42 / 403
第1章 伏龍
第42話 報告
しおりを挟む
――時は少し流れる。
ウィンリールの執務室でパオラとレオカディオが座って談笑をしている。
今日は週に1度開かれるノアの報告会だ。
ウィンリールが部屋に戻るまでの間は、砕けた調子で会話を続ける。
レオカディオが口を開く。
「それで、例の店舗はどうだった? ちょっと手狭だと思うが?」
「ノアくんは広くて使いきれないって心配していたわ。壁作って狭くしようか本気で悩んでいたよ」
「間取りは私も見たがあの店がか?」
「うんそう! でもノアくんのやりたいことには合っていたみたい。嬉しそうに準備してたわ」
「まぁ。あの老害の置き土産も有効利用されれば世の為だな。醜聞が過ぎてあの土地が大学の所有と公に出来なかったからな。売りに出したら即バレるし、一部には既に周知だが」
「本当よ。気持ち悪い。死ねば良いのに」
「ははは。まぁ。もう本当に死んでるかもしれないがな」
「大学の予算で家を建てて、愛人囲ってカフェを営業させるなんて! どんな思想形態かしらね! せめて自分のお金でやってほしいわ」
「同感だ。先生が髪を燃やしたときはすっきりして笑ったな。侯爵相手に魔法を使ってもエルフなら簡単には罰せられない。まして侮辱行為を働いたのは向こうだ。先生のおかげで色んな悪事が露見したしな。パオラ。もしかして君の差し金かな?」
「いいえただの自爆よ。誘導しようとしたけど先生には通用しなかった。ノアくんが利用する事であの不愉快な建物もイデオロギーロンダリングされるはずよ」
「この場合リビドーの方が相応しいような……」
「直接的な表現はやめてよ! 寒気がする!」
「賄賂を貰って許可にサインした総務局長も処分されたし、言いたくはないが先王時代から続く汚職に塗れた役職者達には文句しかないな。強引な人口増加策もそうだが国を迷走させた罪は重い」
「陛下も会うたびに眉間の皺が深くなってるわ」
「大公家のご令嬢として叔父にあたる陛下の心配は尽きませんか?」
パオラは大公家の息女だ。父は国王の弟に当たり、皇太子が成人するまでは王位継承権2位を保持する。
「からかわないで、臣民として当然の事よ」
「そういえば、ノアが君の事を貴族のご令嬢か聞いて来たぞ。何かあったのか?」
「家の騎士に会ってしまって、ノアくんの前で姫って呼ばれたのよ。王族でも無いのだからやめてって言っているのに」
「王位継承権を持つ唯一の女性は『姫』で正しいと思うがな?」
「あたしは8位よ? 殿下も健やかに過ごされておいでだから、放棄出来るならしてしまいたいくらい」
「そのための研究員か? そういえばたどたどしかった市井の言葉も大分様になったな」
「そうでしょう? でも家を継がないあたしより、公爵家筆頭役のダンテス家次期当主の方が王国に影響力があると思うけど?」
王国貴族で最高位が公爵だ。そして、全ての貴族を束ねるのが筆頭役のダンテス家。レオカディオの家名だ。
「私の場合は優秀な弟がいるからね。研究員を続けるのも悪くない」
「公爵様が許さないでしょう?」
「どうかな? お互いやりようはあるさ。それよりもノアは君の護衛に気づいた様子はないのか? え~と。ツンツクと言う風颶鳥にずっと見られていたのだろう?」
「多分ノアくんは気づいていないと思うわ。でも、探知魔法を覚えたら気づくだろうから時間の問題ね。護衛自体は隠してる訳じゃないから、問題は無いけれど」
「それじゃあ。やっぱりテイミングしてる訳じゃないのか」
「さあね? 今度テイマーと話をするからその時なにか分かるんじゃないかしら。ノアくんの場合聞かせて教えた事と違う事を始めるからどうなるか分からないけどね。錬金術の話。あたしも一緒に聞いてたけど何でも呼び出せる。なんて説明はなかったのよね。どうしてあぁなったのかしら?」
「私も錬金術師に確認したが同じことは出来ないそうだ」
「でしょ。この間も孤児院の子達が身体強化が苦手だって聞いて外側から魔力を操ってマスターさせてたわ。聞いたことある?」
「そんな事も出来るのか。ほんと器用で便利な奴だな」
「それと自重が無くなって来ていて怖いわ。此間なんて赤いs……あっ! 口止めされてた」
「なんだよ! 気になるじゃないか」
ちょうどその時ドアが開きウィンリールが入室する。
2人は立ってウィンリールを迎えた。
