断るよ」
「やはりハルは聡いな。惚れ直すよ」
「それよりアフルガンの問題は何か知っているの?」
するとローランドは何故かとても言いにくそうで嫌な予感がする。
「・・・という訳だ」
「ローランド。面会事態お断りしていいかなぁ…」
「やはりか…」
私が断りたくなったのは内容だ。アフルガンの問題は王族に世継が生まれない事。第一王子は婚姻し妃もいるが子供が出来ないらしい。そして第2王子のレイトン殿下が期待されるが授かったのは女の子ばかり。アフルガンの王位継承権は王家の血を引く男児のみ。レイトン殿下は二人兄弟だが2人とも婚姻して何年も経つのに男児が生まれない。レイトン殿下が側室を沢山迎えるのは男児を儲ける為でもあるようだ。
そんな話男性に出来る訳ないでしょう!それに私は未経験だよ! 一応保健体育の授業で妊娠についての知識はあるけど詳しくは知らない。
「春香?大丈夫か⁈」
「うん。詳しくは知らいけど少しは知識はある。でもレイトン殿下にそんな話をするのも嫌だし聞かれるのは嫌だ」
「俺たちも春香が他の男が閨の話をすると思うだけで、相手の男を消したくなる」
「物騒だから止めてね」
ただ単に女好きかと思ったら世継ぎ問題があったのね。私もあまり知らないけど、前に職場の既婚の先輩が飲みの会席で出来やすいタイミングを教えてくれた。これは妊娠する目的では無くて避妊目的。その当時は喪女にそんな話必要ないのにって思っていた。詳しくは分からないがざっくりとならわかる。
でもあのレイトン殿下には話したくないなぁ…
その内コウノトリさんが運んで来てくれるよ。ちなみにこの世界でコウノトリ的は鳥はいるんだろうか⁈
夕食後はローランドは執務室に戻り、ミハイルとアレックスも町屋敷に戻っていった。部屋でまったりしていると女官さんが宰相補佐様から手紙を預かってきた。内容はジャン陛下との面談の予定だった。
明日の夕食を共にするそうだ。ローランドは他国の王族と会食があるらしく、ミハイルが一緒に行ってくれる。夫が一緒だと安心感が違う。ジャン陛下から出産予定の近いリリアン様の話が聞けるから楽しみだ。
すると女官さんがもう一通手紙を渡してくる。金の透かしが入った綺麗な封筒だ。裏返すとレイトン殿下の名が書かれている。
フリーズする私。これ勝手に読まない方がいいやつじゃん!困った…慌てて着替えて騎士さんにお願いしてローランドの執務室へ急ぐ。
「何かあったのかぃ春香⁈」
「ごめんなさい。お邪魔だよね⁉︎」
「いや、春香は最優先だから気にしないで」
よかったと胸を撫で下ろし早速レイトン殿下の手紙をローランドに渡す。差出人を見て顔を歪めるローランド。抱き寄せてちゅーして
「ありがとう。ちゃんて私に知らせてくれて。中を確認していいかぃ?」
「うん。お願いします」
私をソファーに座らせ従僕さんにお茶を頼んだローランドはデスクに座り手紙を読み出す。私は寝る前だから香りの優しいハーブティーをいただきほっこりする。
お茶をいただきながら手紙を読むローランドを見ていたらどんどん顔が険しくなっていく。このまま部屋に戻った方が良さそうだ。こっそりカップを置いて立ち上がり、護衛騎士さんを手招きし扉に向かおうとしたら…
「春香。どこに行くつもりだい⁈」
「えっと…眠くなったから部屋に…」
「ならば私が部屋まで運ぼう」
「ローランドは忙しいだろうから騎士さんに…っていないし!」
さっきまでいた騎士さんがいなくなっている。この展開は…まさかのお仕置き⁈
でも私悪い事してないよ!
