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第7章  獄窟

第24話  少年

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 ――――時は遡る。

 少年は生まれた時からその施設にいた。幼い頃には姉がいたが、いつの間にか一人になっていた。

 白で染め上げられたその場所は定時に食事が出される以外変化のない部屋だった。濁った思考でぼんやりと壁を眺め一日を過ごす。

 そして、たまに訪れる変化と言えば定期的に行われる少年には分からない数々の検査だ。

「検体――――は、治癒能力がB+。五歳を迎えて目ぼしい職業に就かなければ鉱山送りになるな」

 言葉を教えられていない少年はその意味が分からない。

 彼らの提供させる食事には思考を濁らせる薬品が使用されていた。

 そして五歳になったその日。少年の職業は――。その日少年の廃棄が決定した。

~~~

 ――――それから七年後。

 最低限の栄養と棒で叩かれながらの持久走や運動を重ね、体格と力を増す為だけの時が経つち、鉱山送りという流刑が実行に移された。

 同年代の少年達がぎゅうぎゅうに押し込まれた騎獣車で連行されてゆく。そこに並ぶ顔は一様に無頓着で生気がなく平坦だ。

 これから一生をそこで過ごすことになる彼らにとってそれは救いだったのか、それとも先に下された罰だったのか。

 鉱山へと抜ける山脈の路で騎獣車が脱輪し谷底へと転落する。あわやというところで御者はまろび降りて九死に一生を得た。

 だが、少年たちは天地が回る衝撃で、そこら中に叩きつけられ血反吐にまみれる。


 そして――落下した衝撃で騎獣車が粉砕した。四角い形は潰れて平坦だ、残骸といってもいい。

 そこに生き残った者はいない。

~~~

 ――――数刻後。

 騎獣車の残骸から仄かな光が漏れている。

 すると惨状の後から瓦礫を払い立ち上がる者がいる。周りには頭に毛の無い大きな鳥がたむろしていた。

 血と内臓物でバリバリになった身体を不快そうにしながら、少年はその場から逃げ出した。

 少年の躰は奇跡的に痛みがなく万全だ。谷は深く見上げても険しく絶望的な高さだった。

 しかたなく前に進む。

 泥水をすすり岩ばかりの谷を歩いて数日が経った。いつもの濁った思考は晴れ、空腹と不安のないまぜになった強度のストレスにより逃げるように先へと急ぐ。

 ようやく少年は森に辿り付いていた。だが、豊かな森には危険があった。捕食者――――狼の姿だ。
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