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第1章 伏龍
第20話 傾聴
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沈んだな! その沼からはもう上がってこられまい。フハハハ!
三人ともショートケーキの一口目は確かめるようにゆっくりと口に運び食べて、そして、驚く。
その後は三者三様だ。
司書長はゆっくり味わうように、レオさんは顔に近づけて匂いを嗅ぎ、作りを観察してから食べだす。
パオラさんはすごい勢いで三口で食べた。
そして、無くなった事に呆然としている。
「実は私。甘いものがあまり得意ではないのです。代わりに召し上がって貰えますか? パオラさん」
と言って俺の分のショートケーキを差し出す。
「ノアくん。いいの?」
欲望が顔から溢れんばかりですね。
はいと伝えると。
今度は味わうように食べだした。幸せ満点の笑みだ。俺もほほ笑む。
レオさんが話し出す。
「ノアの錬金召喚はでたらめだな。食いもん出すなんて聞いたこともない。これも、記憶が無いけど出せるって事にしとけばいいんだろ? はいはい。総魔力量は多いとは聞いていたが、触媒無しであのサイズの金が出せるとすると先生並みの魔力量なのか」
そう言いながら、二個目を食べるパオラさんをチラミする。
おふぅっ! あんたもかレオさん。
「レオさんも、もう一つ食べてみます?」
「いやいい。それより、昨日の匂いが気になる。あれも出せるのか?」
こだわりますね。レオさん知的好奇心が高いからな。
「出せると思いますが、ここではちょっと不適切ですよね? お昼にもちょっと早いし」
執務室に匂いが籠る。。。
「なになに? 他にもなにかあるの?」
パオラさん食べながらしゃべっちゃいけないよ。
ほらっ! 司書長から怒られた。
「昨日の夜部屋で食欲をそそる物を食べていたようなんですよ。……ひとりで」
ひとりでを強調するレオさん。
粘着質は学力向上に向いた性格ですよ! ケッ!
「今の所、あると知っている。由来の分からない料理は、だいたい出せるみたいなんです。本当に不思議なんですが」
「ずるい! あたしも食べたい。この”ケーキ”とっても美味しい! 白いクリームが口の中でフワッと溶けて、しっとりとした生地の舌触りがなめらかで、とっても幸せな気分! もっと食べたい!」
太りますよ? ……なんか睨まれた。
……心に思ったことが分かるの?
「確かに私もこのような食べ物があるとは知らなかった。……王宮でも、砂糖をふんだんに使用した贅沢なお菓子はあるが、私の口には合わなかった。この”ケーキ”は次元の違う高度な文明でなければ、生み出せない高尚な技術の集積だ。一瞬で消える芸術をも言える。やはりあなたは神の……」
言わせねぇ~よっ! 司書長っ! その話はさっきサラッと流してたのにっ!
俺は強引にカットインッ!
「皆さんには日頃からお世話になっていますので、提供できるなら私に否やはありません」
「おっ! 今日は話せるねぇ」
悪い顔してニンマリと笑うレオさん。
顎に手をあてながら司書長から確認が入る。
「少し早いが場所を移して食事をしよう。私も興味がある。良いかノア君」
会食のお誘いだ。イェス! マム!
パオラさんが壁のボタンを押すと給仕係がやって来る。
そしてお茶を飲んだコップを片付ける。
その間に、俺は皿とケーキフォークをシャララン魔法できれいにしてアイテムボックスに入れる。
それを見ていたレオさんは、ぎょっとした表情で話しかけてきた。
「そんなことまで出来んのかい? ……本当に小器用だね。ノアがいると便利そうだね。本当に同居する?」
絶対に嫌ですレオさん。
レオさん曰く、俺が言うシャララン魔法、正確には生活魔法は、体と身に付けた服を清潔にする効果があるらしい。
他には、食材や野菜などの有機物の汚れや多分雑菌や寄生虫などにも効果があるのだろう。
俺が食器などの無機物をきれいにしているのは別の魔法で、国内では使用者を聞いたことが無いそうだ。
知らないのぉ? おっくれってるぅ~♪
まぁ、俺の場合使っているところ見たからな。
ね! ジョシュアさん! 野宿には最高の魔法です。
そうこうする内に、ドアがノックされ、給仕係が司書長達を案内に来た。
案内されたのは、20~30人は入れる広間を衝立で区切り閑散としないよう配慮された空間だった。
そこに、四人だとちょっと広いかなってくらいの大きさのテーブル。
正確に伝えるならば、一辺2m程の四角いテーブルと豪華な椅子。
皺ひとつないテーブルクロスと完璧にセットされたカトラリー。
ティーポットは保温のためのティーコジーで覆われていて、いつでも注げるよう準備万端だ。
配膳されていないのは、焼き立てと思しきパンだけだ。
司書長がどれくらい偉いのか、敬われているかが分かった気がする。
一番偉い人が声をかける。
「あとは自分たちでやる。何かあれば呼ぶので下がって良いぞ。ご苦労さま。ありがとう」
給仕は一礼して部屋を出る。
俺が出す料理が場の雰囲気に負けそうで怖い。
まぁ。今さら断れないのだ。
切り替えて何を出すか傾聴して絞りこもう。
まず偉いひとからだ。
「好き嫌いはないが、植物と肉ならば、植物の方が好きだな。キノコ? 好きだが、この時期にか?」
植物という言い回しは、エルフは農業をしない為だ。
森の自然から植物を戴く為、草や木という言葉はあっても、畑でとれる”野菜”はない。
食べられる”植物”があるのだ。
キノコにしても、今は春真っ盛りだからね。
春に出るキノコもあるが王国には出回らない。
あるとしても乾燥キノコくらいかな?
――乾燥キノコ。……あんのかな?
