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第3章  進窟

第6話  恫喝

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 ――2階の最奥

 デカくて気持ち悪い蝶のチョンチョニーが2匹飛び回って毒の鱗粉をまき散らしている。体長は1m。

 胴体が青白い人の顔で幅が手の平ぐらいしかないのに細くて長い。

 表情はムンクの叫びの耳を抑えてる人を細く伸ばした感じだ。

 羽は極色彩で4枚あり別々に動くもんだから、ジタバタしているようで気持ち悪い事この上ない。

 ネズミのしっぽみたいな長い尾が3本あり毒針を次々と打ち出してくる。

 そして俺の背後にはコウモリとカマキリの合体怪物エンプーサ。

 質感はまんまコウモリなんだが、形はカマキリでコウモリの厳つい羽を無理やり付けた感じ。体長は2m。
 
 なんで飛べるのか意味不明なモンスターだ。鎌を振って風刃で攻撃してくる。

 エンプーサの攻撃を交わしながら、チョンチョニーを投げナイフできっちりと仕留める。

 そして、俺はエンプーサへ楯をぶちかまし、体制を崩したところを取り出した槍で頭を切り落として決着をつける。

 霧散するモンスター。

 チョンチョニーのドロップは何故か絹に似た糸の束だ。

 エンプーサのドロップはコウモリの皮。

 ご丁寧にも持ち運びしやすいようにきれいに巻かれていた。しかも加工しやすそうな1枚皮だった。

 一息ついて辺りを見渡すとモルトが目をキラキラさせて拍手で祝ってくれた。

 ありがとよ。モルト。俺も結構やるだろう? ハッハッハ。

 後は3階に降りるだけだが、ちょっと思いついたことがある。思いついたらやらないと気が済まない性分だ。

 さっそくやってみよう!

 ダンジョンの地面を魔法を使って耕耘だ。

 う~ん? 地下30cmくらいまでしか耕せないな。その下は魔力を拒絶する感じだね。

 でも耕耘した場所はちゃんと俺の領域になってるな。

 あれ? 徐々に下の方から領域が押し戻されてきてるようだ。

 10分ほどで元のダンジョンに戻ってしまった。

 ふ~ん。まぁ。いいや。さっさと3階に行こう。

 俺は階段を下りてゆく。

 今日はせっかくだし5階まで行ってみようと思う。4階に降りる前に飯でも食おうかね。

 3階に降りると入り口付近に男が2人いる。

 1人は弱ったような顔をして頭に手を当てている。

 もう1人はギルドで俺を睨んでた知らない人だ。

 睨みつけながら叫ぶように俺に話してくる。

「おい! 小僧! エレオノーラから手を引け、あの女は俺が目をつけてんだよ!」

 ツバキがかかりそうなのでやめてもらえますかね?

 もう1人の男が慌てて前に出て諌める。

「待てっ! シュバイン! 今日は挨拶だけって約束だろ! なに喧嘩売ってんだ。すまねぇな。兄ちゃん。こいつ。この頃おかしくってよ。3階で待ってりゃ。初日に来ることもねぇと思ったが、見積りが甘かった。こいつには言い聞かせとくから許してやってくれ。騒がして悪かった」

 シュバインと呼ばれた男は、連れの手を振りほどくと地面に唾を吐き、捨て台詞とともに去っていった。

「痛い目を見ねぇうちに言うこと聞いといた方が身のためだぞ! 分かったか!」

 う~ん? 小僧を怒鳴りつける若造ってか? なんか面倒くさいな。
 
 そもそも手なんか出してないし、ギルドが選んだんだからギルドに言ってほしい。あの人の思考回路ぶっ壊れてない?

 ぷっ! はははっ!

 ――モルト! おまえ”あっかんべぇ~”覚えたの? 何処でだよ!

 まぁ。また絡まれるようならエレンさんをチェンジしてもらおうかな。
 
 ――さて、先に進みますか。


§


 肩を怒らせて進むシュバインを追いかけながら連れの男は、さっき分かれた小僧の事を考えていた。

 登録したての新人が初めてノルトライブのダンジョンに入って3階までくるのも異常だが、その速さが常軌を逸している。

 シュバインが、がなり立てたときも体は自然体で表情すら変わらなかった。なんの脅威も感じていなかったのだろう。

 男が事前に調べた情報では、あの絶界ぜっかいの弟子だという。化け物の弟子もまた化け物だってことだ。

 短気だが気のいい相棒がこの頃おかしい。

 やばいクスリでもキメたのかと心配しているが、今のところその様子はない。

 あの小僧に絡まないようにシュバインを連れて街を離れるか?

 人が変わったように、話が通じない相棒を見て一つ溜息をついた。
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