するとローランドは私を抱き上げソファー座り膝の上に座らせた。
「ローランド⁈レイトン殿下の手紙はなんて?」
「半分以上が恋文で、最後に前の様に助けてほしいと懇願するものだった。小国が大国の王太子妃に求婚とは、彼奴はかなり阿呆らしい。それより春香が心配だ。春香には大した知識では無い事から、求められると応えてしまう。前にも言ったが安易な発言は揉め事を起こす。ミハイルにフォローする様に伝えるが、春香自身が発言する前に考えて欲しい」
「うん。わかった!微妙な時はお口チャックするわ!」
「ちゃっく?は分からんがそうしてくれ」
少しイチャイチャしてローランドはまだ仕事らしく私は騎士さんに部屋に送ってもらいすぐ眠りについた。
翌朝から夕方まで公務に大忙しであっという間に夕方になった。夕食はジャン陛下と共にするので湯浴みをし華やかなドレスに着替えて付き添いのミハイルを待つ。
「ハル!今日も愛らしい!はぁ…俺の妻は可愛すぎて心配でならん」
「平凡な私に心配なんて要らないよ」
「何を言うんだ。この世界でハル以上の女性はいない!」
「夫達の目が悪くて心配だよ私…」
いつもと変わらないやり取りをしながらジャン陛下の元へ急ぐ。
部屋には既にジャン陛下とバルカンさんが居て入室するとジャン陛下がハグをしミハイルの機嫌が悪くなる。ミハイルが咳ばらいをするとジャン陛下がミハイルに握手を求めて一応和やかに挨拶が終わる。食事が始まりヴェルディアの話を聞くと安定しており心配はなさそうだ。すると陛下が
「春香妃殿下に危害をくわえた者達は鉱山送りとし、監視の元で国の為に働いてくれている。妃殿下が危惧されていた人としての尊厳はちゃんと守られ、衣食住を与えているから安心して欲しい」
「ありがとうございます。安心しました。ですが…妃殿下はやめて下さい。堅苦しくて話しずらいです」
「では春香殿でいいかなぁ⁈」
「はい」
この後、前王(陛下のお父様)の話が出た。前王は対面的に急死扱いだが、ヴェルディア最北端の王家の別邸に前王妃と暮らし穏やかに余生を過ごしている。陛下曰く王から退きプレッシャーから解放された陛下はテクルスへの執着も無くなり、本来の聡明なお父様に戻られたそうだ。今は前王妃とラブラブらしくこちらも安泰。もうすぐお子も生まれるし万事OKな陛下は活き活きしている。
「バルカン。リリアンからの品と手紙を春香殿へ。リリアンは身ごもの為参列できない事を悔しがっておった」
「リリアン様と赤ちゃんは順調ですか?」
「あぁ…お子は元気でリリアンの腹を蹴るから時折リリアンが辛そうだ。きっと俺に似て大きく力強い子であろう」
「楽しみですね。いつかお目にかかりたいです」
「春香殿も早くお子を儲けるといい。男はお子が出来ると更に強くなるものだ。なぁ⁈ミハイル殿。其方もお子を望んでおるだろう⁈」
それまで無表情で私達の会話を聞いていたミハイルが蕩けるような微笑みで
「えぇ…勿論です。ハルの子は可愛いに決まっていますから…」
「おや!もしかしてもう新しい命が…」
「ない!ですから…」
まだ初夜すらクリアしてないのに出来る訳ないじゃん!今出来ていたら神の悪戯以外にないよ。焦っていると視界に荷物をもったままのバルカンさんが目に入り…ヤバぃ!待たせてた!直ぐに品を頂き従僕さんに預ける。
そしてデザートが出された時にジャン陛下が
「このマルスはリリアンの好物なのだが、我が国では寒すぎて栽培は不可能で輸入に頼っている。マルスは栄養価が高く病人や妊婦にいいのだが傷みやすく庶民まで届かない。自国で栽培出来ればいいのだが…レイシャルは温暖な気候ゆえマルスの栽培をしていると聞く。リリアンにお土産に沢山買って帰ろうと思ってな」
「あっ…」
