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第6章 罪咎
第8話 沈黙
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その鍛冶屋はノルトライブのギルド近くに居を構える。
店の主であるドワーフは、今まさに出て行ったノアを見送ると急いで奥へと引っ込んだ。
そこで黒い箱を起動して王都の首長の元へと連絡を入れる。
プープーと呼び出し音がなり、相手から応答があった。
「――はい。王都のアナザラス」
女性の声だ。
「ノルトライブのボトヴィットです。――ヘルヴィ様ですか?」
「そうよ。ガンソは席を外しているわ。……どうしたの?」
「えぇ。実は先ほどまで侵不が来ていました。そのご報告です」
「ノア君が? 道具を買いに来たの?」
「いえ。何か言いたい事は無いのか? と確認されました」
「……確認? どういう意味かしら?」
一門に連なるボトヴィットはガンソの妻であるヘルヴィへその概要を説明した。
~~~
重厚な扉が開き呼び鈴がカラコロと音を立てる。
店のカウンターにはドワーフの男が立っていた。
180cmを超える身長と広い肩幅に分厚い躰。手足は人間より二倍ほどでかい。
――名をボトヴィットという。
呼びかけるでもなく入って来た人物へと眼を向け、眉を上げた。
そこにはドワーフよりも身長の高いノアが立っていた。
ノアは店内を見回す事も無く、真っ直ぐにボトヴィットの前へとやって来る。
そして、こう切り出した。
「どうも初めまして、ノアと言います。少しこの街を離れますので、もし何か言いたい事があるなら伺いますが?」
「……どういう意味だ?」
ノアはそう答えたボトヴィットの眼を揺るがず見返す。その心を推し量るように。
「この頃、頻繁に私の周りに姿を現し、観察していましたね? その様子が何だか声をかけたそうでしたので、こちらから声をかけさせて頂きました」
ノアは表情を変えずにそう言った。
ボトヴィットがノアの周りに姿を表していたのは、スタンピード発生前の時期だ。
「……」
「雄弁は銀。されど沈黙は金と言います。あなたの沈黙は金に値しますか?」
「……」
ボトヴィットは口をつむぐ。告げたい言葉はガンソに縛られている。
「今回が一度目です。少し離れますが、もう一度この都市へは戻ってきます。その時が二度目。そして、最期の機会になります。もうここを離れますので、それまでに選ぶ色を決めておいて下さい。それを伝えに来ました」
もうこの店に来ることは無いと告げてノアは出て行った。
それを見送りボトヴィットは肝を冷やして息を吐き出す。
(あれが、侵不。――絶界の弟子か)
怒りも戦意も何も無い。ただそこに立っているだけで、位の違いに慄然とした。
店の主であるドワーフは、今まさに出て行ったノアを見送ると急いで奥へと引っ込んだ。
そこで黒い箱を起動して王都の首長の元へと連絡を入れる。
プープーと呼び出し音がなり、相手から応答があった。
「――はい。王都のアナザラス」
女性の声だ。
「ノルトライブのボトヴィットです。――ヘルヴィ様ですか?」
「そうよ。ガンソは席を外しているわ。……どうしたの?」
「えぇ。実は先ほどまで侵不が来ていました。そのご報告です」
「ノア君が? 道具を買いに来たの?」
「いえ。何か言いたい事は無いのか? と確認されました」
「……確認? どういう意味かしら?」
一門に連なるボトヴィットはガンソの妻であるヘルヴィへその概要を説明した。
~~~
重厚な扉が開き呼び鈴がカラコロと音を立てる。
店のカウンターにはドワーフの男が立っていた。
180cmを超える身長と広い肩幅に分厚い躰。手足は人間より二倍ほどでかい。
――名をボトヴィットという。
呼びかけるでもなく入って来た人物へと眼を向け、眉を上げた。
そこにはドワーフよりも身長の高いノアが立っていた。
ノアは店内を見回す事も無く、真っ直ぐにボトヴィットの前へとやって来る。
そして、こう切り出した。
「どうも初めまして、ノアと言います。少しこの街を離れますので、もし何か言いたい事があるなら伺いますが?」
「……どういう意味だ?」
ノアはそう答えたボトヴィットの眼を揺るがず見返す。その心を推し量るように。
「この頃、頻繁に私の周りに姿を現し、観察していましたね? その様子が何だか声をかけたそうでしたので、こちらから声をかけさせて頂きました」
ノアは表情を変えずにそう言った。
ボトヴィットがノアの周りに姿を表していたのは、スタンピード発生前の時期だ。
「……」
「雄弁は銀。されど沈黙は金と言います。あなたの沈黙は金に値しますか?」
「……」
ボトヴィットは口をつむぐ。告げたい言葉はガンソに縛られている。
「今回が一度目です。少し離れますが、もう一度この都市へは戻ってきます。その時が二度目。そして、最期の機会になります。もうここを離れますので、それまでに選ぶ色を決めておいて下さい。それを伝えに来ました」
もうこの店に来ることは無いと告げてノアは出て行った。
それを見送りボトヴィットは肝を冷やして息を吐き出す。
(あれが、侵不。――絶界の弟子か)
怒りも戦意も何も無い。ただそこに立っているだけで、位の違いに慄然とした。
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