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『第一章』勇者召喚に巻き込まれてしまった件について。

クレープ屋にて。

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「怜央、コンちゃんにご飯あげようよ!」

 俺達は今、街の中を歩いていた。今度は出店ではなく、店舗を回ろうとしているところだった。出店を見て回り、更に訓練場まで行ったからそろそろ昼飯の時間でもあるだろう。

「いらない~」

 肩からコンの声が聞こえる。俺は従魔にしたコンを肩の上に乗せていた。重さは紙のように軽く、全然邪魔にならない。サイズはなぜか手のひらサイズまで小さくなっていた。

「コンって何を食べるんだ?」

 俺は肩の上で休んでいるコンの鼻先をコチョコチョと撫でる。すると、嬉しそうに目を細めた。それを見てるとなんだか心が穏やかになっていく。

「くうき~」

 ⋯⋯仙人か何かだろうか? いや、狐だし仙狐か?

「コンちゃん、か、かわわっ! かわっ!」

 くつろいでいるコンを見て、勇那は語彙力が低下して変な人になっていた。無視してもよさそうだ。

「後、聞きたいこと何かあったかな⋯⋯あ、そうだ。コンって性別はどっちなんだ?」

「おんな~」

「女? メスじゃなくて?」

「そうだよ~、コンはこじんぞく~」

 こじんぞく⋯⋯狐人族ってことか。その割にはケモケモしてるな。

「もしかして、人になれるってことか?」

「コンちゃんが擬人化!?」

「しっぽないからむり~」

「なんだぁ⋯⋯」

 しゅんとなった勇那を放置してコンを見てみる。尻尾はちゃんと付いていた。となると⋯⋯

『コン、お前もしかして⋯⋯尻尾がもっとあったんじゃないか?』

 俺はスキルでコンに聞いてみる。多分コイツも⋯⋯

『そうだよ~、きゅうほん~』

 やっぱり、こっちでも会話が出来るのか。壺の時も話せてたしな。というか⋯⋯それって九尾の狐じゃねぇか! 待てよ⋯⋯封印の壺の効果って⋯⋯

 俺は封印の壺の効果を思い出す。確か、壺に入っている間は弱くなるとか⋯⋯大方それが原因だろうな。

『コン、力を取り戻したいか?』

『ん~、のんびりしたい~』

 コンは大きくあくびをした。まぁ、本人が望まないことをさせるのは嫌だし、やる気が出るまで置いとくか。

「あ、ここよさそうじゃない?」

 勇那はある店の前で足を止めた。それは、シリアさんと昨日来たクレープ屋だ。って、昼飯にクレープ?

「⋯⋯正気か?」

「だって、甘い物食べたいから!」

 いや、朝シチューで昼クレープとか、夜まで保つだろうか⋯⋯

「行こ行こ! 夜は私が美味しい物作ってあげるから!」

 勇那は俺の腕を掴む。またこれかよ!

「勇那、ちょっまっ!」

 俺は勇那に逆らえず、ずるずると引きずられていくのであった。






「ん~! おいひい~!」

「⋯⋯」

 俺は渋々昨日と同じパフェを食べている。ちなみに、コンは中に入れないということで外でお留守番だ。

 チラリと勇那が食べているものを見ると昨日シリアさんが注文したのと同じやつを食べていた。

(二人って相性よさそうだよなぁ⋯⋯)

 多分、二人で出掛けたら意気投合すると思う。俺いらないんじゃね?

「怜央、それ美味しい?」

「ん、あぁ⋯⋯きの⋯⋯」

 俺は途中で言葉を切った。危ない、昨日シリアさんとここに来たことを言ってしまいそうだった!

 昨日シリアさんは、他の女の話をするなって言ってたし、言わないでおこう。やぶ蛇を突きかねない。

「きのみが入って最高だよ! なんのきのみか知らないけど!」

 何とかごまかすことに成功した。しかも、嘘ではない。味的にベリー系の実が入っていて甘酸っぱさが口に残っている。なんとなく、俺はこの味が気に入っていた。

「へ~、怜央のそれも美味しそう⋯⋯そうだ! シェアしよ! はい、怜央あ~ん!」

「いやいや、押し切ろうとするな! ってか、それ間接キ⋯⋯」

「今更そんな事気にする? 子供の時はいっつも食べさせあいしてたじゃん!」

「いや、子供の時とは違うだろ! そもそも勇那は⋯⋯ハッ!」

 勇那とのやり取りで気付いていなかった。俺達を取り囲む視線に。

 昨日俺は、貴族がゴシップ好きだとシリアさんに聞いていたはずだ。それなのに、何故二日も同じ店に⋯⋯しかも違う女と!

「あらやだ、あの男の子、昨日シリア様と一緒にいた子じゃない」

「どっちが本命かしら、それとも二人共娶るとか」

「ワタクシとしては、ラブロマンス、駆け落ちどちらでもいけますわ」

 あぁ、ダメだ、貴婦人方の妄想が膨らんでらっしゃる!

「勇那、なるべく早く食え!」

「え~、でも⋯⋯」

「いいから早く!」

 俺は不満をたらす勇那を急かして早くこの店から出たかった。

「あらやだ、見ましたか奥さん、あの子女性を物扱いにしてましてよ」

 あぁ、あらぬ噂が立ってしまう⋯⋯シリアさんにも迷惑が⋯⋯いや、あの人ならなんとかしそうだったわ。

 しいていうなら、勇那が勇者とバレた時が面倒か。勇者を物扱いする男。うん、ゴシップ誌の表紙になりそうなタイトルだ。

「勇那、まだ?」

 急かしてもゆっくりと味わって食べてる勇那を見て、俺はこう思うようにした。

(もうどうにでもなれ⋯⋯)と。

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