2 / 403
第1章 伏龍
第2話 方針
しおりを挟む
俺の手持ちの水筒には三分の一程の水が入っていた。
――この量では節制しても、数日しかもたないよな。
ナイフなどの武器や道具も無いので、危険への対処が非常に不安だ。
しかも、食べ物は一切持ち合わせておらず、手持ちのアイテムはコインだけだった。
空を見上げました。
――悲しいほどに抜けるような青空でした。
誰がこんな状態にしたか知らんが、せめて食えるもんを用意しろ!
できれば生き残る為の道具をくれよっ!
人間が生きるために水は必須だろ!
これってわがまま?
コイン? ――――店どこにあるんだよっ!
森と草原で持たせる意味あんの?
なんて雑な扱いなんだろうな!
本当に死んでもいいと思ってんのかな?
でも死んでほしいならわざわざ雑に放置しないよな?
――う~ん。
現在の状況に鑑みて今後どうするか判断するしかないか。
どうだろう、遠くに見える森で食料でも探すべきか?
だが、どんな生き物がいるか分からないのが不安というより恐怖心が強いな。
狼的な肉食獣がいたら、簡単に終わる。
道具があれば、猪ぐらいなら何とかなる気がするが。
――ん?
――少し記憶の扉が開いた。
どうやら、猪を捌いた経験はあるらしい。
だが、結局のところ道具がないので何も出来ない。
行動方針を決める前にとりあえず自分自身を検証しよう。
男の子だという事以外なんの情報も持っていないからな。
目線は低いから子供だな。身長130~150cmで、体重40~50Kgだ。
割と筋肉質で骨太な感じ、鼻は高いので西洋人っぽいのかな。
鏡が無いので具体的な容姿は知れないが、短髪の茶髪っぽい。
靴はサンダルで、踵と足首を皮の帯で覆うガッチリしたグラディエーター。
パンツは深緑のダボッとしたペインターぽいの。
シャツはリネン風の材質で、胸元がV字に切れ込みのある襟付きタイプ。
胸元をジグザクに交差する黒い皮ひもで結んでいる。
シャツの色は生成りが、まぁ、使い込まれた感じ。
――ダメージ加工? ……良いように言ったよ。
ぶっちゃければ、薄汚れている。
コートというより外套に近い革製の鈍色のアウター。
右手首に白銀の細く切れ目の無い、ツイストバングルが一周している。
これだけ急にオシャレアイテムだな。。。
次は、身体能力確認だ。
謎パワーが秘められているかもしれないと期待したが、結果はやや良しだった。
垂直飛びは1m近く、足も速いし、反復横跳びも軽快だが、びっくりするほどではないという結果だった。
まぁ。悪い結果でもない。
さてさて、そんなこんなをしている間にお日様は天辺間近で、そろそろ行動方針を決めないといけない。
複数あるが、大きく二択だ。
そう俺が選ぶのは森か平原。
――どうすっかなぁ。
森は怖いが食べ物は手に入る可能性が高そう。
木の実とか山菜とかきっとあるよね? 果物とかは是非あって欲しい。
だが獣がいるかもしれないのが心配。
野生動物の方が人間より鼻はいいだろうし、襲われたら逃げ切れる自信が無い。
更に獣より怖い何かが居る可能性も検討される。
……まじで怖い。
平原は地平線が怖いくらいきれいに見える。
何故か懐かしさを感じるな。
記憶ほとんど無いけど。。。
いつ人に遭遇できるかは情報が無いので運任せ。
まぁ。平原に獣や危険な何かが無いとも限らない。
例えばヤカラとか賊とか……そういうのはマジで勘弁。
ボクは小銭しか持っていません。
どうか襲わないで下さい。
――――その価値は分からないけれど。
森も平原もどちらも五分五分か、野っ原でベリーをゲット出来るかもしれないしな。
希望的観測ではなく、ポジティブなシンキングなのだよ。
棒でも落ちてれば運任せも有りだと思うが、石ひとつ落ちていない。
それとまぁ。俺なりに考えてみた。
雑に捏ねまわして俺をここに置いたナニかが、俺がすぐ死ぬ事は望まないだろう。
――――望まないはず。……望まないよね?
まぁ。すぐに殺すのが目的なら、長時間の混乱状況で今の様に生き残っていない。
すぐに殺されるナニかに遭遇させればいいんだ。
2時間ぐらい混乱して行動の決定が図れない現状で、とりあえず死なずに俺はここに居られた。
――それが答えのはずだ。そうでも思わないと絶望感が酷い。
俺をエネルギーなり、対価なりをもって雑にここに放置したんだから。
すぐ死んだらエネルギーなりなんなりが無駄になるからな。
生き足掻きを長期観察したいなら、生き残るようにするはずだ。
そして――目を覚ました時に、俺は俯せで寝ていた。
そこから立ち上がって初めに見えたのは草原だった。
パルプンな超常的、猟奇的ナニかは、人間の生態には詳しくないのだろう。
人間が、虫は何を食べるか興味がないように、人間と虫以上に興味を持たない存在なのかもしれない。
だから、人間? 水あげとけばいいよね♡ 扱いなのだ。
だが、流石に生きて欲しいなら、生き延びる可能性の高い方へと頭を向けるはずだ。
――――虫くん。こっちが正解だよと。
パルプンなポンコツには期待しないが、俺は合理的にそう判断する。
いずれにしろ、決めなければいけないのだから。
――――そして、俺は森を背にして草原を進みだした。
これにより、パルポンコツのことは一切信用してはいけないと決心するに至る。
ひどい旅が始まる。
――この量では節制しても、数日しかもたないよな。
ナイフなどの武器や道具も無いので、危険への対処が非常に不安だ。
しかも、食べ物は一切持ち合わせておらず、手持ちのアイテムはコインだけだった。
空を見上げました。
――悲しいほどに抜けるような青空でした。
誰がこんな状態にしたか知らんが、せめて食えるもんを用意しろ!
できれば生き残る為の道具をくれよっ!
人間が生きるために水は必須だろ!
これってわがまま?
コイン? ――――店どこにあるんだよっ!
森と草原で持たせる意味あんの?
なんて雑な扱いなんだろうな!
本当に死んでもいいと思ってんのかな?
でも死んでほしいならわざわざ雑に放置しないよな?
――う~ん。
現在の状況に鑑みて今後どうするか判断するしかないか。
どうだろう、遠くに見える森で食料でも探すべきか?
だが、どんな生き物がいるか分からないのが不安というより恐怖心が強いな。
狼的な肉食獣がいたら、簡単に終わる。
道具があれば、猪ぐらいなら何とかなる気がするが。
――ん?
――少し記憶の扉が開いた。
どうやら、猪を捌いた経験はあるらしい。
だが、結局のところ道具がないので何も出来ない。
行動方針を決める前にとりあえず自分自身を検証しよう。
男の子だという事以外なんの情報も持っていないからな。
目線は低いから子供だな。身長130~150cmで、体重40~50Kgだ。
割と筋肉質で骨太な感じ、鼻は高いので西洋人っぽいのかな。
鏡が無いので具体的な容姿は知れないが、短髪の茶髪っぽい。
靴はサンダルで、踵と足首を皮の帯で覆うガッチリしたグラディエーター。
パンツは深緑のダボッとしたペインターぽいの。
シャツはリネン風の材質で、胸元がV字に切れ込みのある襟付きタイプ。
胸元をジグザクに交差する黒い皮ひもで結んでいる。
シャツの色は生成りが、まぁ、使い込まれた感じ。
――ダメージ加工? ……良いように言ったよ。
ぶっちゃければ、薄汚れている。
コートというより外套に近い革製の鈍色のアウター。
右手首に白銀の細く切れ目の無い、ツイストバングルが一周している。
これだけ急にオシャレアイテムだな。。。
次は、身体能力確認だ。
謎パワーが秘められているかもしれないと期待したが、結果はやや良しだった。
垂直飛びは1m近く、足も速いし、反復横跳びも軽快だが、びっくりするほどではないという結果だった。
まぁ。悪い結果でもない。
さてさて、そんなこんなをしている間にお日様は天辺間近で、そろそろ行動方針を決めないといけない。
複数あるが、大きく二択だ。
そう俺が選ぶのは森か平原。
――どうすっかなぁ。
森は怖いが食べ物は手に入る可能性が高そう。
木の実とか山菜とかきっとあるよね? 果物とかは是非あって欲しい。
だが獣がいるかもしれないのが心配。
野生動物の方が人間より鼻はいいだろうし、襲われたら逃げ切れる自信が無い。
更に獣より怖い何かが居る可能性も検討される。
……まじで怖い。
平原は地平線が怖いくらいきれいに見える。
何故か懐かしさを感じるな。
記憶ほとんど無いけど。。。
いつ人に遭遇できるかは情報が無いので運任せ。
まぁ。平原に獣や危険な何かが無いとも限らない。
例えばヤカラとか賊とか……そういうのはマジで勘弁。
ボクは小銭しか持っていません。
どうか襲わないで下さい。
――――その価値は分からないけれど。
森も平原もどちらも五分五分か、野っ原でベリーをゲット出来るかもしれないしな。
希望的観測ではなく、ポジティブなシンキングなのだよ。
棒でも落ちてれば運任せも有りだと思うが、石ひとつ落ちていない。
それとまぁ。俺なりに考えてみた。
雑に捏ねまわして俺をここに置いたナニかが、俺がすぐ死ぬ事は望まないだろう。
――――望まないはず。……望まないよね?
まぁ。すぐに殺すのが目的なら、長時間の混乱状況で今の様に生き残っていない。
すぐに殺されるナニかに遭遇させればいいんだ。
2時間ぐらい混乱して行動の決定が図れない現状で、とりあえず死なずに俺はここに居られた。
――それが答えのはずだ。そうでも思わないと絶望感が酷い。
俺をエネルギーなり、対価なりをもって雑にここに放置したんだから。
すぐ死んだらエネルギーなりなんなりが無駄になるからな。
生き足掻きを長期観察したいなら、生き残るようにするはずだ。
そして――目を覚ました時に、俺は俯せで寝ていた。
そこから立ち上がって初めに見えたのは草原だった。
パルプンな超常的、猟奇的ナニかは、人間の生態には詳しくないのだろう。
人間が、虫は何を食べるか興味がないように、人間と虫以上に興味を持たない存在なのかもしれない。
だから、人間? 水あげとけばいいよね♡ 扱いなのだ。
だが、流石に生きて欲しいなら、生き延びる可能性の高い方へと頭を向けるはずだ。
――――虫くん。こっちが正解だよと。
パルプンなポンコツには期待しないが、俺は合理的にそう判断する。
いずれにしろ、決めなければいけないのだから。
――――そして、俺は森を背にして草原を進みだした。
これにより、パルポンコツのことは一切信用してはいけないと決心するに至る。
ひどい旅が始まる。
0
お気に入りに追加
1,584
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
黒髪の聖女は薬師を装う
暇野無学
ファンタジー
天下無敵の聖女様(多分)でも治癒魔法は極力使いません。知られたら面倒なので隠して薬師になったのに、ポーションの効き目が有りすぎていきなり大騒ぎになっちまった。予定外の事ばかりで異世界転移は波瀾万丈の予感。
おばあちゃん(28)は自由ですヨ
七瀬美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。
その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。
どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。
「おまけのババアは引っ込んでろ」
そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。
その途端、響く悲鳴。
突然、年寄りになった王子らしき人。
そして気付く。
あれ、あたし……おばあちゃんになってない!?
ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!?
魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。
召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。
普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。
自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く)
元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。
外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。
※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。
※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要)
※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。
※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる