10 / 46
『第一章』勇者召喚に巻き込まれてしまった件について。
初めての訓練。
しおりを挟む
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯くっそぅ⋯⋯」
俺は今、草原で仰向けに寝転がっていた。慣れない運動に身体中が汗ばんでいて、制服のTシャツが湿っているのを感じる。正直気持ち悪い。
何故ここまで疲れているかと言うと、俺は乗馬の特訓をしていたからである。いや、俺の従魔は鳥だから乗鳥というのが正しいか。
楽に乗れるかと思っていたが、俺に待ち受けていたのは世知辛い現実だった。
と、いうのもこの世界には道具が充実していない!
特に大事な道具である鞍が無いせいで、滑り易い羽根の上を太ももでしっかりと身体をホールドしなくてはいけなかった。普段使わない筋肉を酷使した結果が今の情けない状態というわけだ。
何回も落鳥したせいで身体のあちこちが痛む。まぁ、『超回復』があるから三日後には全回復しているのが不幸中の幸いか。
「──大丈夫?」
俺の上に影が差したと思うと、シリアさんが心配そうな顔で覗き込んできていた。
俺はシリアさんの顔をマジマジと見た。最初に会った時とはかなり印象が違う。最初の方はドキドキしたものだったけど、今は普通に見える。
「どうしたの?」
「⋯⋯いや、別に」
俺は芝の上に手を置き、身体を起き上がらせる。するとネロがこちらに歩いて来た。
ネロとは俺がフライアブル・バードに付けた名前だ。名前の理由は見た目が赤いことから。赤い羽根を見ていると、ホットチキンを連想してしまい、そこからハバネロを思い出した。
だから、フルネームを付けるとしたらこいつの名前はネロ・ハーバー。そして、二つ名は暴君だ。
「主、大丈夫か?」
ネロは心配そうな声色でこちらに語りかけてくる。こいつもこいつでキャラ変わりすぎなんだよなぁ⋯⋯
『あぁ、大丈夫だ。しかし、お前変わったな』
「あぁ、あれはな⋯⋯オレの話が通じないから言いたい放題言ってただけだぞ。主は普通にオレと話せるから失態は見せるつもりはない」
『白目向いて気絶してたけど、あれは失態に入らないのか?』
「あれは主のせいだ」
『⋯⋯俺の?』
ネロが気になる事を言ったので俺はそっちに耳を方向けようとする。
「もう! 従魔と見つめ合ってないで私にも構ってよ!」
それをシリアさんが邪魔をしてくる。何を思ったか、俺の腕に抱きついてくる。それを、無理矢理引っ剥がした。
「抱きついてくるのはやめてください! 俺だって年頃の男なんですから、その気になったらどうするつもりなんですか!」
俺はキツめにシリアさんを突っぱねる。
「やっぱり⋯⋯レオ君には──ないんだ」
小さな声は風の音にかき消されてしまった。独り言に聞こえたので、俺はあえて聞き返さない。
「さて、帰りましょうか⋯⋯」
俺は足をぷるぷる震わせながら王宮の方へ向かって歩き始める。明日も訓練するんだ、超回復が期待出来ない今、一刻も早くマッサージをしないと。
そうだ、鞍とあぶみも作るのを考えてみてもいいかもしれない。流石に初心者だから道具が欲しい。
俺は疲労であまり動かない足を前に進ませながら色々と考える。
そういえば、ネロが何か気になることを言っていたな。
『ネロ、そう言えばさっき何か俺に言いかけてなかったか?』
「忘れたぞ」
鳥だからか三歩歩いたら忘れてしまったようだ。あれはどうやら鶏だけではないらしい。
『そういえば、ネロ』
「ん?」
『魔王について何か知っていないか?』
俺はついでに本来の目的を聞く。これの為に従魔を作っていると言っても過言ではない。
「知らないな。そもそもオレはあの施設から出たことがない」
『そうか、なら仕方ないな』
こうは言っているが、内心では落ち込んでいる。すぐにわかるとは思っていなかったからまだ軽症で済んでいるだけである。
「レオ君、どうしたの? 急に落ち込んで」
「いやー、王宮まで遠いなーって」
俺はシリアさんに嘘を言いながら王宮まで帰るのであった。
俺は今、草原で仰向けに寝転がっていた。慣れない運動に身体中が汗ばんでいて、制服のTシャツが湿っているのを感じる。正直気持ち悪い。
何故ここまで疲れているかと言うと、俺は乗馬の特訓をしていたからである。いや、俺の従魔は鳥だから乗鳥というのが正しいか。
楽に乗れるかと思っていたが、俺に待ち受けていたのは世知辛い現実だった。
と、いうのもこの世界には道具が充実していない!
特に大事な道具である鞍が無いせいで、滑り易い羽根の上を太ももでしっかりと身体をホールドしなくてはいけなかった。普段使わない筋肉を酷使した結果が今の情けない状態というわけだ。
何回も落鳥したせいで身体のあちこちが痛む。まぁ、『超回復』があるから三日後には全回復しているのが不幸中の幸いか。
「──大丈夫?」
俺の上に影が差したと思うと、シリアさんが心配そうな顔で覗き込んできていた。
俺はシリアさんの顔をマジマジと見た。最初に会った時とはかなり印象が違う。最初の方はドキドキしたものだったけど、今は普通に見える。
「どうしたの?」
「⋯⋯いや、別に」
俺は芝の上に手を置き、身体を起き上がらせる。するとネロがこちらに歩いて来た。
ネロとは俺がフライアブル・バードに付けた名前だ。名前の理由は見た目が赤いことから。赤い羽根を見ていると、ホットチキンを連想してしまい、そこからハバネロを思い出した。
だから、フルネームを付けるとしたらこいつの名前はネロ・ハーバー。そして、二つ名は暴君だ。
「主、大丈夫か?」
ネロは心配そうな声色でこちらに語りかけてくる。こいつもこいつでキャラ変わりすぎなんだよなぁ⋯⋯
『あぁ、大丈夫だ。しかし、お前変わったな』
「あぁ、あれはな⋯⋯オレの話が通じないから言いたい放題言ってただけだぞ。主は普通にオレと話せるから失態は見せるつもりはない」
『白目向いて気絶してたけど、あれは失態に入らないのか?』
「あれは主のせいだ」
『⋯⋯俺の?』
ネロが気になる事を言ったので俺はそっちに耳を方向けようとする。
「もう! 従魔と見つめ合ってないで私にも構ってよ!」
それをシリアさんが邪魔をしてくる。何を思ったか、俺の腕に抱きついてくる。それを、無理矢理引っ剥がした。
「抱きついてくるのはやめてください! 俺だって年頃の男なんですから、その気になったらどうするつもりなんですか!」
俺はキツめにシリアさんを突っぱねる。
「やっぱり⋯⋯レオ君には──ないんだ」
小さな声は風の音にかき消されてしまった。独り言に聞こえたので、俺はあえて聞き返さない。
「さて、帰りましょうか⋯⋯」
俺は足をぷるぷる震わせながら王宮の方へ向かって歩き始める。明日も訓練するんだ、超回復が期待出来ない今、一刻も早くマッサージをしないと。
そうだ、鞍とあぶみも作るのを考えてみてもいいかもしれない。流石に初心者だから道具が欲しい。
俺は疲労であまり動かない足を前に進ませながら色々と考える。
そういえば、ネロが何か気になることを言っていたな。
『ネロ、そう言えばさっき何か俺に言いかけてなかったか?』
「忘れたぞ」
鳥だからか三歩歩いたら忘れてしまったようだ。あれはどうやら鶏だけではないらしい。
『そういえば、ネロ』
「ん?」
『魔王について何か知っていないか?』
俺はついでに本来の目的を聞く。これの為に従魔を作っていると言っても過言ではない。
「知らないな。そもそもオレはあの施設から出たことがない」
『そうか、なら仕方ないな』
こうは言っているが、内心では落ち込んでいる。すぐにわかるとは思っていなかったからまだ軽症で済んでいるだけである。
「レオ君、どうしたの? 急に落ち込んで」
「いやー、王宮まで遠いなーって」
俺はシリアさんに嘘を言いながら王宮まで帰るのであった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
9
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる