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第7章 獄窟
第6話 隠里
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世界樹のゲートを潜り辿り着いたエルフの森をパオラはウェンに先導されて進む。
視界が開けると前方に雄大な巨木が屹立として映る。限界まで見上げてやっとその頂上を確認できるほどだ。
これ程の高さなら外からも森の間隙からも見えたはずだが、この場に立って初めてその圧倒的な存在が忽然と現れる。
そして眼前に広がるのは想像よりも人間的な里の風景。建物は土と樹を混ぜたような見た事も無い材質で、当たり前のように自然と植物が共生している。
一尋の歩道と真っ直ぐ伸びる広い車路は白っぽい茶色、その両脇にも植栽が整えられており、管理された庭園、或いは絶妙なバランスで配された、巨大な盆栽を思わせる。
「初めに錬金術の塔へ行って、大師へお目通りになる。楽しみにしておいて、だけど気負わずにいつも通りで構わないわ」
そうウェンから話かけられた。
その光景に圧倒されていたパオラは、我に返り返事をした。
彼女は白亜の塔へと案内される。
~~~
――――三日後
真っ白な騎獣が牽く車に乗り、パオラはそこへ案内された。ウェンとベリリが同行者だ。
「――これから向かう場所は世界樹の祠と呼ばれている場所よ。役を終えた精霊が帰る処とされているわ。それ故に精霊の力が強くて、新しい精霊が顕現しやすいところなの」
役を終えた。つまりエルフと契約した精霊が、その死により役目を務めから解放されたという意味だ。
「そこで、貴女は精霊柱に見定められる。資格が認められれば精霊と契約を果たすことができるはずよ」
「――精霊柱というと、あの真顕したと伝えられる伝説の存在ですか?」
パオラはルルから伝え語られたその名の意味を確認する。
「そう伝えられているわね。――驚くから覚悟はしておいてね」
そう言ってウェンは悪戯っぽく笑った。
「覚悟……何に備えれば良いのでしょうか?」
「ウフフ。それはお楽しみ」
精霊は世界の力が集まり顕現する。あるいはノアのように分霊によって顕生する。そして神世の時代にはその神気が集まり真顕を果たす精霊がいた。
それが精霊柱と呼ばれる存在。精霊を友とするエルフですら深く敬う精霊の守り神だ。
ベリリは座して語らず目をつむり無想を貫く。
騎獣車はゆっくりと止まった。
パオラは決意の眼差し口を結び、魂を見定める選定の儀へと向かった。
視界が開けると前方に雄大な巨木が屹立として映る。限界まで見上げてやっとその頂上を確認できるほどだ。
これ程の高さなら外からも森の間隙からも見えたはずだが、この場に立って初めてその圧倒的な存在が忽然と現れる。
そして眼前に広がるのは想像よりも人間的な里の風景。建物は土と樹を混ぜたような見た事も無い材質で、当たり前のように自然と植物が共生している。
一尋の歩道と真っ直ぐ伸びる広い車路は白っぽい茶色、その両脇にも植栽が整えられており、管理された庭園、或いは絶妙なバランスで配された、巨大な盆栽を思わせる。
「初めに錬金術の塔へ行って、大師へお目通りになる。楽しみにしておいて、だけど気負わずにいつも通りで構わないわ」
そうウェンから話かけられた。
その光景に圧倒されていたパオラは、我に返り返事をした。
彼女は白亜の塔へと案内される。
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――――三日後
真っ白な騎獣が牽く車に乗り、パオラはそこへ案内された。ウェンとベリリが同行者だ。
「――これから向かう場所は世界樹の祠と呼ばれている場所よ。役を終えた精霊が帰る処とされているわ。それ故に精霊の力が強くて、新しい精霊が顕現しやすいところなの」
役を終えた。つまりエルフと契約した精霊が、その死により役目を務めから解放されたという意味だ。
「そこで、貴女は精霊柱に見定められる。資格が認められれば精霊と契約を果たすことができるはずよ」
「――精霊柱というと、あの真顕したと伝えられる伝説の存在ですか?」
パオラはルルから伝え語られたその名の意味を確認する。
「そう伝えられているわね。――驚くから覚悟はしておいてね」
そう言ってウェンは悪戯っぽく笑った。
「覚悟……何に備えれば良いのでしょうか?」
「ウフフ。それはお楽しみ」
精霊は世界の力が集まり顕現する。あるいはノアのように分霊によって顕生する。そして神世の時代にはその神気が集まり真顕を果たす精霊がいた。
それが精霊柱と呼ばれる存在。精霊を友とするエルフですら深く敬う精霊の守り神だ。
ベリリは座して語らず目をつむり無想を貫く。
騎獣車はゆっくりと止まった。
パオラは決意の眼差し口を結び、魂を見定める選定の儀へと向かった。
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