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68.愛称

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庭で草むしりしながらメリージェーンさんの訓練を見ている。木刀を振るメリージェーンさんはカッコいい!流石アビー母様の姪っ子だ。メリージェーンさんは背も高くスタイル抜群だ。バケツに入った雑草を持ちアビー母様とメリージェーンさんを見ていたら持っていたバケツを誰かが取った。横を見るとミハイルさんがバケツを持ってくれている。

「大丈夫。自分で運ぶから」
「ハルは重い物は持たなくていい」

皆んな過保護で私が何かしていると誰かしら手伝いに来る。運動不足だからせっせと動いているのに!

「運動不足解の為に家事してるのに手伝ってもらったら意味がないです!」
「何度も言うがハルは痩せすぎだ。もっと膨よかなっていい」
「だからって動かないとぷにぷにの締まりの無い体になるじゃないですか!」
「抱き心地良くて…あっいや!変な意味では無くてだなぁ!」
「ミハイルさんのエッチ!」

ミハイルさんを放置してアビー母様とメリージェーンさんの元に行き、私も木刀の扱い方を教えて欲しいとお願いする。少し二の腕や背中を引き締めたい。

「…」結局木刀の扱いは教えてもらえなかった。

「春香ちゃんはそのままが一番かわいいから何もしなくていいの」
「でも、動かないから締まりがなくてぷにぷになんですよ!母様の様に引き締まった格好いい体になりたい!」

するとメリージェーンさんが汗を拭きながら

「春香さんの背格好で私たちの様に引き締めるとバランスが悪いですよ。私はその女性らしい体は羨ましいけど…」
「うっ!でも運動不足はやっぱり体に良くないから」
「ならば散歩相手に犬でも飼う?」

どうやら鍛えるのは駄目みたいだが運動はいいみたい。そういえば領地の屋敷に居る時は暇だとワンダと走っていたなぁ…ワンダ元気かな⁈
母様は父様に相談してくれるそうだ。ワンダみたいな大型犬もいいけど、柴犬あたりの中型犬もいいかもしれない

ヴェルディアの出発まで町屋敷でのんびり過ごしている。あと2日後にはヴェルディアに行く事になる。はぁ…正直しんどい…
それにヴェルディアから帰ったらミハイルさんとの婚約解消するかを決め、付き合わせに参加するかもしくは帰るかを決めないといけない。
これに関しても気持ちがまだ揺らいでいて決めれていない。忙しいのを言い訳にしている。

「春香ちゃんそろそろ屋敷に戻ってね!」
「はぁ~い」

取りあえず今は先送りにして今は自分をお休みしよう。

その日の夕食時ミハイルさんが驚くことを言い出した。

「ハル。明日朝一に領地の港町に行くよ。俺と2人で」
「へ?何で?」
「先に行き殿下達とは現地で落ち合う」
「でも…」

急展開で頭が付いて行かない。あたふたしているとレイモンド父様が

「ずっとミハイルは春香と離れていたからね。そこに来てまたヴェルディアに数日行くとなると、また時間が取れない。春香も婚約解消するかの決断が近いんだ。ミハイルとゆっくり向き合うといい」

どうやら父様の許しが出ているようだ。アレックスさんをみたらレベル2だが反対はしていないみたい。まずは私とミハイルさんと公爵家の騎士数名で明日朝一領地の屋敷に向かいその日は屋敷で泊まる。翌日朝一で港町に向かいデートしてその日の夕方に来る殿下達と合流する事になった。

後で母様に聞いたがミハイルさんが父様に直談判したそうだ。コールマン領でアレックスさんと殿下と長く過ごし、自分には私と過ごす時間が少ない。もうすぐ付き合わせの時期も来るから、その前に向き合う時間が欲しいと…
確かにミハイルさんとデートもしていない。殿下とアレックスさんとはコールマン領の街でデートらしい事は確かにしたんだよね…トラブル付だけど。
港町ってなんだか楽しいそう。海が見れるのかなぁ⁈スケジュール的には大変なはずなのにわくわくする。

「じゃ!早速荷物を…」
「ハル大丈夫だ。エリスに頼んであるから何も心配いらないし、必要な物は港町でも十分揃えれるよ」
「はぁ…い」

またまた私の知らない間に色々決まっていて準備も出来ている。こうゆう事は事前に知らせて欲しいのが本心なんだけど…皆さんの顔を見ていたら言い出せなかった。
食後の後にアレックスさんがお茶に誘ってくれた。一瞬ミハイルさんが眉を顰めたが何も言わないので応じる。サロンに行くと隣に座り手を握って来る。

「何かありましたか?」
「いや、ミハイル殿の気持も分かるから納得したのだが…初めてなのだこんな気持ちは…これを悋気やきもちと言うのだなぁ…」

びっくりしてアレックスさんの顔をまじまじと見る。この人普段から甘い雰囲気が無いから偶に繰り出す激甘なセリフに驚くことが多い。

「しかし、春香はそろそろどうするか決断しなければならないから丁度いいのかもしれない…と今一生懸命自分に言い聞かせているんだ」
「アレックスさん…」
「春香。俺はお前に想いを告げている。”さん”呼びは距離を感じるからやめてくれ。“アレク”と呼んで欲しい。俺を愛称で呼ぶのは殿下だけだ。…いやまだ居た!母上だ。しかし親だから…。それはいい!春香は俺の特別だから呼んで欲しんだ」

突然のお願いリクエストに苦笑いし

「えっと…多分急には無理で…頑張ってみます」
「あぁぁ…でも今一度呼んでみてくれないか!」
「いっ今ですか⁈」

一気に全身から汗が噴き出す。目の前のアレックスさんは色気たっぷりな微笑みで私を見ている。緊張で挙動不審になる私…これはスルー&パスは出来なさそうだ。『よし!!』腹をくくる!