ウィンリールの執務室でパオラとレオカディオが座って談笑をしている。
今日は週に1度開かれるノアの報告会だ。
ウィンリールが部屋に戻るまでの間は、砕けた調子で会話を続ける。
レオカディオが口を開く。
「それで、例の店舗はどうだった? ちょっと手狭だと思うが?」
「ノアくんは広くて使いきれないって心配していたわ。壁作って狭くしようか本気で悩んでいたよ」
「間取りは私も見たがあの店がか?」
「うんそう! でもノアくんのやりたいことには合っていたみたい。嬉しそうに準備してたわ」
「まぁ。あの老害の置き土産も有効利用されれば世の為だな。醜聞が過ぎてあの土地が大学の所有と公に出来なかったからな。売りに出したら即バレるし、一部には既に周知だが」
「本当よ。気持ち悪い。死ねば良いのに」
「ははは。まぁ。もう本当に死んでるかもしれないがな」
「大学の予算で家を建てて、愛人囲ってカフェを営業させるなんて! どんな思想形態かしらね! せめて自分のお金でやってほしいわ」
「同感だ。先生が髪を燃やしたときはすっきりして笑ったな。侯爵相手に魔法を使ってもエルフなら簡単には罰せられない。まして侮辱行為を働いたのは向こうだ。先生のおかげで色んな悪事が露見したしな。パオラ。もしかして君の差し金かな?」
「いいえただの自爆よ。誘導しようとしたけど先生には通用しなかった。ノアくんが利用する事であの不愉快な建物もイデオロギーロンダリングされるはずよ」
「この場合リビドーの方が相応しいような……」
「直接的な表現はやめてよ! 寒気がする!」
「賄賂を貰って許可にサインした総務局長も処分されたし、言いたくはないが先王時代から続く汚職に塗れた役職者達には文句しかないな。強引な人口増加策もそうだが国を迷走させた罪は重い」
「陛下も会うたびに眉間の皺が深くなってるわ」
「大公家のご令嬢として叔父にあたる陛下の心配は尽きませんか?」
パオラは大公家の息女だ。父は国王の弟に当たり、皇太子が成人するまでは王位継承権2位を保持する。
「からかわないで、臣民として当然の事よ」
「そういえば、ノアが君の事を貴族のご令嬢か聞いて来たぞ。何かあったのか?」
「家の騎士に会ってしまって、ノアくんの前で姫って呼ばれたのよ。王族でも無いのだからやめてって言っているのに」
「王位継承権を持つ唯一の女性は『姫』で正しいと思うがな?」
「あたしは8位よ? 殿下も健やかに過ごされておいでだから、放棄出来るならしてしまいたいくらい」
「そのための研究員か? そういえばたどたどしかった市井の言葉も大分様になったな」
「そうでしょう? でも家を継がないあたしより、公爵家筆頭役のダンテス家次期当主の方が王国に影響力があると思うけど?」
王国貴族で最高位が公爵だ。そして、全ての貴族を束ねるのが筆頭役のダンテス家。レオカディオの家名だ。
「私の場合は優秀な弟がいるからね。研究員を続けるのも悪くない」
「公爵様が許さないでしょう?」
「どうかな? お互いやりようはあるさ。それよりもノアは君の護衛に気づいた様子はないのか? え~と。ツンツクと言う風颶鳥にずっと見られていたのだろう?」
「多分ノアくんは気づいていないと思うわ。でも、探知魔法を覚えたら気づくだろうから時間の問題ね。護衛自体は隠してる訳じゃないから、問題は無いけれど」
「それじゃあ。やっぱりテイミングしてる訳じゃないのか」
「さあね? 今度テイマーと話をするからその時なにか分かるんじゃないかしら。ノアくんの場合聞かせて教えた事と違う事を始めるからどうなるか分からないけどね。錬金術の話。あたしも一緒に聞いてたけど何でも呼び出せる。なんて説明はなかったのよね。どうしてあぁなったのかしら?」
「私も錬金術師に確認したが同じことは出来ないそうだ」
「でしょ。この間も孤児院の子達が身体強化が苦手だって聞いて外側から魔力を操ってマスターさせてたわ。聞いたことある?」
「そんな事も出来るのか。ほんと器用で便利な奴だな」
「それと自重が無くなって来ていて怖いわ。此間なんて赤いs……あっ! 口止めされてた」
「なんだよ! 気になるじゃないか」
ちょうどその時ドアが開きウィンリールが入室する。
2人は立ってウィンリールを迎えた。
0
お気に入りに追加
1,585
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる