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第6章  罪咎

第27話  認識

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 戦いをまとめにかかった黒狼くろおおかみは自らが作り出した岩を足場に飛び回った。

 俺には黒狼が三匹に見える。

(ツンツク。アレ何匹に見える?)

(へ? 一匹でやしょう?)

(あの位の速さで動けるの?)

(丁度、倅があの位でやすね)

 身内にもかなわない奴がいたな。まぁ。器用貧モブ乏は自認しているが。

 青鎧は受けるので精一杯。これで決まりかな。

 その時必殺を期した黒狼の一撃を青鎧が間一髪で躱した。牙がかすめ頭を覆っていたフルヘルムが飛ぶ。


 ――え?

 ――ジョシュアさん?

 それと共に放たれる起死回生の攻撃。ジョシュアさんの身体が霞む程の速度で黒狼にぶちかます。

 轟く雷鳴。黒狼は身体に稲妻を帯電させて、大量の血液を口から吐き出した。

 ジョシュアさんは足を引きずり黒狼へと近づくとさっき突き刺した首の傷を広げるように頭を切り落とす。

 そして、剣を支えにうずくまり動かなくなった。

(ツンツク。回復の霊薬をその人に頼む!!)

(へい。がってん)

 ツンツクの足首のアイテムボックスから回復の霊薬が出されジョシュアさんに当たって霊薬を振りまいた。


 ――と

 切り落とされた黒狼の頭から虹色にぬめり輝く黒い蝶がしみ出てくる。

 ――っ!

(ツンツク! その蝶を攻撃! 全滅させてくれ!)

 俺の言葉でツンツクが蝶を攻撃するが、不快なそいつらは空間を支配する程の数が現れた。ツンツクの無数の風刃は蝶を切り裂く。だが、ジョシュアさんと頭の距離が近すぎる。

 ちくしょう! 『集閉くん』は俺しか持っていない。俺は飛翔魔法で現場へ急ぐ。

 ツンツクの攻撃も虚しく。とうとう、いくつもの蝶がジョシュアさんに貼り付くのが見えた。

 ――焦燥が胸を焼く。

(ジョシュアさん無事で!)

 夥しい数の蝶が消えるとジョシュアさんがゆっくりと立ち上がる。

 ――くそっ! よく知っている眼だ。だが、顔は穏やかで微笑んでいるようにも見える。

 そしてジョシュアさんは近くを飛ぶツンツクに切りかかった。

(――ツンツク。離脱! 上空から監視)

 その言葉を受けてツンツクは急上昇して上空を旋回した。

 動く対象のいなくなったジョシュアさんは、風のように素早く滑らかにその場からいなくなった。

(ダンナ。ひと当てしてみますかい?)

(大丈夫だ。見失わないように頼むよ)

(がってんでさぁ)

 ジョシュアさんは森の動物を手当たり次第に切りかかる。

 俺は奥歯を噛みしめた。

 『暴発くん』はダンジョン兵器だという思い込み。

 あの闘いが『暴発くん』の起こした事だと考えていなかった。他人事だと思って傍観していた。それが、思考を放棄させたんだ。

 よく考えろシュバインさんを狂わせた側面があっただろう。
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