またポロりしそうになって思わず両手で口を塞ぐと、ミハイルが察し話題を変えようとしたが鋭いジャン陛下が追及してくる。
「春香殿。何か策をご存じの様だが、やはり国益にかかわる事ゆえローランド殿下に止められておるな」
「・・・」
「分かった。陛下と殿下に許可をもらい聞くとする事にしよう。どこぞの阿保王子と違い私は礼儀を弁えておるゆえ無理に聞かぬ」
「ありがとうございます」
「それより気を付けられよ。アフルガンの問題は深刻だ。あの阿保は春香殿が手に入れは何でも解決すると思っておる。ミハイル殿!春香殿の周辺警護を強化された方がいい」
「陛下。助言感謝いたします。ローランド殿下は既に対策済みでございます」
「へっ?何?私知らないよ!」
どうやらレイトン殿下が来城してから私に影がついているそうだ。知らなかった!じゃぁ…部屋での私のアホな独り言も聞かれているの!そう思うと顔が熱くなり心配したミハイルが食事会を強制終了させ抱っこされ食事会場を後にした。陛下には後で謝らないと…
部屋に戻りミハイルが過剰に心配したが大丈夫と言って帰ってもらう。疲れたから早く寝たくて就寝準備を急いでやっとベッドに入ったら…
ローランドが来た!不気味な笑顔で部屋に入って来てベッドに近づくから思わす頭から布団を被って隠れる。…が!そんな抵抗も虚しく布団を剥ぎ取られて抱き上げられ居間に連行される。恐らくジャン陛下の食事会でのポロリ未遂の件だ。やっぱりミハイルがローランドに報告していた。
居間にはアレックスもいて2人に挟まれて座りボディタッチが激しく、まるで(行ったことないけど)三流のホストクラブに来てホストに接客されている気分だ。
「あの…もう寝たいんですが」
「春香!私に話があるだろう⁈」
「えっと…明日では駄目?」
「朝一にジャン陛下から面会が入った。恐らく今日の夕食時の話になるだろう。故に事前に知っておく必要があるんだ。話が終わったら添い寝してあげるから頑張って話そうね」
「いや要りませんから」
「殿下が嫌なら俺が一緒に寝てやろう。俺は難しい話はせずに只管愛すぞ」
「必要ないです。一人で寝ますから!」
「・・・」
諦めた…この押問答している時間が無駄だと悟り話をする…でも!取りあえず離れてくれなぃ⁈
やっと視界が開けたら馬車が停まりバルカンさんが扉を開けている。そして
『!!』
前にも増して熊感が強くなったジャン陛下がお見えになった。ローランドの話ではジャン陛下に代わり他国との取引が増え、国は繁栄し豊かになっているという。ジャン陛下の理想は叶えられているようだ。威厳が出て来たから熊感が強くなったのかなぁ⁈
「あっ!!」
「「春香?」」「ハル?」
「髭だ!」
そう、前に会った時は髭は無かったのに今は立派な顎髭をたくわえてらっしゃる。すると笑いながらジャン陛下が前に来た。慌ててカーテシーをする。
「春香妃殿下。くくく…お変わりなく愛らしいな!」
「ジャン陛下。この度は私共のお披露目に参列いただきお礼申し上げます。国王とは言え我が妻にあまり馴れ馴れしくしないで頂きたい」
「殿下!陛下に失礼ですよ」
すると陛下は豪快に笑いローランドの手を握りぶんぶん振りながら
「相変わらず悋気が激しいな。加減を間違うと春香妃殿下に愛想を吐かされますぞ」
「心配には及びません」
のっけから濃すぎる…
するとまたバルカンさんと目が合う。そうだお祝いを言わないと
「陛下。バルカン様にご挨拶してよろしいでしょうか⁈」
「あぁ!構わない。良かったなバルカン。気にかけてもらって」
夫達が一気に機嫌が悪くなるのが背中に感じながらバルカンさんの前に出ると、バルカンさんは跪いて私の手を取り口付けた。
「「「!!」」」
『あっ…今説教部屋が行きが確定した…』
「またお会いできました事嬉しく思っております。この度はご成婚おめでとうございます」
「バルカンさんもお元気そうで何よりです。そうそう!バルカンさんこそご婚姻おめでとうございます。お幸せそうですね」
すると大きな溜息を吐いたバルカンさんが
「はぁ…ダメですね。妻を愛し婚姻しましたが、貴方に会うと封印した想いが戻って来そうになります」
「だっダメですよ!封印は解かないで下さい!」
するとローランドが後から抱き付きバルカンさんから遠ざけて挨拶を強制終了した。不機嫌な夫達と楽しそうな陛下と只管微笑むバルカンさん…
もうカオスな状態!すると宰相のモーリス様が来て陛下がお待ちだと割って入ってくれた。
「では、妃殿下。妃から荷と手紙を預かっておるのでお時間を頂きた」
「では時間調整は宰相補佐様にお願いしておきますね」
「よろしく頼む」
こうしてやっとヴェルディアのお迎えが終わり、この後続いて来城された国賓をお迎えし日が暮れる頃にやっと部屋に戻る事が出来た。夕食の前に湯浴みをし夕食は夫達と気楽にいただく。するとローランドが難しい顔をして聞いてくる
「春香。レイトン殿下はまた春香の知識を借りたい様だ。しかしレイシャル王国は今他国の助けはいらない。陛下の命で面談は断る事が出来ないが、アフルガンの望みを聞く義理も無く断っていいんだ。しかし春香は人の命に係わる事は助けたいのだろ?」
「う…ん。内容にもよるかなぁ。本当に命に係わる事と人の欲で望んでいる事は別だと思う。もし後者なら断るよ」
「やはりハルは聡いな。惚れ直すよ」
「それよりアフルガンの問題は何か知っているの?」
するとローランドは何故かとても言いにくそうで嫌な予感がする。
「・・・という訳だ」
「ローランド。面会事態お断りしていいかなぁ…」
「やはりか…」
私が断りたくなったのは内容だ。アフルガンの問題は王族に世継が生まれない事。第一王子は婚姻し妃もいるが子供が出来ないらしい。そして第2王子のレイトン殿下が期待されるが授かったのは女の子ばかり。アフルガンの王位継承権は王家の血を引く男児のみ。レイトン殿下は二人兄弟だが2人とも婚姻して何年も経つのに男児が生まれない。レイトン殿下が側室を沢山迎えるのは男児を儲ける為でもあるようだ。
そんな話男性に出来る訳ないでしょう!それに私は未経験だよ! 一応保健体育の授業で妊娠についての知識はあるけど詳しくは知らない。
「春香?大丈夫か⁈」
「うん。詳しくは知らいけど少しは知識はある。でもレイトン殿下にそんな話をするのも嫌だし聞かれるのは嫌だ」
「俺たちも春香が他の男が閨の話をすると思うだけで、相手の男を消したくなる」
「物騒だから止めてね」
ただ単に女好きかと思ったら世継ぎ問題があったのね。私もあまり知らないけど、前に職場の既婚の先輩が飲みの会席で出来やすいタイミングを教えてくれた。これは妊娠する目的では無くて避妊目的。その当時は喪女にそんな話必要ないのにって思っていた。詳しくは分からないがざっくりとならわかる。
でもあのレイトン殿下には話したくないなぁ…
その内コウノトリさんが運んで来てくれるよ。ちなみにこの世界でコウノトリ的は鳥はいるんだろうか⁈
夕食後はローランドは執務室に戻り、ミハイルとアレックスも町屋敷に戻っていった。部屋でまったりしていると女官さんが宰相補佐様から手紙を預かってきた。内容はジャン陛下との面談の予定だった。
明日の夕食を共にするそうだ。ローランドは他国の王族と会食があるらしく、ミハイルが一緒に行ってくれる。夫が一緒だと安心感が違う。ジャン陛下から出産予定の近いリリアン様の話が聞けるから楽しみだ。