でもこれで司書長に出す料理にはアタリを付けた。
三人ともショートケーキの一口目は確かめるようにゆっくりと口に運び食べて、そして、驚く。
その後は三者三様だ。
司書長はゆっくり味わうように、レオさんは顔に近づけて匂いを嗅ぎ、作りを観察してから食べだす。
パオラさんはすごい勢いで三口で食べた。
そして、無くなった事に呆然としている。
「実は私。甘いものがあまり得意ではないのです。代わりに召し上がって貰えますか? パオラさん」
と言って俺の分のショートケーキを差し出す。
「ノアくん。いいの?」
欲望が顔から溢れんばかりですね。
はいと伝えると。
今度は味わうように食べだした。幸せ満点の笑みだ。俺もほほ笑む。
レオさんが話し出す。
「ノアの錬金召喚はでたらめだな。食いもん出すなんて聞いたこともない。これも、記憶が無いけど出せるって事にしとけばいいんだろ? はいはい。総魔力量は多いとは聞いていたが、触媒無しであのサイズの金が出せるとすると先生並みの魔力量なのか」
そう言いながら、二個目を食べるパオラさんをチラミする。
おふぅっ! あんたもかレオさん。
「レオさんも、もう一つ食べてみます?」
「いやいい。それより、昨日の匂いが気になる。あれも出せるのか?」
こだわりますね。レオさん知的好奇心が高いからな。
「出せると思いますが、ここではちょっと不適切ですよね? お昼にもちょっと早いし」
執務室に匂いが籠る。。。
「なになに? 他にもなにかあるの?」
パオラさん食べながらしゃべっちゃいけないよ。
ほらっ! 司書長から怒られた。
「昨日の夜部屋で食欲をそそる物を食べていたようなんですよ。……ひとりで」
ひとりでを強調するレオさん。
粘着質は学力向上に向いた性格ですよ! ケッ!
「今の所、あると知っている。由来の分からない料理は、だいたい出せるみたいなんです。本当に不思議なんですが」
「ずるい! あたしも食べたい。この”ケーキ”とっても美味しい! 白いクリームが口の中でフワッと溶けて、しっとりとした生地の舌触りがなめらかで、とっても幸せな気分! もっと食べたい!」
太りますよ? ……なんか睨まれた。
……心に思ったことが分かるの?
「確かに私もこのような食べ物があるとは知らなかった。……王宮でも、砂糖をふんだんに使用した贅沢なお菓子はあるが、私の口には合わなかった。この”ケーキ”は次元の違う高度な文明でなければ、生み出せない高尚な技術の集積だ。一瞬で消える芸術をも言える。やはりあなたは神の……」
言わせねぇ~よっ! 司書長っ! その話はさっきサラッと流してたのにっ!
俺は強引にカットインッ!
「皆さんには日頃からお世話になっていますので、提供できるなら私に否やはありません」
「おっ! 今日は話せるねぇ」
悪い顔してニンマリと笑うレオさん。
顎に手をあてながら司書長から確認が入る。
「少し早いが場所を移して食事をしよう。私も興味がある。良いかノア君」
会食のお誘いだ。イェス! マム!
パオラさんが壁のボタンを押すと給仕係がやって来る。
そしてお茶を飲んだコップを片付ける。
その間に、俺は皿とケーキフォークをシャララン魔法できれいにしてアイテムボックスに入れる。
それを見ていたレオさんは、ぎょっとした表情で話しかけてきた。
「そんなことまで出来んのかい? ……本当に小器用だね。ノアがいると便利そうだね。本当に同居する?」
絶対に嫌ですレオさん。
レオさん曰く、俺が言うシャララン魔法、正確には生活魔法は、体と身に付けた服を清潔にする効果があるらしい。
他には、食材や野菜などの有機物の汚れや多分雑菌や寄生虫などにも効果があるのだろう。
俺が食器などの無機物をきれいにしているのは別の魔法で、国内では使用者を聞いたことが無いそうだ。
知らないのぉ? おっくれってるぅ~♪
まぁ、俺の場合使っているところ見たからな。
ね! ジョシュアさん! 野宿には最高の魔法です。
そうこうする内に、ドアがノックされ、給仕係が司書長達を案内に来た。
案内されたのは、20~30人は入れる広間を衝立で区切り閑散としないよう配慮された空間だった。
そこに、四人だとちょっと広いかなってくらいの大きさのテーブル。
正確に伝えるならば、一辺2m程の四角いテーブルと豪華な椅子。
皺ひとつないテーブルクロスと完璧にセットされたカトラリー。
ティーポットは保温のためのティーコジーで覆われていて、いつでも注げるよう準備万端だ。
配膳されていないのは、焼き立てと思しきパンだけだ。
司書長がどれくらい偉いのか、敬われているかが分かった気がする。
一番偉い人が声をかける。
「あとは自分たちでやる。何かあれば呼ぶので下がって良いぞ。ご苦労さま。ありがとう」
給仕は一礼して部屋を出る。
俺が出す料理が場の雰囲気に負けそうで怖い。
まぁ。今さら断れないのだ。
切り替えて何を出すか傾聴して絞りこもう。
まず偉いひとからだ。
「好き嫌いはないが、植物と肉ならば、植物の方が好きだな。キノコ? 好きだが、この時期にか?」
植物という言い回しは、エルフは農業をしない為だ。
森の自然から植物を戴く為、草や木という言葉はあっても、畑でとれる”野菜”はない。
食べられる”植物”があるのだ。
キノコにしても、今は春真っ盛りだからね。
春に出るキノコもあるが王国には出回らない。
あるとしても乾燥キノコくらいかな?
――乾燥キノコ。……あんのかな?
でもこれで司書長に出す料理にはアタリを付けた。
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