『時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜』《番外編》 愛情過多な父を持つと大変です!

いろは

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4.二番目

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『二番目セカンドラブね…』

興味深々の兄達を目の前に思い出していた。
あれは確か…アフルガンのレイトン陛下が第1王子を連れて来た時の事だ。
父様達は求婚して来たアフルガンの王子と私を会わせたく無くて私をコールマン領に避難させた。

「そんな事もあったなぁ…アリサが幾つの時だ?」
「確か10歳よ。母様と目線が同じくらいになっていたから」


父様達は他国の王子の訪問の連絡を受けると、理由をつけ断ったり港を封鎖する強行手段に出ていた。
しかしその時は事前連絡も無くアフルガンのレイトン陛下が来て、対応ができず迎え入れる羽目になったのだ。
私はアレク父様とショーン兄様と一緒にコールマン領に滞在する事になった。

「あの時は母様がメリージェーンおば様の所にフレッドと行っていて、止め役が居なかったんだよ」
「母様がいたら一喝していたなぁ」
「私は楽しかったわよ」

急ぐ為馬車では無くアレク父様の馬に乗せられ移動となった。アレク父様は国王であるローランド父様を護る騎士だけあり逞しい。父様の腕の中は心地よく、夫にするなら騎士がいいとこの時は思っていた。

王都からコールマン領に行くには一泊する必要がある。常宿のトムソンお爺さんの宿に着くと何故かバーミリオン侯爵家嫡男のザイラス様がいた。

「お目もじが叶い光栄に存じます。殿下にはこの様な宿は相応しくなく、ぜひ我が屋敷にご招待したく参りました」

途端にアレク父様とショーン兄様の眉間の皺が深くなる。母様がここにいたらレベルを教えてくれるのに… 私はまだアレク父様とショーン兄様の眉間の皺レベルの判別は難しい。

「まずは侯爵殿にお礼をお伝え下さい。ですが我ら急いでおり明日も早朝出発故に遠慮いたしますと」
「失礼ですが伯爵の貴方がお断りになられるのか⁈」
「…」

ザイラス様はアレク父様に威圧的な態度で詰め寄る。ザイラス様は私の8歳年上で子供の私でも分かる色っぽさだ。綺麗な茶色の瞳に目元の黒子が色っぽい。でもこの時彼は美形だが父様達や兄様達には敵わないと思っていた。
すると馬車からもう1人男性が降りて来た。名告りを受けなくても分かる。バーミリオン侯爵様だ。ザイラス様に似ていてとても背が高い。そしてやっぱり色気がある。

「やはりザイラスでは役不足の様だ。アレックス殿久しなあなぁ…。春香王妃様は一緒では無いのか?
残念だ。聡明で美しい王妃とお会いしたかった。是非我が侯爵家のお茶会にご参加いただきたいと伝えてくれ」

『お前のお茶会に我が妻を参加させる訳ないだろう!』
「父様?」

アレク父様の地を這う様な独り言に驚き父様を見上げたら、父様は微笑み額にちゅーをくれた。そして私をショーン兄様に任せてバーミリオン侯爵に対峙する。

「ご招待に感謝いたします。が先程ご子息にも説明致しましたが、明日早朝出発故にご迷惑となりましょう。アリサ殿下もこの常宿を気に入っておられる。また余裕の有る時にはお受けましょう」

顔は笑っているのに目が笑っていないバーミリオン侯爵様。アレク父様が振り返り私に

「アリサ殿下はトムソンの宿とバーミリオン侯爵の屋敷。どちらに泊まりたいですか? 私供は殿下のご意向に従います」
「トムソンお爺さんのポトフが食べたいからいつもの宿がいいです。侯爵様。ごめんなさい。またね」

返事をするとショーン兄様は頭を撫でてくれ、アレク父様は抱きしめてくれた。
貴族らしく優雅に挨拶して引き下がった侯爵様だが、明らかにアレク父様に敵意剥き出しだ。そんな険悪な雰囲気の中、ショーン兄様が私を背に庇ってくれている。ショーン兄様は長兄だけあり、真面目でいつも冷静でカッコいい。
兄様の広い背中に見惚れていたら、ザイラス様に声をかけられる。

「アリサ殿下。次の建国祭の舞踏会では、是非私にエスコートさせていただきたい」

またアレク父様とショーン兄様の眉間の皺が深まる。えっとこんな時は母様がこう言いなさいって言ってた…

「私はまだ未熟故、陛下にお任せしております。お誘いいただけるなら陛下にお願いいたします」
「それでは!」

すると声を荒げたザイラス様を侯爵が制し、胸に手を当て丁寧な口調で

「バーミリオン侯爵家から正式に陛下に申し込みいたします。アリサ殿下の伴侶候補に我が息子ザイラスをお入れいただきたい」
「母様と相談します」

こうしてやっとバーミリオン侯爵様とザイラス様は帰って行った。
アレク父様を見上げたらやっと微笑んでくれる。いつも厳しい表情のアレク父様が微笑むと嬉しい。母様もアレク父様の事を

『厳しい様で実はとても優しいのよ』

と言っていたのがよく分かる。
やっと皆んなが一息吐くと宿から恐る恐るトムソン爺さんが出てきてハグしてくれる。やっとポトフが食べれる!

「コールマン領に向かうと必ずバーミリオン侯爵が来るのよね… トムソン爺さんの宿前でバーミリオン侯爵とやり合うの恒例になってるわね」
「バーミリオン侯爵家は代々しつこく粘着質な者が多い」

そう言い毎度相手をするアレク父様は溜息を吐く。
今回もお誘いを断りトムソン爺の宿に泊り、熱望のポトフをお腹いっぱい食べ満足し寝んだ。
そして翌朝宿で作ってもらったサンドイッチを受け取り、コールマン領を目指し早朝に出発する。途中小川近くて休憩し遅めの朝食をとる。護衛の騎士達も一緒に食べ楽しい。みんな小さい頃から護衛してくれているから、おじさんや兄の様な存在だ。

順路の確認に行っていた騎士のマークが野薔薇を摘んできてくれた。城にある薔薇より香りが強く可愛らしい。気分よく休憩を終え出発します。
後少しでコールマン領だ。するとアレク父様が

「コールマン領に入ったら恐らくグリフが迎えに来るだろう」
「グリフが?」

すると並走するショーン兄様が

「グリフは母様匂いが分かるらしく、母様がコールマン領に入ると必ず迎えに来るんだ。そして俺達兄弟からも母様の匂いがするらしく恐らく…」

そう言っているうちにコールマン領に入った。暫く走ると急に陰り見上げると2匹のグリフが上空を飛んでいる。

「ショーン兄様!」
「あぁ…やっぱり来たなぁ!」

グリフは私達の上を旋回しついてくる。こうして無事にコールマン領に入り、屋敷に到着するとお祖父様とお祖母様が迎えてくれた。
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