すると女官さんがもう一通手紙を渡してくる。金の透かしが入った綺麗な封筒だ。裏返すとレイトン殿下の名が書かれている。
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「いや、春香は最優先だから気にしないで」
よかったと胸を撫で下ろし早速レイトン殿下の手紙をローランドに渡す。差出人を見て顔を歪めるローランド。抱き寄せてちゅーして
「ありがとう。ちゃんて私に知らせてくれて。中を確認していいかぃ?」
「うん。お願いします」
私をソファーに座らせ従僕さんにお茶を頼んだローランドはデスクに座り手紙を読み出す。私は寝る前だから香りの優しいハーブティーをいただきほっこりする。
お茶をいただきながら手紙を読むローランドを見ていたらどんどん顔が険しくなっていく。このまま部屋に戻った方が良さそうだ。こっそりカップを置いて立ち上がり、護衛騎士さんを手招きし扉に向かおうとしたら…
「春香。どこに行くつもりだい⁈」
「えっと…眠くなったから部屋に…」
「ならば私が部屋まで運ぼう」
「ローランドは忙しいだろうから騎士さんに…っていないし!」
さっきまでいた騎士さんがいなくなっている。この展開は…まさかのお仕置き⁈
でも私悪い事してないよ!
するとローランドは私を抱き上げソファー座り膝の上に座らせた。
「ローランド⁈レイトン殿下の手紙はなんて?」
「半分以上が恋文で、最後に前の様に助けてほしいと懇願するものだった。小国が大国の王太子妃に求婚とは、彼奴はかなり阿呆らしい。それより春香が心配だ。春香には大した知識では無い事から、求められると応えてしまう。前にも言ったが安易な発言は揉め事を起こす。ミハイルにフォローする様に伝えるが、春香自身が発言する前に考えて欲しい」
「うん。わかった!微妙な時はお口チャックするわ!」
「ちゃっく?は分からんがそうしてくれ」
少しイチャイチャしてローランドはまだ仕事らしく私は騎士さんに部屋に送ってもらいすぐ眠りについた。
翌朝から夕方まで公務に大忙しであっという間に夕方になった。夕食はジャン陛下と共にするので湯浴みをし華やかなドレスに着替えて付き添いのミハイルを待つ。
「ハル!今日も愛らしい!はぁ…俺の妻は可愛すぎて心配でならん」
「平凡な私に心配なんて要らないよ」
「何を言うんだ。この世界でハル以上の女性はいない!」
「夫達の目が悪くて心配だよ私…」
いつもと変わらないやり取りをしながらジャン陛下の元へ急ぐ。
部屋には既にジャン陛下とバルカンさんが居て入室するとジャン陛下がハグをしミハイルの機嫌が悪くなる。ミハイルが咳ばらいをするとジャン陛下がミハイルに握手を求めて一応和やかに挨拶が終わる。食事が始まりヴェルディアの話を聞くと安定しており心配はなさそうだ。すると陛下が
「春香妃殿下に危害をくわえた者達は鉱山送りとし、監視の元で国の為に働いてくれている。妃殿下が危惧されていた人としての尊厳はちゃんと守られ、衣食住を与えているから安心して欲しい」
「ありがとうございます。安心しました。ですが…妃殿下はやめて下さい。堅苦しくて話しずらいです」
「では春香殿でいいかなぁ⁈」
「はい」
この後、前王(陛下のお父様)の話が出た。前王は対面的に急死扱いだが、ヴェルディア最北端の王家の別邸に前王妃と暮らし穏やかに余生を過ごしている。陛下曰く王から退きプレッシャーから解放された陛下はテクルスへの執着も無くなり、本来の聡明なお父様に戻られたそうだ。今は前王妃とラブラブらしくこちらも安泰。もうすぐお子も生まれるし万事OKな陛下は活き活きしている。
「バルカン。リリアンからの品と手紙を春香殿へ。リリアンは身ごもの為参列できない事を悔しがっておった」
