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第7章  獄窟

第37話  福腹

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 マスターは執務室に併設された仮眠室のベッドに横になると、たちまち眠りに落ちた。それを見届けパオラは静かに一階の食堂へと向かった。

 予定のあった商会との打ち合わせが終わったこの時間は、中途半端でいていた。

「いらっしゃい。パオラさん。こんな時間に珍しいわね」

 フロアー担当のアリーシャがいつものように朗らかに声をかけてくれる。

「あっ! いらっしゃい。パオラさん」

 その声を聞き取ったのか、調理のリーダーのクラーラが厨房からひょっこり顔を出す。

「今日のメニューは?」

 それにクラーラが、元気に飛び上がり答える。

「えっと! ナシゴレン。ガパオライス。あとね。醤油ラーメンだね。餃子セットもあるよ。スープは野菜とミネストローネだね」

「じゃあ。サラダは?」

「えぇっとぉ~ お通しが揚げ豆腐のサラダなんだよ」

「へぇー。美味しそう。――――じゃぁ。今日のまかないは?」

「ふっふっふっ! ノアさん新作レシピのかやくご飯! たまらんのよぉ~」

 少し悩んだパオラはオーダーを決めた。

「ナシゴレンとガパオライスのMIX。ラーメン中盛り麺カタ。餃子半チャンセット。まかないもね」

「はぁーいっ!」

 クラーラが元気よく返事をする。ツッコミ不在で事態は動く。

 まずはお通し、手のひらサイズの器に盛られた揚げ豆腐のサラダ。彩も鮮やかで醤油をベースにした酸味の効いたドレッシングが食欲を誘う。

 パオラがそれを半分程食べたところで次の料理が配膳された。

 米にしっかり味を付けて炒められたナシゴレンの隣には、ガパオの挽肉がのった白いライスが同居する。良く焼いた目玉焼きは両方に二つ。通常より大皿に盛られたMIXだ。

 ガパオの白飯はナシゴレンさえおかずとなりパオラの口に運ばれる。そのためそれの減りが速い。

 少し汁物が欲しいなという絶妙なタイミングで中盛り麺カタのラーメンが配膳される。

 鶏ガラの香りに混ざりネギの匂いを移した鶏油チィーユが食欲を掻き立てる。そして、パオラはやっとできるようになったすすりでズズズと麺を吸い込む。

 麺が伸びないように半分ほど食べたら、スープをレンゲで口へ運びMIXを片付けにかかる。

 味の変化で口が喜んでいる。MIXを口に運び、麺を啜り、スープを飲む。そのローテーションでMIXが無くなる頃、届けれたのは半チャンギョーザセット。

 香味の強いMIXに比べるとチャーハンは安定の醤油味だ。焦げた米と卵が風味を増幅する。そして、味覚をリセットする餃子。ニンニクとニラのダブル主演だ。

 チャーハンが無くなる頃にはラーメンのスープも飲み干していた。

「今日も幸せ美味しかった」

 ふぅぅっ~とお腹をさするパオラ。
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