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第5章  流来

第90話  終章Ⅰ ~種は目指す~

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 ―――王都

 ネスリングスで、ビビアナとクローエは、遠い空の親友を案じる。

 旅立ちから一年半が経ったが、ノアを経由して手紙が届かない。

 毎日やって来るウェンから、その事情はおおよそ聴いているが、それでも心配は尽きなかった。

「ウェン師は、会えない時間が育てるものもあるって言っていたけれど。ノアちゃん。エステラの事を特に気にしてなかったよね?」

「エステラの一方的な感情だったわね。オーナーはちゃんと聞いて受け止めていたけど。身内へのアドバイスとして、接していた感じだからね」

「だから、思うのよ。エステラの方の感情が、時間と共に育ちゃって、ノアちゃんがあの時のままだったら、どうなると思う?」

「どうなるのだろうね?」

「――勢いあまって」

「んっ? ――勢いあまって?」

「――押し倒しちゃうかも?」

 そう言ったビビアナに、クローエは否定の言葉をかけようとした。

 だが、思い込むと一途なエステラが、抱え込み育てた思いはどうなるか想像し、ビビアナを見つめ返す。

 クローエは可愛らしく、口を縦方向に小さく開ける。

 正面に映るビビアナも同じ表情で、顔を見合わせている。

 二人は頷くとキャーと叫んで抱き合った。

 そこへ醸造部門を束ねる、姉のヘレナがやって来る。

 いつものように、まとめた濃いグレーの髪を揺らし、黒のワークキャップできめていた。

「――また、騒いでいるの? あんた達、本当に仲がいいわね。――これが言われていた蜂蜜酒ミードよ。持って来たわ」

「ヘレナ。ありがとう。それ、料理に使うとコクが出て美味しいのよね」

 そう言ってビビアナは蜂蜜酒ミードを受け取った。

「あんたらの料理はどれも旨いから、文句はないが、蜂蜜じゃダメなの?」

「蜂蜜でもいいのだけれど、やっぱりコクが違うのよ。ノアちゃんのレシピにもできれば蜂蜜酒ミードと書いてあったからね」

「そんなもんなの? 後で食べさせてくれるとうれしいわ。じゃあね。バルサタールさんのところにも配達なの」

 そう言って、ヘレナは出て行った。


§


 場所はネストの屋台料理の下準備をするキッチン。

 そこで、代表のネビルは大量の大根を下茹でしている。

 ケィンリッドが収穫した旬の大根だ。

 ネビルはノアの言葉を思い出す。
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