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第7章 獄窟
第38話 親仇
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幸せそうに、腹をさするパオラ。その様子をフロアーで伺っていたアリーシャがベストのタイミングでまかないを運んでくる。
「まかないのかやくご飯よ」
普通の茶碗に薄茶色の炊かれた米が盛られている。具はニンジン。シイタケ。コンニャク。油揚げ。鶏肉とシンプルだ。
淡い色のそれは、出汁と塩だけで炊かれていた。そして、同時に配膳された寸胴型のお銚子には湯気が立つ出汁が注がれている。注ぎ口の付いた湯呑のような形だ。
薬味は海苔とワサビ。そしてネギ。
「これはどうやって食べるの?」
「ノアさんは好きに食べたらいいって。でも半分をそのまま食べて残りに薬味を乗せて出汁をかけて食べていたね」
パオラもそのまま真似をする。
なるほど、出汁と塩で炊いた米は甘みさえ感じ食材は風味豊かだ。米が土台となり各々の食材の良さを支えている。
そして薬味と出汁をかやくご飯にかける。
――――と!
一口目は薄く感じた出汁が、二口目を誘う。絶妙な塩梅。止まらず進んだそれは名残惜しさと共に完食となった。
またひょっこりクラーラが顔を出す。
「たまらんのよ。無限に食べられるの。――悪魔的でしょ? お代わりはどうですか?」
「そうね。大盛りでお願い」
「あいあい!」
クラーラは以前ノアがふざけてやっていた手の平を見せる敬礼と言葉を真似て厨房へと戻る。
そのお代わりはもう一度オーダーされた。
「ふぅ~。久しぶりに食べ過ぎたかしら」
そうひとりごちるパオラに悪魔の声は楽し気に届いた。
「デザートはミルクレープです。フリーオーダーでカットするのでサイズ指定して下いね」
そこにはワンホールをトレーにのせたクラーラの姿。
食べたいけれど、自分の限界は何処か? ギリギリのラインを選んだパオラはその日、親の仇を取るかのような顔でケーキを食べきった。
「まかないのかやくご飯よ」
普通の茶碗に薄茶色の炊かれた米が盛られている。具はニンジン。シイタケ。コンニャク。油揚げ。鶏肉とシンプルだ。
淡い色のそれは、出汁と塩だけで炊かれていた。そして、同時に配膳された寸胴型のお銚子には湯気が立つ出汁が注がれている。注ぎ口の付いた湯呑のような形だ。
薬味は海苔とワサビ。そしてネギ。
「これはどうやって食べるの?」
「ノアさんは好きに食べたらいいって。でも半分をそのまま食べて残りに薬味を乗せて出汁をかけて食べていたね」
パオラもそのまま真似をする。
なるほど、出汁と塩で炊いた米は甘みさえ感じ食材は風味豊かだ。米が土台となり各々の食材の良さを支えている。
そして薬味と出汁をかやくご飯にかける。
――――と!
一口目は薄く感じた出汁が、二口目を誘う。絶妙な塩梅。止まらず進んだそれは名残惜しさと共に完食となった。
またひょっこりクラーラが顔を出す。
「たまらんのよ。無限に食べられるの。――悪魔的でしょ? お代わりはどうですか?」
「そうね。大盛りでお願い」
「あいあい!」
クラーラは以前ノアがふざけてやっていた手の平を見せる敬礼と言葉を真似て厨房へと戻る。
そのお代わりはもう一度オーダーされた。
「ふぅ~。久しぶりに食べ過ぎたかしら」
そうひとりごちるパオラに悪魔の声は楽し気に届いた。
「デザートはミルクレープです。フリーオーダーでカットするのでサイズ指定して下いね」
そこにはワンホールをトレーにのせたクラーラの姿。
食べたいけれど、自分の限界は何処か? ギリギリのラインを選んだパオラはその日、親の仇を取るかのような顔でケーキを食べきった。
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