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『第一章』勇者召喚に巻き込まれてしまった件について。
文字が読めない理由。
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「んー! おはようございます⋯⋯っと!」
俺はベッドの上で目を覚ます。結局、あの後はシリアさんとお話をしただけで解散となった。
今日は勇那とのお出かけの日。窓の外は雲一つもない晴天で、絶好の外出日よりに見えた。
「おはよー、レオ君早起きね⋯⋯」
またもやベッドの中にシリアさんがいた。うん、二回目は流石に驚かない。シリアさんの目は半分閉じていて放っておいたら二度寝してしまいそうだ。
「何してるんですか⋯⋯」
「レオ君と寝ると気持ちよくてつい⋯⋯すー⋯⋯」
思った通り、シリアさんは二度寝を始める。それを見て俺は物音をなるべく立てないようにしながら着替えをして部屋を出た。
「やっほー! 怜央おはよ!」
俺が部屋を出ると、ちょうど勇那がこっちに向かって来ているところだった。勇那はいつものように元気よく挨拶をしてくる。手をぶんぶん振っているが、地味に恥ずかしい。
「勇那おはよう」
それに俺は軽く手を上げて応えた。これがいつもの俺達のやり取りだった。
「おぉ! なんか格好いい服着てる!」
「あ、これ? 何かこの世界の装備だって。動きやすくて楽なんだよな」
「えー、いいなー。私もいい服欲しい!」
勇那は勇者だからそれ相応の装備がもらえるだろうに⋯⋯あ、でも服ではないか多分鎧みたいな何かになるかも。
「じゃあ、この世界の服を見に行くか」
「おー、怜央が優しい。いつもなら、服なんか自分一人で買いに行けって言うのに」
「まぁ、ちょっとな」
俺は昨日シリアさんに言われた事を思い出す。二人で楽しまないとな。
「じゃあ、朝ご飯はどうする? 私が作ってもいいけど⋯⋯」
「せっかくだからさ、外で食べてみようか。もしかしたら、美味しい店が見つかるかもしれないし」
「うんうん、それはいい案だ! それじゃあ楽しんでいこー!」
勇那は元気よく歩きだ⋯⋯はえぇな!?
勇那は俺の前を歩き出したのだが、そのスピードが尋常ではなく速い。自転車を全力で立ち漕ぎしている速度で歩いていく。それなのに、歩き方はゆったりで脳がバグりそうになる。
「い、勇那ちょっと待⋯⋯」
「ん、怜央? あ、ごめんごめん⋯⋯まだステータスアップに慣れてないんだよね⋯⋯」
勇那は苦笑いを浮かべながら謝ってくれた。って、ステータスアップ?
「勇那、今の素早さっていくつ?」
俺は興味本位で聞いてみた。明らかに昨日より早くなっていた。
「Aだね! 私は素早さが上がりやすいのか二日訓練したら上がったよ!」
「A!?」
俺は素直に驚く。おい、ふざけるな。こちとらオールEだぞ。チートだ、チート。運営さーん、この人チート使ってます!
「怜央は? 能力上がった?」
「オールEのままだけど⋯⋯」
「⋯⋯そのうち上がるよ!」
勇那は慰めてくれる。一瞬、あ、ヤベ。って顔をしたのは見なかったことにしておく。
(今に見ていろよ、勇者よ! お前がこう遊んでいる間に我はパワーアップしてくれるわ!)
内心で魔王ロールプレイをして楽しんでおく。まぁ、ロールではないんだけどな。
これいいな、何か理不尽があったら魔王ロールプレイしておくか。ぐわっはっは。
「うーん、ステータス状態といつもの状態を切り換えられるようになりたいな⋯⋯このままじゃ不便だし⋯⋯」
俺が魔王になりきって遊んでいる間に勇那は考え事をしていた。確かにそれが出来るようにならないと不便かもしれないな。もし、子どもに触れる時に力がAだったら?
俺は嫌な想像をしてしまい、背中に冷たい物が走った。というか、調整出来ないと俺の手が握られたら潰れるじゃねぇか!
勇那にはなるべく早く調整が出来るようになって欲しいものである。悲しきモンスターになる前に⋯⋯
そんな事を考えながら歩いていたら、いつの間にか王宮から外へと出ていた。勇那は調整に苦労しているのか、ストップアンドダッシュみたいな行動を繰り返している。見ていて面白い。
「怜央~、うまく出来ないよ~」
「はい、甘えない。練習、練習」
俺は笑いながら、勇那を突き放してやった。どうせ、すぐ出来るようになるのは目に見えてる。だって勇那だろ? まぁ、一日もあればまともになってるだろ。
俺は子供の頃から、勇那の起こしてきた異常の数々を目の当たりにしていた。だから、この後のことはわかる。
「あ、慣れてきた。こんな感じかな?」
そう言ったと思うと、元の勇那の速さになる。ほらな、心配なんていらない。
これが勇那の一番のスキルだと思う。──修正力。それが元の世界から持つ勇那の能力だ。
「相変わらず、凄いな」
俺は勇那を褒める。こう言った時、勇那が返す言葉は決まっている。
「えへへ、ありがと。でも失敗しないようになりたいなー」
これだ、でも人間である以上失敗は付き物だ。失敗をしない人間なんていない。それを勇那はわからない。
「それは無理だろ」
「でも、やらないと。私は勇者になったんだから!」
あー、ダメだ。やっぱり聞く耳持たない。
「はいはい⋯⋯あ、ここで飯食わない?」
看板になんて書いてあるかはわからないけども、美味しそうな匂いが漂っている。
「アラン食堂って書いてあるね。この匂いはシチューかな?」
「いや、ちょっと待て」
マジで待て。⋯⋯なんで字が読める?
「い、勇那⋯⋯もしかして、この世界の文字が読めたりする?」
「うん、スキルであるけど⋯⋯怜央はないの?」
あのさぁ⋯⋯魔王君さぁ⋯⋯もしかしてだけど、魔物と話せるから人類語いらないとかそういうやつ?
確かに理に適ってるわ。魔王城で召喚されてるなら人類の言葉いらないもんな。でもさ⋯⋯今いるの人類サイドなんだわ。
俺は、初めて知ったその事実に自分の職業を恨めしく思うのであった。
俺はベッドの上で目を覚ます。結局、あの後はシリアさんとお話をしただけで解散となった。
今日は勇那とのお出かけの日。窓の外は雲一つもない晴天で、絶好の外出日よりに見えた。
「おはよー、レオ君早起きね⋯⋯」
またもやベッドの中にシリアさんがいた。うん、二回目は流石に驚かない。シリアさんの目は半分閉じていて放っておいたら二度寝してしまいそうだ。
「何してるんですか⋯⋯」
「レオ君と寝ると気持ちよくてつい⋯⋯すー⋯⋯」
思った通り、シリアさんは二度寝を始める。それを見て俺は物音をなるべく立てないようにしながら着替えをして部屋を出た。
「やっほー! 怜央おはよ!」
俺が部屋を出ると、ちょうど勇那がこっちに向かって来ているところだった。勇那はいつものように元気よく挨拶をしてくる。手をぶんぶん振っているが、地味に恥ずかしい。
「勇那おはよう」
それに俺は軽く手を上げて応えた。これがいつもの俺達のやり取りだった。
「おぉ! なんか格好いい服着てる!」
「あ、これ? 何かこの世界の装備だって。動きやすくて楽なんだよな」
「えー、いいなー。私もいい服欲しい!」
勇那は勇者だからそれ相応の装備がもらえるだろうに⋯⋯あ、でも服ではないか多分鎧みたいな何かになるかも。
「じゃあ、この世界の服を見に行くか」
「おー、怜央が優しい。いつもなら、服なんか自分一人で買いに行けって言うのに」
「まぁ、ちょっとな」
俺は昨日シリアさんに言われた事を思い出す。二人で楽しまないとな。
「じゃあ、朝ご飯はどうする? 私が作ってもいいけど⋯⋯」
「せっかくだからさ、外で食べてみようか。もしかしたら、美味しい店が見つかるかもしれないし」
「うんうん、それはいい案だ! それじゃあ楽しんでいこー!」
勇那は元気よく歩きだ⋯⋯はえぇな!?
勇那は俺の前を歩き出したのだが、そのスピードが尋常ではなく速い。自転車を全力で立ち漕ぎしている速度で歩いていく。それなのに、歩き方はゆったりで脳がバグりそうになる。
「い、勇那ちょっと待⋯⋯」
「ん、怜央? あ、ごめんごめん⋯⋯まだステータスアップに慣れてないんだよね⋯⋯」
勇那は苦笑いを浮かべながら謝ってくれた。って、ステータスアップ?
「勇那、今の素早さっていくつ?」
俺は興味本位で聞いてみた。明らかに昨日より早くなっていた。
「Aだね! 私は素早さが上がりやすいのか二日訓練したら上がったよ!」
「A!?」
俺は素直に驚く。おい、ふざけるな。こちとらオールEだぞ。チートだ、チート。運営さーん、この人チート使ってます!
「怜央は? 能力上がった?」
「オールEのままだけど⋯⋯」
「⋯⋯そのうち上がるよ!」
勇那は慰めてくれる。一瞬、あ、ヤベ。って顔をしたのは見なかったことにしておく。
(今に見ていろよ、勇者よ! お前がこう遊んでいる間に我はパワーアップしてくれるわ!)
内心で魔王ロールプレイをして楽しんでおく。まぁ、ロールではないんだけどな。
これいいな、何か理不尽があったら魔王ロールプレイしておくか。ぐわっはっは。
「うーん、ステータス状態といつもの状態を切り換えられるようになりたいな⋯⋯このままじゃ不便だし⋯⋯」
俺が魔王になりきって遊んでいる間に勇那は考え事をしていた。確かにそれが出来るようにならないと不便かもしれないな。もし、子どもに触れる時に力がAだったら?
俺は嫌な想像をしてしまい、背中に冷たい物が走った。というか、調整出来ないと俺の手が握られたら潰れるじゃねぇか!
勇那にはなるべく早く調整が出来るようになって欲しいものである。悲しきモンスターになる前に⋯⋯
そんな事を考えながら歩いていたら、いつの間にか王宮から外へと出ていた。勇那は調整に苦労しているのか、ストップアンドダッシュみたいな行動を繰り返している。見ていて面白い。
「怜央~、うまく出来ないよ~」
「はい、甘えない。練習、練習」
俺は笑いながら、勇那を突き放してやった。どうせ、すぐ出来るようになるのは目に見えてる。だって勇那だろ? まぁ、一日もあればまともになってるだろ。
俺は子供の頃から、勇那の起こしてきた異常の数々を目の当たりにしていた。だから、この後のことはわかる。
「あ、慣れてきた。こんな感じかな?」
そう言ったと思うと、元の勇那の速さになる。ほらな、心配なんていらない。
これが勇那の一番のスキルだと思う。──修正力。それが元の世界から持つ勇那の能力だ。
「相変わらず、凄いな」
俺は勇那を褒める。こう言った時、勇那が返す言葉は決まっている。
「えへへ、ありがと。でも失敗しないようになりたいなー」
これだ、でも人間である以上失敗は付き物だ。失敗をしない人間なんていない。それを勇那はわからない。
「それは無理だろ」
「でも、やらないと。私は勇者になったんだから!」
あー、ダメだ。やっぱり聞く耳持たない。
「はいはい⋯⋯あ、ここで飯食わない?」
看板になんて書いてあるかはわからないけども、美味しそうな匂いが漂っている。
「アラン食堂って書いてあるね。この匂いはシチューかな?」
「いや、ちょっと待て」
マジで待て。⋯⋯なんで字が読める?
「い、勇那⋯⋯もしかして、この世界の文字が読めたりする?」
「うん、スキルであるけど⋯⋯怜央はないの?」
あのさぁ⋯⋯魔王君さぁ⋯⋯もしかしてだけど、魔物と話せるから人類語いらないとかそういうやつ?
確かに理に適ってるわ。魔王城で召喚されてるなら人類の言葉いらないもんな。でもさ⋯⋯今いるの人類サイドなんだわ。
俺は、初めて知ったその事実に自分の職業を恨めしく思うのであった。
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