247 / 403
第5章 流来
第82話 臨終
しおりを挟む
「――だから、地球人は面白い」
魂に響く声が聞こえた。
(――誰だ? 幻聴か? ……夢か?)
「好きに解釈すればいい。――妄想でも一応、僕の話を聞いてくれるかな?」
(……)
「君の一族は、祖が僕の居る世界の者でね。こちらの世界からの要望で遣わしたことがある。その者が消えるときに、この世界に送った人生の借りに僕の居る世界に戻るか聞いたんだ。その者が望んだのは、子に人生をやり直したいものが居たら、代わりにその借りを使って欲しいという事だった」
(……)
「あれから三,〇〇〇年。終ぞ、その願いを唱える者もいなかったが、ようやく君が現れた。ふふふっ。――まさか、自分ではなく他人の人生を願うとは思わなかったがね」
男性が願ったのは、唯一愛した女性の事。
自分の生きた八九年のうち半分でも、彼女に時間をあげられたら、最期にそう願った。
「でも、残念ながら借りは一人分だ。その女性に新たな生を与えると、君にはその権利はなくなる」
(――叶うなら、彼女に人生を与えて欲しい)
男性はそう強く思う。
「それで良いなら、是非もない。関係者のエネルギーは、ストレージに保管してある。その者の記憶が、世界から消えるまで。もちろん、その女性の分もね」
「――本当に地球人は、埒外の事を願う。だから、面白い。僕が居る世界へ乱数をもってかき混ぜる者は、地球から招こうと思っているんだ。一度僕から贈ったんだ。貰うのも当然の権利。等価交換というヤツだよ」
自分の人生を終える男性に、新たな生は必要ない。
本当かどうか分からない話だが、万が一にも彼女に人生をやり直す喜びを残せるなら、藁にでもすがろう。そう強く願う。
男性が、意識を手放す瞬間に声は言った。
「――まぁ。サービスするよ。自我は持てないが、その娘の隣に寄り添えるように、君のエネルギーを据えるとしようか」
そして――男性は死を迎えた。
魂に響く声が聞こえた。
(――誰だ? 幻聴か? ……夢か?)
「好きに解釈すればいい。――妄想でも一応、僕の話を聞いてくれるかな?」
(……)
「君の一族は、祖が僕の居る世界の者でね。こちらの世界からの要望で遣わしたことがある。その者が消えるときに、この世界に送った人生の借りに僕の居る世界に戻るか聞いたんだ。その者が望んだのは、子に人生をやり直したいものが居たら、代わりにその借りを使って欲しいという事だった」
(……)
「あれから三,〇〇〇年。終ぞ、その願いを唱える者もいなかったが、ようやく君が現れた。ふふふっ。――まさか、自分ではなく他人の人生を願うとは思わなかったがね」
男性が願ったのは、唯一愛した女性の事。
自分の生きた八九年のうち半分でも、彼女に時間をあげられたら、最期にそう願った。
「でも、残念ながら借りは一人分だ。その女性に新たな生を与えると、君にはその権利はなくなる」
(――叶うなら、彼女に人生を与えて欲しい)
男性はそう強く思う。
「それで良いなら、是非もない。関係者のエネルギーは、ストレージに保管してある。その者の記憶が、世界から消えるまで。もちろん、その女性の分もね」
「――本当に地球人は、埒外の事を願う。だから、面白い。僕が居る世界へ乱数をもってかき混ぜる者は、地球から招こうと思っているんだ。一度僕から贈ったんだ。貰うのも当然の権利。等価交換というヤツだよ」
自分の人生を終える男性に、新たな生は必要ない。
本当かどうか分からない話だが、万が一にも彼女に人生をやり直す喜びを残せるなら、藁にでもすがろう。そう強く願う。
男性が、意識を手放す瞬間に声は言った。
「――まぁ。サービスするよ。自我は持てないが、その娘の隣に寄り添えるように、君のエネルギーを据えるとしようか」
そして――男性は死を迎えた。
0
お気に入りに追加
1,585
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる