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『第一章』勇者召喚に巻き込まれてしまった件について。
魔物を使う者。
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俺は今、皆から見られて針のむしろになっていた。謎の声よ、世界を救ってくれとか言ってたよな? この職業って、むしろ世界を壊す側じゃないのかい?
「レオ⋯⋯と呼ばれておったな? レオよ、早く申してくれぬか」
(言えたら苦労しねぇよ!)
俺の職業が魔王だということを言った瞬間に人生がゲームオーバーだ。冗談だったで済む問題でもない。しかも、勇那に倒されるのは死んでもゴメンだ。
特に麻帆さんの存在が怖い。元の世界に帰りたがっていたし、俺の事が知られた瞬間にそのまま殺される可能性もゼロではない。
魔王パワーで逃げられるかもしれないが、今は自分の能力が把握出来てない以上、どうなるかはわからない。
一番楽なのは嘘をつく事だ。しかし、それが嘘だとバレた場合、どうなるのかは想像に難くない。
どうしても整合性が大事になってくる。魔王が普通の職業でも出来そうな事を探さなければいけない。
そう、なのに俺はこの世界の職業を知らないから考えようが無くて詰んでいる。そもそも最初の前提から間違っているんだ。
(もう適当にでっちあげるか? でも、そんなリスク冒せるか?)
もし神様がいるなら小言を腹一杯ぶち撒けてやりたい。なんで勇者召喚に魔王が巻き込まれてるんだよ! テンプレはどうしたテンプレは!
あぁ、どうすればいいんだよぉ! というか先にいるはずの魔王はどうした! この世界に元々魔王がいるなら二人になるだろうがぁ!!!
「え⋯⋯えっと⋯⋯ははは」
とりあえず笑っておいた。時間稼ぎも兼ねて、この場を和やかな雰囲気に変えようと頑張ってみた。
「早く言え!」
それでも無理だった、王様の語気が強くなっている。流石にもう限界か⋯⋯
「王様、怜央に向かってそんな口を聞かないでください!」
「⋯⋯む」
勇那が王様を嗜める。また勇那に守ってもらった。それによってさっき自分の言った事を思い出してしまう。
(勇那は俺が守るって言っただろ! また守ってもらう立場になるつもりか!)
俺は自分の頬を叩き深呼吸をする。
(覚悟を決めろ桜間怜央! 魔王なら目の前に立っているおっさんと同じ王だろうが! びびってるんじゃねぇ!)
「大丈夫だ、勇那」
俺は吸い込んだ息を大きく吐き出し心を整えた。⋯⋯いくぞ。
「俺の職業は⋯⋯魔物使いです」
そうだ、魔王は全部の魔物を従える者だ。なら魔物使いを語っても間違いではない。
後はこの職業がこの世界にあるかどうかだけだ。⋯⋯頼む! 俺はまだ勇那の側にいたい!
「そうか、魔物使いか。なるほどな、確かに敵を扱う職業だと言いづらかったかもしれんな」
王様はしきりに頷いていた。これは、大丈夫なのか?
「しかし、敵を従える能力は唯一無二のもの! 勇者の助けとなるだろう! 励めよ、レオ!」
俺は安堵からその場にへたり込んでしまう。
(た、助かった!)
とりあえず命の危機は脱したようだった。しかし、これはずっと俺について回る問題だ。早く情報を集めて俺の身に何が起きているのかを把握しなければいけないだろう。
しかし、情報を集める方法はないに等しい。色々考えてみたけど仕入れるルートが思いつかない。
まず、魔王に接触したい。しかし、いきなり魔王の元へと乗り込むのは身の安全を考えると無理だ。
「大丈夫?」
考え事をしていたら、勇那が俺の顔を覗き込んでいた。
「あ、あぁ大丈夫」
俺は勇那に笑いかけながら立ち上がり、王様を見据えた。
「では、四人にはそれぞれ専用の客室を与える! そこで休むがいい!」
全員が頷くと、どこからともなく執事の服を着た男達が俺達の背後に現れる。
「では、お客様の部屋へと案内させてもらいます」
その中で一番歳の老いた初老の男が俺の元へとやってきて頭を下げた。この人が俺の専属の執事ということだろう。
「今日の夜は祝宴を開く! また追って伝える!」
俺達が王の間から退出する時に王様はそう言った。
「勇那様はこちらへ」
「え、そっち? 怜央、私こっちみたい」
勇那とは廊下の別れ道で離れることとなった。きっと勇者だから特別な部屋とか用意されてるんだろうな。
「⋯⋯勇那、頑張ろうな」
俺の言葉に勇那は笑顔で頷いた。俺はその笑顔を見て胸を痛めた。
(俺が最後の敵なのにな)
心の中にモヤがかかったようになる。もし、勇那と戦う事になったら、俺はどんな選択をするだろう。
(⋯⋯そうならないといいけどな)
俺を倒さなくても勇那が違う道を進めるようにしないといけない。そのためには、この世界の情報が必要だった。
『世界を救ってくれ』
謎の声の言葉が脳裏に浮かぶ。まさか、自殺しろって事じゃないだろうな?
後はなんだったか、世界の変革だったか⋯⋯なんのことかわからん。
まぁ、そうだな⋯⋯よくわからない事は後回しにしよう。なにせ考える時間はたっぷりあるんだし。
俺は初老の男の後に付いていきながら、ずっと頭を悩ませるのだった。
「レオ⋯⋯と呼ばれておったな? レオよ、早く申してくれぬか」
(言えたら苦労しねぇよ!)
俺の職業が魔王だということを言った瞬間に人生がゲームオーバーだ。冗談だったで済む問題でもない。しかも、勇那に倒されるのは死んでもゴメンだ。
特に麻帆さんの存在が怖い。元の世界に帰りたがっていたし、俺の事が知られた瞬間にそのまま殺される可能性もゼロではない。
魔王パワーで逃げられるかもしれないが、今は自分の能力が把握出来てない以上、どうなるかはわからない。
一番楽なのは嘘をつく事だ。しかし、それが嘘だとバレた場合、どうなるのかは想像に難くない。
どうしても整合性が大事になってくる。魔王が普通の職業でも出来そうな事を探さなければいけない。
そう、なのに俺はこの世界の職業を知らないから考えようが無くて詰んでいる。そもそも最初の前提から間違っているんだ。
(もう適当にでっちあげるか? でも、そんなリスク冒せるか?)
もし神様がいるなら小言を腹一杯ぶち撒けてやりたい。なんで勇者召喚に魔王が巻き込まれてるんだよ! テンプレはどうしたテンプレは!
あぁ、どうすればいいんだよぉ! というか先にいるはずの魔王はどうした! この世界に元々魔王がいるなら二人になるだろうがぁ!!!
「え⋯⋯えっと⋯⋯ははは」
とりあえず笑っておいた。時間稼ぎも兼ねて、この場を和やかな雰囲気に変えようと頑張ってみた。
「早く言え!」
それでも無理だった、王様の語気が強くなっている。流石にもう限界か⋯⋯
「王様、怜央に向かってそんな口を聞かないでください!」
「⋯⋯む」
勇那が王様を嗜める。また勇那に守ってもらった。それによってさっき自分の言った事を思い出してしまう。
(勇那は俺が守るって言っただろ! また守ってもらう立場になるつもりか!)
俺は自分の頬を叩き深呼吸をする。
(覚悟を決めろ桜間怜央! 魔王なら目の前に立っているおっさんと同じ王だろうが! びびってるんじゃねぇ!)
「大丈夫だ、勇那」
俺は吸い込んだ息を大きく吐き出し心を整えた。⋯⋯いくぞ。
「俺の職業は⋯⋯魔物使いです」
そうだ、魔王は全部の魔物を従える者だ。なら魔物使いを語っても間違いではない。
後はこの職業がこの世界にあるかどうかだけだ。⋯⋯頼む! 俺はまだ勇那の側にいたい!
「そうか、魔物使いか。なるほどな、確かに敵を扱う職業だと言いづらかったかもしれんな」
王様はしきりに頷いていた。これは、大丈夫なのか?
「しかし、敵を従える能力は唯一無二のもの! 勇者の助けとなるだろう! 励めよ、レオ!」
俺は安堵からその場にへたり込んでしまう。
(た、助かった!)
とりあえず命の危機は脱したようだった。しかし、これはずっと俺について回る問題だ。早く情報を集めて俺の身に何が起きているのかを把握しなければいけないだろう。
しかし、情報を集める方法はないに等しい。色々考えてみたけど仕入れるルートが思いつかない。
まず、魔王に接触したい。しかし、いきなり魔王の元へと乗り込むのは身の安全を考えると無理だ。
「大丈夫?」
考え事をしていたら、勇那が俺の顔を覗き込んでいた。
「あ、あぁ大丈夫」
俺は勇那に笑いかけながら立ち上がり、王様を見据えた。
「では、四人にはそれぞれ専用の客室を与える! そこで休むがいい!」
全員が頷くと、どこからともなく執事の服を着た男達が俺達の背後に現れる。
「では、お客様の部屋へと案内させてもらいます」
その中で一番歳の老いた初老の男が俺の元へとやってきて頭を下げた。この人が俺の専属の執事ということだろう。
「今日の夜は祝宴を開く! また追って伝える!」
俺達が王の間から退出する時に王様はそう言った。
「勇那様はこちらへ」
「え、そっち? 怜央、私こっちみたい」
勇那とは廊下の別れ道で離れることとなった。きっと勇者だから特別な部屋とか用意されてるんだろうな。
「⋯⋯勇那、頑張ろうな」
俺の言葉に勇那は笑顔で頷いた。俺はその笑顔を見て胸を痛めた。
(俺が最後の敵なのにな)
心の中にモヤがかかったようになる。もし、勇那と戦う事になったら、俺はどんな選択をするだろう。
(⋯⋯そうならないといいけどな)
俺を倒さなくても勇那が違う道を進めるようにしないといけない。そのためには、この世界の情報が必要だった。
『世界を救ってくれ』
謎の声の言葉が脳裏に浮かぶ。まさか、自殺しろって事じゃないだろうな?
後はなんだったか、世界の変革だったか⋯⋯なんのことかわからん。
まぁ、そうだな⋯⋯よくわからない事は後回しにしよう。なにせ考える時間はたっぷりあるんだし。
俺は初老の男の後に付いていきながら、ずっと頭を悩ませるのだった。
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