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答え合わせ

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ウィルに乗せられた王家の馬車は、所謂お忍び用というか、私の馬車に負けず劣らず機能性重視の見た目質素なもの。
当然広くはなく、ウィルと私しか乗っていない。

「城に着いたらすぐ報告に行かなきゃいけないから着くまでの間だけど、聞きたいことあるよね。答えるよ」

ウィルはいつの間にか保温用の瓶に入った飲み物を二つ持っていて、一つを私に差し出しながらいった。

「まず、あそこは何処だったの?着くまでどれくらいかかる?」
「ふふっ、まずでそれ?やっぱりリーゼ好き」
「すっ?!」

今ので何でそうなる!
飲み物吹くところだったじゃないの!

「王都のアイゼン男爵家に近い林。アイゼン男爵令嬢は場合によっては先に開放するつもりだったようだから。夜だし魔道具で加速してるから、十数分で着くと思う」

あー、ミラの王都のお家はかなり外れにあるって言ってたものね。
完全に巻き込んだ上に後半空気だった。
私がやったんじゃないとはいえ悪いことをした。

「でも、ミラのお家は今誰もいなくて、私の家に寄った後一緒に寮に戻るつもりだったのよ。ミラもお城に行くのよね?」
「もちろん。当事者だからね。泊まるか帰るかはわからないけどアンゼルにアイゼン男爵の代理人として引き受けを頼むつもり。多分診察と聴取してる間に連絡しとけば飛んでくるから」
「アンゼル様、お体は大丈夫なの?」
「知ってるかもしれないけど、アンゼルがすぐ寝込むのは膨大な魔力量に対して放出する術が少ないからなんだ。特異体質というやつ。でもそれもアイゼン男爵令嬢のおかげでコントロールが効くようになってきて、今ではもうほぼ健康体」

なるほどね。
ミラは前世チートを想い人に全振りしたわけだ。
ウィルが《視る》ことをしすぎると体調崩すみたいに、アンゼル様は放出を怠ると体内が魔力過多になり寝込むと。
ん?ちょっと違うか?

「あははっ、時間と場所の確認の後は友人たちの心配か」
「わ、悪い?あ、悪いわね。本来ならミラのこと真っ先に心配すべきだし事件の最中から今この瞬間まで感情に任せて放ったらかしにしちゃったし」
「悪いわけないよ、全然。彼女の性格なら多分今以上に巻き込まれる方が困るんじゃない?」

・・・そうかも。
マジでごめん、ミラ・・・。

「・・・き、気を取り直して。えと、ウィルが寝込んだ後私を遠ざけてたのは、わざと、でいいのよね?」
「・・・うん。本当に、ごめんね」

ウィルをよく知らない人にはぼーっとしているように見える、ものすごーくしゅんとしてる顔で言った。

「俺が《視た》のは物語の内容だけじゃないんだ。もっと色々。リーゼや俺を含む登場人物の物語と現実での言動の差異とか、それによってこの世界線が変わったことで起こる物語にはない出来事とか」
「!それが今回の・・・?」

私が訊くと、ウィルはこくんと頷く。

「規模の大小の差はあっても、あの王女がリーゼに対して害する何かを引き起こすことはどうあっても変えられなかった。だからその中で最も被害が最小限で済むよう誘導した。だけどそのためにはリーゼに何も告げず会わない期間がどうしても必要だった」

そういうことだったのか。
どんな風に誘導したのかは、お互いのために深く追求しない方がいいんだろう。

「でもリーゼがあの男と一戦交えるとは思わなかったよ。それに彼らへの処罰の内容も、俺個人は甘いと思うけどリーゼが奴らの思惑を理解してなかったわけではないとわかるものだし。リーゼは本当に、俺が《視た》のとは違う結果を齎してくれる。しかもより良い方へ」

ウィルがふわりと笑う。

「・・・いつも言うけど、買い被りすぎよ?」
「そんなことないともいつも言ってるよ。予測を裏切られるのも好きだけど、予測通りに人が動いたとしてもその裏で人が考えていることはこの力の預かり知らぬところだと、教えてくれたのはリーゼだから」
「うう・・・頭が働かない時に難しいことを言うわね」
「俺がリーゼのことをすごく好きだってわかればいいよ」
「私の告白はスルーしたくせに・・・」
「あ、あの時は!本当は飛び上がりそうなくらい嬉しかったけど、代償もあったしリーゼを遠ざけなきゃだしで平静を装ってたんだ!」

あら珍しい。
あのウィルが慌てふためいて弁明する様子なんて、他の誰もきっと見たことなんかないでしょうね。
そう思うと、自然とくすくすと笑いが溢れた。

「・・・もう、リーゼには振り回されっぱなしだ。そんなに笑うんだからわかっただろう。さて、そろそろ着くね・・・」

窓から外を見遣るウィルにつられて私も目線を移すと、慣れ親しむ程に訪れた城壁を馬車がくぐるところだった。



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