「あ…あれく?」
「あぁぁ…今最高に幸せな気分だ。春香抱きしめていいか?」
「うっうん」

アレックスさんはふんわりと優しく抱きしめる。私の顔が丁度アレックスさん胸にくる。するとアレックスさんが強く抱きしめた。
耳がアレックスさんの胸に押し当たる。

『!!』

アレックスさんの鼓動は早くつられて私もドキドキしてきた。

「明日ミハイル殿と出かけても春香の心の中に俺を置いてくれ…」
「うん」

暫く抱きしめられていたら背後から咳払いが聞こえ次にアレックスさんの舌打ちが聞こえる。

「春香様。明日の出発はお早いのでそろそろお部屋にお戻り下さい」
「はい。んっ?あれ?」
アレックスさんは腕を解いてくれない。

「アレックスさん?そろそろ戻るので…」
「春香。もう忘れたのか?」
「へ?」

そうアレックスさんは愛称呼びをご所望なのだ。でもやめて!クリスさんの前で恥ずかしいよ。
実は私の記憶が飛んだあの日からアレックスさんとクリスさんは明らかに仲が悪くなった。記憶の無い私には理由が分からない。聞いても2人共教えてくれないのだ。

「・・・あ・・れく 部屋に戻るから離して…」
「分かった」

アレックスさんは腕を緩め頬に口付け立ち上がっると、クリスさんが手を差し出したが、それをアレックスさんが払う。

「レイモンド様から春香様を部屋まで送るよう仰せつかっています。アレックス様はお部屋にお戻りを…」

あ…雰囲気が悪いよ…誰か!

そこにメリージェーン様が通りかかった。やった救世主発見!

「メリージェーンさん。一緒に部屋に戻って下さい!」
「えっ?あっはい。構いませんが…」

2人におやすみの挨拶とお辞儀をしてメリージェーンさんの腕にしがみ付く。
部屋へ続く廊下を歩きながらメリージェーンさんに謝り静かな廊下を話しながら歩いていたら直ぐに部屋に着いた。メリージェーンさんにお礼を言い部屋に入る。ソファーに座りリラックスしながら、あの二人が仲直りする方法は無いのか色々考えたが思い浮かばない。記憶が戻れば解決策も見つかるのだろうか⁈
そんな事を考えていたら11時になっていた。早く湯浴みをして寝ないと朝は3時半出発だ。急いで就寝準備をしベッドに潜り込んで寝んだ。


翌朝早く起きて身支度をしていたらエリスさんが来た。

「今日はこのワンピースをお召ください」

ハイウエストで少しボリュームのあるクリーム色のロングワンピースだ。着替えて食堂に行くとレイモンド父様とアビー母様がいて一緒に朝食を頂く。
食べ終わりお茶を飲んでいたら父様に呼ばれた。父様の席に行くと見た事ある皮袋を渡された。嫌な予感が…

「えっと…これって…」
「お小遣いだよ。港町は他国の品を扱う店が多い。買い物を楽しむにはいい街だ。好きなものを買って来るといい。足りなくなったらミハイルに言えばいい」

めっちゃ重い!中を見るのが怖いけど確認しないと…お礼を言ってそっと袋を開けたら…

『ひぇ!』

皮袋いっぱいに金ぴかの金貨が入っている。こんなの怖くて持ち歩けないよ…半泣きになりながら

「父様…こんな大金怖くて持ち歩けません!この1/10で十分です」
「春香ちゃん!ならばミハイルに持ってもらいなさい。領地でミハイルに手を出す馬鹿者はいないから」

色々断る理由を述べたが結局断り切れずいただく事に…本当にお2人とも過保護だ。お小遣いは領地の屋敷と町屋敷の皆さんのお土産に使う事にしよっと! すると食堂にミハイルさんが迎えにきた。
ミハイルさんに急かされ用意をし今馬車の前にいる。父様、母様とアレックスさんとメリージェーンさん。そしてクリスさんをはじめ屋敷の使用人の皆さんが見送りに集まってくれた。
皆さんにご挨拶し出発します。

ミハイルさんは上機嫌で私の横で私を抱きかかえています。元々無口なミハイルさんだからあまり会話は無いけど居心地はいいので苦にならない。
高めのミハイルさんの体温でやっぱり眠くなって来た。
目がしょぼしょぼしてきた私に寝てていいというミハイルさん。これで安心して寝れるわ…
この後直ぐに寝てしまった。しかしこのうたた寝の夢見が悪く嫌な思いをする事になる。
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