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第1章  伏龍

第42話  報告

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 ――時は少し流れる。

 ウィンリールの執務室でパオラとレオカディオが座って談笑をしている。

 今日は週に1度開かれるノアの報告会だ。

 ウィンリールが部屋に戻るまでの間は、砕けた調子で会話を続ける。

 レオカディオが口を開く。

「それで、例の店舗はどうだった? ちょっと手狭だと思うが?」

「ノアくんは広くて使いきれないって心配していたわ。壁作って狭くしようか本気で悩んでいたよ」

「間取りは私も見たがあの店がか?」

「うんそう! でもノアくんのやりたいことには合っていたみたい。嬉しそうに準備してたわ」

「まぁ。あの老害の置き土産も有効利用されれば世の為だな。醜聞が過ぎてあの土地が大学の所有と公に出来なかったからな。売りに出したら即バレるし、一部には既に周知だが」

「本当よ。気持ち悪い。死ねば良いのに」

「ははは。まぁ。もう本当に死んでるかもしれないがな」

「大学の予算で家を建てて、愛人囲ってカフェを営業させるなんて! どんな思想形態かしらね! せめて自分のお金でやってほしいわ」

「同感だ。先生が髪を燃やしたときはすっきりして笑ったな。侯爵相手に魔法を使ってもエルフなら簡単には罰せられない。まして侮辱行為を働いたのは向こうだ。先生のおかげで色んな悪事が露見したしな。パオラ。もしかして君の差し金かな?」

「いいえただの自爆よ。誘導しようとしたけど先生には通用しなかった。ノアくんが利用する事であの不愉快な建物もイデオロギーロンダリングされるはずよ」

「この場合リビドーの方が相応しいような……」

「直接的な表現はやめてよ! 寒気がする!」

「賄賂を貰って許可にサインした総務局長も処分されたし、言いたくはないが先王時代から続く汚職に塗れた役職者達には文句しかないな。強引な人口増加策もそうだが国を迷走させた罪は重い」

「陛下も会うたびに眉間の皺が深くなってるわ」

「大公家のご令嬢として叔父にあたる陛下の心配は尽きませんか?」

 パオラは大公家の息女だ。父は国王の弟に当たり、皇太子が成人するまでは王位継承権2位を保持する。

「からかわないで、臣民として当然の事よ」

「そういえば、ノアが君の事を貴族のご令嬢か聞いて来たぞ。何かあったのか?」

「家の騎士に会ってしまって、ノアくんの前で姫って呼ばれたのよ。王族でも無いのだからやめてって言っているのに」

「王位継承権を持つ唯一の女性は『姫』で正しいと思うがな?」

「あたしは8位よ? 殿下も健やかに過ごされておいでだから、放棄出来るならしてしまいたいくらい」

「そのための研究員か? そういえばたどたどしかった市井の言葉も大分様になったな」

「そうでしょう? でも家を継がないあたしより、公爵家筆頭役のダンテス家次期当主の方が王国に影響力があると思うけど?」

 王国貴族で最高位が公爵だ。そして、全ての貴族を束ねるのが筆頭役のダンテス家。レオカディオの家名だ。

「私の場合は優秀な弟がいるからね。研究員を続けるのも悪くない」

「公爵様が許さないでしょう?」

「どうかな? お互いやりようはあるさ。それよりもノアは君の護衛に気づいた様子はないのか? え~と。ツンツクと言う風颶鳥にずっと見られていたのだろう?」

「多分ノアくんは気づいていないと思うわ。でも、探知魔法を覚えたら気づくだろうから時間の問題ね。護衛自体は隠してる訳じゃないから、問題は無いけれど」

「それじゃあ。やっぱりテイミングしてる訳じゃないのか」

「さあね? 今度テイマーと話をするからその時なにか分かるんじゃないかしら。ノアくんの場合聞かせて教えた事と違う事を始めるからどうなるか分からないけどね。錬金術の話。あたしも一緒に聞いてたけど何でも呼び出せる。なんて説明はなかったのよね。どうしてあぁなったのかしら?」

「私も錬金術師に確認したが同じことは出来ないそうだ」

「でしょ。この間も孤児院の子達が身体強化が苦手だって聞いて外側から魔力を操ってマスターさせてたわ。聞いたことある?」

「そんな事も出来るのか。ほんと器用で便利な奴だな」

「それと自重が無くなって来ていて怖いわ。此間なんて赤いs……あっ! 口止めされてた」

「なんだよ! 気になるじゃないか」 

 ちょうどその時ドアが開きウィンリールが入室する。

 2人は立ってウィンリールを迎えた。
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