「リリアン様と赤ちゃんは順調ですか?」
「あぁ…お子は元気でリリアンの腹を蹴るから時折リリアンが辛そうだ。きっと俺に似て大きく力強い子であろう」
「楽しみですね。いつかお目にかかりたいです」
「春香殿も早くお子を儲けるといい。男はお子が出来ると更に強くなるものだ。なぁ⁈ミハイル殿。其方もお子を望んでおるだろう⁈」
それまで無表情で私達の会話を聞いていたミハイルが蕩けるような微笑みで
「えぇ…勿論です。ハルの子は可愛いに決まっていますから…」
「おや!もしかしてもう新しい命が…」
「ない!ですから…」
まだ初夜すらクリアしてないのに出来る訳ないじゃん!今出来ていたら神の悪戯以外にないよ。焦っていると視界に荷物をもったままのバルカンさんが目に入り…ヤバぃ!待たせてた!直ぐに品を頂き従僕さんに預ける。
そしてデザートが出された時にジャン陛下が
「このマルスはリリアンの好物なのだが、我が国では寒すぎて栽培は不可能で輸入に頼っている。マルスは栄養価が高く病人や妊婦にいいのだが傷みやすく庶民まで届かない。自国で栽培出来ればいいのだが…レイシャルは温暖な気候ゆえマルスの栽培をしていると聞く。リリアンにお土産に沢山買って帰ろうと思ってな」
「あっ…」
またポロりしそうになって思わず両手で口を塞ぐと、ミハイルが察し話題を変えようとしたが鋭いジャン陛下が追及してくる。
「春香殿。何か策をご存じの様だが、やはり国益にかかわる事ゆえローランド殿下に止められておるな」
「・・・」
「分かった。陛下と殿下に許可をもらい聞くとする事にしよう。どこぞの阿保王子と違い私は礼儀を弁えておるゆえ無理に聞かぬ」
「ありがとうございます」
「それより気を付けられよ。アフルガンの問題は深刻だ。あの阿保は春香殿が手に入れは何でも解決すると思っておる。ミハイル殿!春香殿の周辺警護を強化された方がいい」
「陛下。助言感謝いたします。ローランド殿下は既に対策済みでございます」
「へっ?何?私知らないよ!」
どうやらレイトン殿下が来城してから私に影がついているそうだ。知らなかった!じゃぁ…部屋での私のアホな独り言も聞かれているの!そう思うと顔が熱くなり心配したミハイルが食事会を強制終了させ抱っこされ食事会場を後にした。陛下には後で謝らないと…
部屋に戻りミハイルが過剰に心配したが大丈夫と言って帰ってもらう。疲れたから早く寝たくて就寝準備を急いでやっとベッドに入ったら…
ローランドが来た!不気味な笑顔で部屋に入って来てベッドに近づくから思わす頭から布団を被って隠れる。…が!そんな抵抗も虚しく布団を剥ぎ取られて抱き上げられ居間に連行される。恐らくジャン陛下の食事会でのポロリ未遂の件だ。やっぱりミハイルがローランドに報告していた。
居間にはアレックスもいて2人に挟まれて座りボディタッチが激しく、まるで(行ったことないけど)三流のホストクラブに来てホストに接客されている気分だ。
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「えっと…明日では駄目?」
「朝一にジャン陛下から面会が入った。恐らく今日の夕食時の話になるだろう。故に事前に知っておく必要があるんだ。話が終わったら添い寝してあげるから頑張って話そうね」
「いや要りませんから」
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それは喜ぶべき縁談ではなかった。
断ることなったはずが、相手と関わることによって、
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